昨日始まった「とっておきセール」には、おかげさまでたくさんのお客様にご来廊いただき、ありがとうございます。
スタッフ一同、心より御礼申し上げます。
ご家族4人で見えられたご夫婦が相談の上、磯崎新先生のシルクスクリーンを購入されたり、初めて来廊された女性の方は日本版画史に残る傑作・池田満寿夫の「四つの手」を大枚はたいて買われたりで、いつもながらスリリングなセール初日でした。
昨日の最後のお客様は福島県からのご来廊でした。
本日も夜7時まで開催していますので、ぜひご来場ください。
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こんなに幅広いジャンルの作品(66点)をホームページに掲載していると、問合せが種々あるのですが、中には真贋についての質問もあります。
数日前も地方都市在住の方から、元永定正先生のタブローの画像が送られてきました。真贋について尋ねられたのですが、私たちは鑑定機関ではありませんから、確定的な判断はできません。しかし、それでも明らかにおかしいと思うものが出てきます。今回もその例でした。

つい先日、富山県立近代美術館で池田満寿夫さんの版画について講演したのですが、その中で、「いまだ池田さんの版画のニセモノには会ったことがない」という話をしました。
版画のニセモノでは棟方志功、藤田嗣治、シャガールなどはキャリアのある画商さんなら一度はお目にかかったはず。
亭主のところにも幾度となくこれらのニセモノが持ち込まれました。
圧巻(?)だったのは、藤田嗣治のリトグラフで、持ち込んできた本人が「私が刷っているのでいくらでも補充がききます」とのたまわったのには驚きました。堂々たるもんでした。

それでも版画はタブローに比べてニセモノが少ないというのが常識です。
理由は簡単で、版画は単価が安いので、手間とヒマをかけてニセモノをつくるのでは採算が合わないんですね。
版画のニセモノをつくりには本物以上にお金がかかる。技術はもちろんですが、版画工房の協力が必要です。一点作った(刷った)だけでは採算が取れないので、複数刷るとしてこれをバレないようにばら撒くには闇のネットワークが必要です。
池田満寿夫の60年代の名作など、版画でも相当高価ですが、それでもニセモノが無いというのは、池田さんのテクニックと表現力が相当凄い(真似できない)ということなのでしょう。

版画に対してタブローは腕さえあれば簡単にできます。
うまく騙せれば有名作家のものなら数十万円、数百万円で売却も可能です。
我が師匠、久保貞次郎先生も滝川太郎という稀代の贋作画家から大量にニセモノをつかまされました。久保先生の偉い(凄い)ところは、それを堂々と公開されたことです。
自らの不明を隠すことなく雑誌で大公開されました。身銭を切って買ってきた久保先生でしかできない芸当でした。

亭主が遭遇する機会の多いニセモノに瑛九があります。
ここ数年でも数点ありました。
某コレクターからは、ネットで買ったというガラス絵が持ち込まれました。
またあるときは、某有名美術雑誌に「ガラクタ市で入手した。瑛九の新発見の名作ではないか」と持ち込まれた水彩について、編集部から真贋の判定を依頼されました。
2点とも怪しいものでした。

数年前、草間彌生先生のニセモノが大量に出回ったことがあります。
オリジナルが売れないときにはニセモノは出ない。
億を超えると贋作画家の制作意欲も湧くらしい。
ニセモノはその作家の評価(人気)のバロメーターともいえます。

さて「とっておきセール」にはそのような怪しいものは一切ありません。
どうぞ安心してコレクションしてください。

◆ときの忘れものは、6月26日(土)、27日(日)の二日間「とっておきセール」を開催します。
セールDM
出品予定:靉嘔、ジャン・アルプ、イリナ・イオネスコ、池田満寿夫、磯崎新、アンディ・ウォーホル、鵜飼容子、内間安王星、瑛九、エステーヴ、榎倉康二、岡山伸也、小野木学、オノサト・トシノブ、小野隆生、恩地孝四郎、加納光於、北川民次、ルイス・キャロル、イミ・クネーベル、クリスト、アンドレ・ケルテス、五味彬、ル・コルビュジエ、篠原有司男、清水智裕、菅井汲、ジム・ダイン、ポール・ヴァン・ダイク、マルセル・デュシャン、ロベール・ドアノー、永井一正、難波田龍起、野中ユリ、長谷川潔、ウィン・バロック、Chohreh Feyzdjou、ヤン・フォス、 日和崎尊夫、ヨーゼフ・ボイス、セルジュ・ポリアコフ、クリスチャン・ボルタンスキー、ホンマタカシ、マン・レイ、三岸節子、元永定正、山口啓介、山中現、山本容子、吉川富三、フェルナン・レジェ、トーマス・ルフ、他。