写真絵巻とフレスコ画の時を越えた出会い~イタリア・ルッカ

細江英公

2009年春、私のところへ"ルッカ・デジタルフォト・フェスト"というところから、『あなたを今年のマスターフォトグラファーに選びました。ついては、120mの壁面を使って展覧会をしてほしい。』というメールが来ました。いったい、誰がどういう理由で私のことを選んだのかわかりませんでしたが、カメラメーカーもない、フィルムメーカーもないイタリアの、そのまた小都市が、写真文化を謳い上げようとする姿勢に感動し、また、120mの壁面で展覧会をするというのは『面白い!』と、申し出を受けることにしました。資料を見ると、これがヴィッラ・ボッティーニという16世紀に建てられた貴族の館で、天井いっぱいにフレスコ画が描かれていて、実に立派な建物なのに驚きました。では、ここにどのように作品を展示しようかと考えたとき、日本的な絵巻ではどうかと思ったわけです。そこで、細江英公写真絵巻制作チーム(和紙染摺り:木田俊一氏、表装:天草仁司氏、詩:朝倉勇氏、アートディレクション:馬淵晃氏)の協力を得て、私の代表作を「細江英公写真絵巻」として制作し、もっとも中世的なイタリアの空間に日本的な写真絵巻を展示することにしたのです。この二つの文化の邂逅が素晴らしい効果を上げて、見事な空間をイタリアの古都の中に出現させました。私は、どうしてもそれをフィルムに定着させたいと思わずにはいられませんでした。
今回のときの忘れものの展覧会をご覧になった方に、少しでもその感動を分かち合っていただければと願ってやみません。
ほそええいこう)   

細江英公写真展―写真絵巻とフレスコ画の時を越えた出会い~イタリア・ルッカ
会期=2011年3月18日[金]―4月2日[土] 12:00-19:00 *会期中無休
細江英公展案内状600

昨年の文化功労者に選ばれた写真家・細江英公の新作による〈ヴィッラ・ボッティーニ〉12点連作は、イタリアのルッカにある16世紀の貴族の館を舞台に、ルネサンス期のフレスコ画と21世紀の細江作品との息詰まるような「対決と融合」の瞬間を捉えた作品です。
2009年11月の細江英公展の会場となったヴィッラ・ボッティーニは天井や壁面にフレスコ画が描かれた邸宅で、その絢爛たる空間に、総延長120mにわたり、細江先生と日本の職人チームが日本的伝統美の粋をこらした赤・青・緑の壁面をしつらえ、〈おとこと女〉〈薔薇刑〉〈鎌鼬〉〈ガウディの世界〉〈春本・浮世絵うつし〉他の代表作の絵巻、軸、屏風を展示しました。ヨーロッパの壮大な古典的建築空間と、和の色彩世界の対決と融合は、カラー作品でなくては表現できなかったでしょう。撮影は2009年ですが、発表するのは今回が初めてです(ヴィンテージ)。

細江英公写真新シリーズ〈ヴィッラ・ボッティーニ〉
細江英公〈ヴィッラ・ボッティーニ〉12点組
2009年(2011年プリント)
イメージサイズ55.6x43.3cm
シートサイズ60.9x50.8cm
マット外寸76.0x60.5cm
Type-C Print
限定10部 自筆サイン、限定番号入り
発行:ときの忘れもの

VillaBottini_01細江英公 Eikoh HOSOE
Villa Bottini #1
2009(Printed in 2011)
Type-C print
55.0x43.8cm
Ed.10 Signed

VillaBottini_09細江英公 Eikoh HOSOE
Villa Bottini #9
2009(Printed in 2011)
Type-C print
55.6x43.3cm
Ed.10 Signed

VillaBottini_10細江英公 Eikoh HOSOE
Villa Bottini #10
2009(Printed in 2011)
Type-C print
43.3x55.6cm
Ed.10 Signed

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細江英公 Eikoh HOSOE
1933年山形県に生まれる。50年英語を学ぶため米軍居住地に通い、アメリカ人の子供たちを撮影。51年第1回「富士フォトコンテスト」で最高賞を受賞し、写真家を志す。54年東京写真短期大学(現・東京工芸大学)写真技術科卒業。デモクラート美術家協会の瑛九と出会い、強い影響を受ける。56年銀座・小西六フォトギャラリーにて初個展。59年「VIVO」の設立に参加(61年解散)。60年日本写真批評家協会新人賞、富士フォトコンテスト年間作家賞受賞。63年写真集『薔薇刑』で日本写真批評家協会作家賞受賞。70年写真集『鎌鼬』で芸術選奨文部大臣賞受賞。75年東京写真大学短期大学部(現・東京工芸大学)の教授となる。82年全米とパリで個展開催、パリ市賞受賞。83年アルル国際写真フェスティバル名誉賞受賞。94年東京工芸大学芸術学部教授に就任。日本写真協会年度賞(93年)受賞。95年清里フォトアートミュージアムの初代館長に就任。98年東京工芸大学芸術学部(2003年で定年退職)及び大学院芸術学研究科(修士)課程教授に就任(02年博士課程教授に就任)。紫綬褒章受章。03年ロンドンにて英王立写真協会創立150周年特別記念メダル受章。06年日本人初のルーシー賞(アメリカ)受賞。07年旭日小綬章叙勲。2010年文化功労者に選ばれる。