熱しやすく、冷めやすい。
日本人についてよくいわれる言葉です。
この数年のオークション会社の乱立状態はそろそろ淘汰期に入ったようですが、猫も杓子もオークションに走ったおかげで、従来の業者たちの「交換会」システムが機能しなくなり、いくつもの交換会が活動停止状態とききます。
私たちのような何の組織に属していない画商でも、その影響はモロに受けています。すなわち多様であるべき換金機能(機会)が極端に減ってきているわけです。

一方で、客も画商もマスコミも人気作家に集中する傾向は昔からかわりません。
どうして日本は多様な価値の存在を認めようとしないのでしょうか。
極端から極端へ。
草間彌生さんが売れるとなると、日本中の画商さんたちが、それも骨董やら日本画の画商さんまでもが市場に参入して値段を吊り上げる。
ついこの間まで、せいぜいサムホール15万円(2004年ときの忘れものの個展)でも売るのに四苦八苦していた身としてはもう手が届く範囲を超えています(溜め息)。

オークション会社が淘汰期に入った思ったら今度はアートフェアの大流行です。
バスに乗り遅れまいと、私たちも薄い財布をはたいて参加しています。
優勝劣敗は世の常。多くが戦場を去り、極く少数が生き残る。

この何年か、多くの有為の若者たちが夢を求めて、オークション会社に就職しました。
亭主の青年時代に比べれば隔世の感があります。
ときの忘れもののような貧乏画廊にも営業に来られた青年男女は数知れず。
しかしその多くが、既に職場を去りました。
ある人はリストラに遭い、ある人は仕事に限界を感じ、ある人は別の夢を求めて転職し、または海外留学へと飛び立っていきました。

離職の挨拶に来られたあの若い人たちは、あれからどうしているんでしょう・・・・

たった一人だけ、元気な便りをメールで送ってくれる人がいます。
某オークション会社を休職(?)してイギリスに留学したOさんです。
いただいたメールの大意をご紹介します。

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大変ご無沙汰しております。展覧会のお知らせありがとうございました。
現在開催中の「9人のミューズたち」に出展している、君島さんとは実は友達なんです。
せっかくの展覧会を見にいけないのは残念ですが、
制作のためにいろいろとがんばっているようですね。

ロンドンではすっかり日が短くなり、日増しに寒さも厳しくなっています。
一番の繁華街、オックスフォードストリートではクリスマスのイルミネーションが楽しめる時期になりました。
東京では体験しないような寒さがこの先待っているかと思うと今から戦々恐々としているところです。

さて現在インターンとして働いておりますConnaught Brownでの展覧会の情報をお知らせいたします。
ジム・ダイン
WINTER EXHIBITION
会期:2010年11月24日~12月31日
Jim Dine , Lobo, Matisse, Picasso, Wesselmann, Laurens, Vuillard
会期中は月―金:10:00~6:00 土:10:00-13:00 日:休廊となっております。

Jim Dine:Gray Jewel, 2009, oil, acrylic, charcoal and sand on linen 40×30in/ 101.6×76.2cm

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Oさんから送られてきたジム・ダインを見て、胸がキュンとしました。
私の最初の10年を支えてくれたパトロンFさんに初めて作品らしい作品を売ったのがジム・ダインの「パレット」でした。Fさんのことは、休刊になった『彷書月刊』に寄稿しました。