このたびの地震、津波、原発で私たちが築いてきた社会システムは根幹から崩れ、それぞれを繋いできた輪は多くの箇所で切断されてしまいました。
それをどう維持し、復活または別の形で再生させるかが私たちに試されています。
少し昔話をさせてください。
亭主は、群馬の山奥に生まれ、小学校6年間、中学校3年間は群馬県吾妻郡嬬恋村で育ちました。ほとんどの家に電話はなく、開拓部落の子供にいたっては隣の家まで数百メートルという具合で、例えば台風のとき、休校を知らせるには、教師が学校から県庁所在地のNHK前橋放送局に電話して、ラジオで「本日は休校です」と放送してもらうのが唯一の伝達手段でした。
亭主が住んでいたのは三原という村の中心地で標高815m。
今思い出しても、同級生の家の生業は農業が圧倒的で、その他思いつくままに書くと、猟師、大工、洋品店、酒屋、銀行員、公務員、電気屋、土建業、など。
子供が現金を持ったり使う機会は、お祭りか運動会(村の最大イベントだった)の屋台くらいのもので、自給自足というか、世界はその中で完結していました。
中学の修学旅行は1960年5月、東京・鎌倉・木更津で、確か横浜港から船で対岸の木更津に渡ったのですが、この時ほとんどの者が初めて海を見て、船という乗り物に初めて乗った。
東京湾は波高く、波しぶきが学生服を濡らした。私たちは初体験に大はしゃぎし、揺れる甲板でカメラを持つ子は写真を撮りまくっていました。やがて木更津が近づくと海岸に黒山の人だかり、たかが群馬の山奥の修学旅行生をこんなに大歓迎してくれるのかと思ったら、実は私たちがはしゃいでいたのはチリ大地震の津波だったのです。船長と引率の教師は船中で真っ青になっていたらしいのですが、知らぬは子供達ばかり。今思うと危ういところでした。
いま私たちにできること、普通の日常を可能なかぎり維持し、経済活動を続けることではないでしょうか。
日本が売られるのを阻止し、世界から日本の価値を買ってもらうことが、救助と復興に繋がるのだと信じたい。音楽会に行ける人は愉しんで欲しい。映画も見て欲しい。落語もききましょう。通勤時間が長くなったのだから車中での読書時間も長くなった。本を買おう。
美しいものを、日本しか生み出せない美をつくり続けましょう。
もちろん画廊にも寄って欲しい。美しいものがあったら買って欲しい。
明日18日からときの忘れものでは、「細江英公写真展―写真絵巻とフレスコ画の時を越えた出会い~イタリア・ルッカ」を開催します。4月2日まで会期中無休で営業します。
明日17時からは、予定通り細江英公先生を囲みオープニングを行ないます。
細江英公先生からのメッセージです。
3月18日オープニングのこと、このような惨事のときのオープニングパーティで、災難に会われた方々のことを思うとき、気が引ける思いがありますが、このような時だからこそ、元気を出して、この展覧会を祝うということも考えます。
粛々と、しかし、暗い顔ではなく大いに元気がでる展覧会にしましょう。
この日は、偶然、私の誕生日と重なりますが、といっても、あまり派手に祝うことは避けたいと思います。今、東北関東大震災の現地では、沢山の人たちが命を落とし、誕生祝いなど出来ない大勢の被災者がおられますから、ここでは、まあ、せいぜいささやかに乾杯をする程度にしましょう、あるいは、何もしないで展覧会だけを祝う、静かな大人のパーティになればいいと思います。
細江英公
◆ときの忘れものは、2011年3月18日[金]―4月2日[土] 「細江英公写真展―写真絵巻とフレスコ画の時を越えた出会い~イタリア・ルッカ」を開催します(会期中無休)。

昨年の文化功労者に選ばれた写真家・細江英公の新作による〈ヴィッラ・ボッティーニ〉12点連作は、イタリアのルッカにある16世紀の貴族の館を舞台に、ルネサンス期のフレスコ画と21世紀の細江作品との息詰まるような「対決と融合」の瞬間を捉えた作品です。
2009年11月の細江英公展の会場となったヴィッラ・ボッティーニは天井や壁面にフレスコ画が描かれた邸宅で、その絢爛たる空間に、総延長120mにわたり、細江先生と日本の職人チームが日本的伝統美の粋をこらした赤・青・緑の壁面をしつらえ、〈おとこと女〉〈薔薇刑〉〈鎌鼬〉〈ガウディの世界〉〈春本・浮世絵うつし〉他の代表作の絵巻、軸、屏風を展示しました。ヨーロッパの壮大な古典的建築空間と、和の色彩世界の対決と融合は、カラー作品でなくては表現できなかったでしょう。撮影は2009年ですが、発表するのは今回が初めてです(ヴィンテージ)。ホームページに掲載した12点の画像はいかにもけばけばしい感じですが、実物作品の瑞々しい、したたるような美しさには思わず溜め息が出ます。
ぜひご来廊ください。
●3月18日(金)17:00よりオープニングを開催します。
●3月26日(土)17:00より細江英公さんvs大竹昭子さん(文筆家)によるギャラリートークを開催します。※要予約(参加費1,000円/1ドリンク付/メールでお名前と連絡先を明記してお申し込み下さい)
Tel.03-3470-2631/Mail.info@tokinowasuremono.com
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
◆地震がなければ新幹線で日帰りしてでも行きたい展覧会がありました。
栃木県立美術館で開催中の東ドイツの女性写真家の展覧会「哀愁のベルリン-分断されたドイツを生きた女性写真家の軌跡 ズィビレ・ベルゲマン展」 です。
会期=2011年1月22日[土]‐3月21日[月・祝]


