ピカソとミロ/It's a real★本物を買う!

ギャラリーツアーとかいうのが流行っているらしい。
ときの忘れものではお客さんに呼びかけ、温泉と蕎麦を愉しみながらの「建築ツアー」はときどき開催していますが、まさか手前どもの狭くて雑然たるギャラリーがツアーの対象になるとは思いもしませんでした。3月末に某社が企画しているギャラリーツアーのコースにときの忘れものを入れて10人前後で訪問したいと依頼がありました。有難いことですが果たしてどうなることやら・・・

3月5日6日の「It's a real★本物を買う!」展もあと数日に迫ってきました。
毎日問合せや予約のメールをいただき、スタッフ一同嬉しい毎日であります。
昨日は、日本が世界に誇る銅版画の3人、長谷川潔・浜口陽三・駒井哲郎をご紹介しましたが、ならばピカソ、ミロという文字通り20世紀を代表する巨匠の銅版画を紹介せねばバランスを欠きますね。
亭主の馬鹿の一つ覚えは「名作版画は例外なく連作の中から生まれる」ですが、二人も当然膨大な連作に挑み続けました。

ピカソについては、説明は不要でしょう。
90余年の生涯を通して油彩、素描、彫刻、陶器、版画、舞台衣装など、造形表現のあらゆるジャンルに極めて貪欲に取り組み2万数千点という天文学的な数の作品を遺したのがピカソでした。制作した版画は2,000点を越すでしょう。
今回の出品作品は銅版画347シリーズの一点。既に86歳に達していた1968年3月16日から10月5日までの204日間で制作された347点の膨大な連作版画の大作は、生涯の命題であった女性に対する「愛」を中心テーマとしながら、同時に画家として生涯に取り上げた数々の題材を回顧している作品でもあります。短期間に制作する集中力、スピード感、溢れるばかりの多様なイメージ、どれもピカソの天才を示しており、誰にも真似はできません。
24_ピカソ
24 パブロ・ピカソ 《347シリーズ(男とダンサー)》
1968 銅版 17x24cm Ed.50 Signed
(レゾネNo.1721)

ピカソの銅版の何より美しいのはその線描です。迷いがなく、細く鋭い線が銅版全体を流れるように覆っています。
この347シリーズの完全セット(2/50)を所蔵しているのが京セラ美術館です。


■ピカソの版画に対峙できるとしたら先ずはミロ(1893年~1983年)でしょう。
スペインが生んだ二人は20世紀美術を代表する巨匠ですが、ともに油彩に、版画に、彫刻に、陶器に、さらには舞台美術にまで多くの作品をのこしました。
ミロが本格的に版画に取り組み始めたのは35歳からですが、月や星、女性、鳥など身近なモチーフを、デフォルメした有機的な形態と鮮やかな色彩で独創的に表現しました。リトグラフや銅版は恐らく2500点以上制作したでしょう。ピカソの流麗な線に対し、ミロの不思議なかたちを描く線は詩的でありユニークです。加えて透明感のある色彩は、日本の多くの凡庸な版画家たちの濁った(よくいえば渋い)色彩に比べたら雲泥の差です。
新国立美術館で開催中の「シュルレアリスム展―パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による―」でも中心作家として展示され、ネット投票でも総合3位につけている(昨日現在)ように、近年のミロの評価はシュルレアリストとしてのそれです。
ミロ「ストリップショー(X2)」
32 ジョアン・ミロ 《ストリップショー》
1959 銅版 20x29.8cm Ed.75 Signed
(レゾネNo.272)

ミロ「女ー鳥」
33 ジョアン・ミロ 《女-鳥 II》
1960 銅版  34.5x46.5cm Ed.90 Signed
(レゾネNo.275)

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから