細江英公先生のギャラリー・トーク及びサイン会にはたくさんのお客様に参加していただきありがとうございました。
その様子は後日ご報告しますが、主に土方巽の故郷秋田県で撮影された細江先生の『鎌鼬』連作を毎日見ていると、宮本常一の著作や写真集のことを思い出しました。
私と同期で毎日新聞社に入社した平嶋彰彦の最後の仕事が宮本常一の写真集の編集でした。
以前にも紹介しましたが、私はさっさと退社して画商に、カメラマンとして入社した平嶋は最後まで社に残りいくつもの素晴らしい写真集を出版、編集しました。)
刊行と同時に手紙とともに送ってくれたのですが、紹介しようしようと思いながら、日が経ってしまいました。
平嶋からの手紙をそのまま引用します。本屋さんでぜひお求めください。
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宮本常一が撮った昭和の情景宮本常一が撮った昭和の情景』上下巻
 上巻:昭和30―昭和39年(1955-1964)
 下巻:昭和40―昭和55年(1965-1980)
 解説:田村善次郎、松山巌
 A5判、ソフトカバー、各256ページ。
 毎日新聞社刊
 定価:2800円+税

民俗学者の宮本常一は全国をくまなく旅をするなかで、心を揺さぶられることや、おやっと思うことがあれば、できるだけ写真に撮りました。昭和30年から亡くなるまでの26年間で、その数は約10万カットにおよびます。そこには戦後の復興期から高度経済成長に失われていった町や村の風景と日本人の暮らしが生きいきと脈うっています。明日のために、前代の人々の暮らしの立て方や意思をふりかえる、というのが宮本学の基本姿勢であり、10万カットの写真もその観点で貫かれていたとみられます。

弊社では『宮本常一 写真・日記集成』上下巻別巻1を2005年に刊行しました。今回の『宮本常一が撮った昭和の風景』上下巻は、宮本常一の写真の存在とその素晴らしさを、さらに多くの人たちに知って欲しいとの思いがやみがたく、同書を底本にして、写真を中心に再構成した普及版写真集です。

日付を追った時系列の構成は『写真・日記集成』を基本的に踏襲しつつ、写真点数を圧縮する一方で、若干の未収録写真を加え、上巻に約400点、下巻に約450点を掲載しました。また判形をA4からA5にするにともない、写真の構成とレイアウトは一新しています。日記は写真キャプションに引用する以外は割愛しました。写真キャプションは宮本常一に馴染みのうすい読者にも理解しやすいように、著作物からの文章を引用するなど、大幅に加筆を試みてみました。宮本常一の写真は宮本民俗学の研究資料としてばかりでなく、昭和を後世に伝える歴史資料としても貴重な映像記録ではないかと思われます。(以下略)
平嶋彰彦