いよいよ明日からTOKYO FRONTLINEが開催されます。
初めてのフェアなので、主催者と私たち参加画廊との間のコミニュケーションもなかなか難しいところもありましたが、何とか展示に間に合いました。
TOKYO FRONTLINE01TOKYO FRONTLINE02
当初図面にはなかった蛍光灯(!)が設置されており、作品が展示できず、慌てて設置し直してもらいました。正面は尾形一郎・尾形優のウルトラ・バロックの大作。屏風は五味彬

TOKYO FRONTLINE03TOKYO FRONTLINE04左壁面は五味彬。右壁面は安藤忠雄磯崎新

tokyofrontline
会期:2011年2月17日(木)―2月20日(日)
会場:<3331 Arts Chiyoda
〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14
ときの忘れものブース GYM-19
入場料:1DAY 500円/全日フリーパス 1,800円 
TOKYO FRONTLINEは、旧練成中学校を改修して新しい東京のアートセンターとして生まれ変わった会場を使って、従来の「ブースセールス型・見本市型」とは異なる「開発型」のアートプラットフォームを目指したインターナショナル・アートフェアです。
若手コンテンポラリーアーティスト38組を選抜したスペシャルショーケース「FRONTLINE」、従来の国内のアートフェアの形式を発展させて、新しいマーケットの流れを生み出す「GYM」、そして、17の海外のアート組織、企業、メディアとコラボする「EXCHANGE」という三つのセクションから構成され、ときの忘れものは、20のギャラリーとともに「GYM」に出展します。


小野隆生「船が見える場所」 気更来のコレクション展より

一方、画廊では「気更来のコレクション展」を開催していますが、本日ご紹介するのは、イタリアで制作を続ける小野隆生のテンペラ作品です。
小野さんが初個展を開いたのは1976年5月24日~6月2日、洲之内徹さんが銀座で経営していた現代画廊ででした。
以来35年、小野さんはイタリアの小さな山岳都市に住みながら、淡々と肖像画を描き続けています。発表は数年おきに開く個展が主で、それもこちらから熱心に口説かないと実現しない。
肖像画といっても、特定のモデルがいるわけではなく、すべて小野さんのイメージの中の人物像です。
今回展示するのは2008年の個展で発表した作品です。

小野隆生1小野隆生2
左)小野隆生
船が見える場所 I
2008年 テンペラ・画布
170.0×60.0cm signed

右)小野隆生
船が見える場所 II
2008年 テンペラ・画布
170.0×60.0cm signed

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小野隆生の作品の魅力については池上ちかこさんが連載エッセイで詳述していますのでぜひお読みください。

藤原隆信 源頼朝像小野さんが自分を語ったり、書いたりすることはめったに(ほとんど)ないので、画商泣かせですが、2008年に伊東の池田20世紀美術館で初めての回顧展が開催されたときの図録に収録された、河合哲夫さん(当時朝日新聞)との対談では、小野さんが最も好きな藤原隆信が12世紀末に描いたという《源頼朝像》に関連して珍しく率直に真情を吐露しています。少し抜粋してみましょう。


小野隆生の言葉より

 「全ての部分を描写しない」で絵画表現を成功させていることにひかれます。全ての部分が描写されていないこともあって、見る毎に、私は騙されているような気さえしてきます。
 ときどき、複製をだしてきて、見入りますが、全ての部分を描写しないであれだけ人の眼を騙すことができるのは、ほんとうの写実表現力があるからです。これだけは確信して言えますが、絵画の仕事というのは詐欺のようなもので、もともとないものを描いて実在感を表現する。

 絵画の制作で、全ての部分を細かく描写することと、絵画的に描写することでは表現が異なります。

 頼朝像では、バックもなにもない。衣装は黒だけです。衣装のなかにちょっと浮き上がったような模様が入っていますが、描写されているのは顔面だけです。そこに性格描写を、それも鉄線描という線だけで、陰影はいっさい使っていません。鋭い一本の線だけで表現している。すべて必要最小限の処理です。これ以上加筆していれば、おそらく絵画の構成としては壊れることになったでしょう。
 絵画空間をリアルに感じさせるほど、恐ろしい卓越した絵画作品です。ただ、人がいるだけで、あとはいらない。他に余計なものがない絵画。イタリア美術史の中から、これと共通した絵画を挙げるとすれば、ジョットのいくつかの作品になると思いますが、どちらも人間の心理描写の表現に優れています。

 私の画家としてのバック・グラウンドはイタリアでつくられましたが、それ以前に、油彩画の制作を始めた少年時代から、絵の絵画表現の原点は肖像画でした。

  『描かれた影の記憶 小野隆生展 イタリアでの活動30年』カタログより引用

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◆ときの忘れものは、2011年2月8日[火]―2月26日[土]<陽気が更に来る>ことを祈りつつ「気更来のコレクション展」を開催しています(日曜・月曜・祝日は休廊。ただし、TOKYO FRONTLINE開催中の2月20日[日]は開廊します)。
気更来のコレクション展
出品:小野隆生、宮脇愛子、百瀬寿、秋葉シスイ、
アンドレ・ケルテス、植田正治、エドワード・スタイケン、瑛九、細江賢治