今週末12月4日[土]・5日[日]の2日間に開催する「The Gift ~あなたへ、わたしへ<」が迫ってきました。
油彩、水彩、写真などの他に版画作品も出品しています。
もともと亭主は版画育ちなので、セレクションはかなり厳しい(エヘン)。
今回も日本の現代版画史を飾る名作を種々出品しています。

24)舟越桂「ウォーターブルーII」
  1990年 銅版 30.5×22.8cm Ed.75 サインあり
舟越桂銅版
舟越さんは彫刻家ですが、版画も積極的に作られている。おかげでスター不在の版画界の救世主のような存在。人気抜群です。この作品は初期の銅版です。

27)斎藤義重「BEAUPIN(Black)」
  1972年 樹脂・アルミ板 71.5×59.2cm 版上サイン
  作品裏にタイトル及びサイン記入のカード貼付
斎藤義重「ボーバン」
これを版画というと異論も出そうですが、(斎藤先生はマルチプルと言っていたような気がします。急坂を上りつめた山のてっぺんにあった斎藤先生の自宅に伺い、幾度もこの作品(色違いがいくつかあります)をわけていただいたのは、私の駆け出し時代でした。

30)横尾忠則「竜の器」
  1989年 シルクスクリーン Ed.150 104.0×73.6cm サインあり
横尾忠則「龍の器?」
文字通りスーパースター横尾さんにはコアなファンが多数おり、版画だけでなく、ポスター、カタログ、本、どんなものでも一定の評価で売り買いされる。なかなかそういう人はいませんんね。

31)榎倉康二「干渉 No.4」
  1986年 シルクスクリーン・和紙 Ed.20 66.8×98.0cm サインあり
榎倉康二「干渉No.4」
現代美術の不運のひとつは榎倉さんの早世です。あの突然の死はほんとうに残念なことでした。葬儀には私も出席しましたが、当時の藝大の学生さんたちの嘆き、師を喪った悲しみは尋常ではありませんでした。この作品が生まれてから四半世紀も経ちますが古びていません。「版」の可能性に挑んだ現代版画の名作の一つでしょう。

32)瑛九「離陸」
  1957年 リトグラフ Ed.22  32.5×21.0cm サインあり
瑛九「離陸」
亭主の好きな瑛九、出てきたらついつい買ってしまう。そのたびに社長が「買うのはいいけれど、ちゃんと売ってからにしてちょうだい」と嘆く。
瑛九のリトグラフは連続エッセイで書いた通り、色彩の綺麗に残っているものが非常に少ない。当時の粗悪なインクと紙に加えて保存が悪いと色が褪色してしまう。その点この作品は色彩がよく残っておりお薦めです。

34)松江喜代寿「北辺春秋 '93-A」
  1993年 銅版(メゾチント) 69×50cm 限定5部(2/5) サインあり
松江喜代寿
確か国画会の前田賞を受賞した作品です。保存に少々難がありますが、お安いのでお勧め。

37)加山又造「黒い裸婦」
  1980年 銅版カラー 20.2×37.2cm ed.95(31/95) サインあり *レゾネ(講談社)No.52
加山又造・黒い裸婦
日本画家でプレス機まで買い、版の制作を人任せにせず、言葉の真の意味での「オりジナル版画」を作り続けたのは加山さんただ一人といっても過言ではないでしょう。
亭主の密かな誇りはリトグラフの名作「レースをまとった人魚」をエディションしたことです。あの作品も素晴らしいけれど、この「黒い裸婦」も名作の名に恥じない。

40)草間彌生「帽子 Hat」
 1983年 シルクスクリーン 45.0x52.5cm Ed.100 signed シート *レゾネNo.22
草間彌生「帽子」600
先日開催された吉祥寺美術館での草間彌生展に関連して亭主は「草間版画」について講演させられましたが、学芸員の狙いは、早い時期に版元として売れないにもかかわらずエディションし続けた裏話でも聞きたかったからでしょう。ほんとに売れなかった。でも長い間売れずに眠り続けていた草間版画のおかげで、今頃になって潤っております(感謝!)。この「帽子」は最も初期の版画、そうは手に入らない逸品です。

43)国吉康雄「綱渡り」
1939年 リトグラフ 40.0x30.0cm Ed.100 signed 額付
国吉康雄「綱渡り」
フランスの藤田、アメリカの国吉、ともに日本を捨てて海外でそれこそ「腕一本」で画壇のトップに上り詰めたパイオニアです。サーカスの女の哀愁と美をモノクロ一色のリトグラフで表現したこの作品、日本版画史のみならず、20世紀を代表する名作版画といえるでしょう。

47)瑛九「よろこび」または「夜明」
1951年  銅版(作家自刷り) 14.5x7.5cm Ed.1部乃至数部 自筆サインあり 額付
瑛九「夜明」
今はなき林グラフィックプレス刊行の銅版カタログには「自刷りなし」と記載されていますが、ご覧の通り、正真正銘の瑛九の自刷り作品です。タイトルを確定できなかったのは、ひとえに亭主の怠慢です。林グラフィックプレスカタログには「夜明」と記載されています。いずれが正しいかただいま調査中ですので、しばらくお猶予ください。

48)駒井哲郎「室内」
1970年  銅版 18.0x13.2cm Ed.30 signed 額付  ※レゾネNo.277(美術出版社)
駒井哲郎「室内」
日本の版画史に燦然と輝く駒井哲郎先生50歳のときの作品。今年はちょうど生誕90年にあたり、銀座の資生堂ギャラリーと掛川の資生堂アートハウスで福原義春コレクションによる「駒井哲郎作品展」が開催されています。また来年4月からは町田市立国際版画美術館を皮切りに全国6美術館で大規模な巡回展も予定されています。

49)日和崎尊夫「五億の風の詩」
 1969年 木口木版 13.3x23.5cm  28/30 signed 額付 *レゾネNo.311
日和崎尊夫「五億の~」
1992年僅か50歳で逝った日和崎尊夫の文句無く代表作の一つ。名作です! 木口木版画技法を現代に蘇らせた功績は長く記憶されるでしょう。保存状態に少々難(ヤケ)があるので(修復可能です)超お買い得価格になっています。

50)内間安王星「FOREST BYOBU(FRAGRANCE)」
  1981年 木版 76.0×44.0cm Ed.120部  サインあり 額付
内間フォレスト屏風
先日の東京美術倶楽部で開催されたプリュス‐トウキョウ・コンテンポラリーアートフェアには尾形一郎・優さんの写真の大作3点を出品したのですが(3点とも売れました)、会場にいた尾形さんを訪ねて小・中学校時代の同級生の麗しきお二人が来場されました。そのお一人がなんとアメリカのサラ・ローレンス大学に留学されており、晩年の内間先生の教え子だった由。私が出会った版画家で最も知性溢れる紳士が内間先生でした。世の中に「紳士」というものが存在するとすれば、こういう人なんだと思わせる方でした。それですっかりかつての留学生と意気投合し、尾形さんそっちのけで、内間先生の思い出話に花が咲いたのでした。亡くなって10年、これほどの作家を日本はどうしてもっと顕彰しないのでしょうか。亭主の義憤は高まるばかり。恩地孝四郎の衣鉢を継ぐ日本の木版画の傑作です。

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