1941年、戦火の迫るドイツの首都ベルリンに生まれた女性写真家ズィビレ・ベルゲマン-国家の分断という過去を踏まえながら、先端のファッションに身を包んだ女性たち、たくましく生きるアフリカの女性たち、そして愛らしい子供たちなどを活写した129点の写真で現代に生きる人間の孤独と希望を鮮やかに写しだす。(同館HPより)
同館に直接の被害はなかったようですが、東京電力の計画停電に対応し、16日(水)より休館となってしまった。残念!
それをどう維持し、復活または別の形で再生させるかが私たちに試されています。
少し昔話をさせてください。
亭主は、群馬の山奥に生まれ、小学校6年間、中学校3年間は群馬県吾妻郡嬬恋村で育ちました。ほとんどの家に電話はなく、開拓部落の子供にいたっては隣の家まで数百メートルという具合で、例えば台風のとき、休校を知らせるには、教師が学校から県庁所在地のNHK前橋放送局に電話して、ラジオで「本日は休校です」と放送してもらうのが唯一の伝達手段でした。
亭主が住んでいたのは三原という村の中心地で標高815m。
今思い出しても、同級生の家の生業は農業が圧倒的で、その他思いつくままに書くと、猟師、大工、洋品店、酒屋、銀行員、公務員、電気屋、土建業、など。
子供が現金を持ったり使う機会は、お祭りか運動会(村の最大イベントだった)の屋台くらいのもので、自給自足というか、世界はその中で完結していました。
中学の修学旅行は1960年5月、東京・鎌倉・木更津で、確か横浜港から船で対岸の木更津に渡ったのですが、この時ほとんどの者が初めて海を見て、船という乗り物に初めて乗った。
東京湾は波高く、波しぶきが学生服を濡らした。私たちは初体験に大はしゃぎし、揺れる甲板でカメラを持つ子は写真を撮りまくっていました。やがて木更津が近づくと海岸に黒山の人だかり、たかが群馬の山奥の修学旅行生をこんなに大歓迎してくれるのかと思ったら、実は私たちがはしゃいでいたのはチリ大地震の津波だったのです。船長と引率の教師は船中で真っ青になっていたらしいのですが、知らぬは子供達ばかり。今思うと危ういところでした。
いま私たちにできること、普通の日常を可能なかぎり維持し、経済活動を続けることではないでしょうか。
日本が売られるのを阻止し、世界から日本の価値を買ってもらうことが、救助と復興に繋がるのだと信じたい。音楽会に行ける人は愉しんで欲しい。映画も見て欲しい。落語もききましょう。通勤時間が長くなったのだから車中での読書時間も長くなった。本を買おう。
美しいものを、日本しか生み出せない美をつくり続けましょう。
もちろん画廊にも寄って欲しい。美しいものがあったら買って欲しい。
明日18日からときの忘れものでは、「細江英公写真展―写真絵巻とフレスコ画の時を越えた出会い~イタリア・ルッカ」を開催します。4月2日まで会期中無休で営業します。
明日17時からは、予定通り細江英公先生を囲みオープニングを行ないます。
細江英公先生からのメッセージです。
3月18日オープニングのこと、このような惨事のときのオープニングパーティで、災難に会われた方々のことを思うとき、気が引ける思いがありますが、このような時だからこそ、元気を出して、この展覧会を祝うということも考えます。
粛々と、しかし、暗い顔ではなく大いに元気がでる展覧会にしましょう。
この日は、偶然、私の誕生日と重なりますが、といっても、あまり派手に祝うことは避けたいと思います。今、東北関東大震災の現地では、沢山の人たちが命を落とし、誕生祝いなど出来ない大勢の被災者がおられますから、ここでは、まあ、せいぜいささやかに乾杯をする程度にしましょう、あるいは、何もしないで展覧会だけを祝う、静かな大人のパーティになればいいと思います。
細江英公
◆ときの忘れものは、2011年3月18日[金]―4月2日[土] 「細江英公写真展―写真絵巻とフレスコ画の時を越えた出会い~イタリア・ルッカ」を開催します(会期中無休)。

昨年の文化功労者に選ばれた写真家・細江英公の新作による〈ヴィッラ・ボッティーニ〉12点連作は、イタリアのルッカにある16世紀の貴族の館を舞台に、ルネサンス期のフレスコ画と21世紀の細江作品との息詰まるような「対決と融合」の瞬間を捉えた作品です。
2009年11月の細江英公展の会場となったヴィッラ・ボッティーニは天井や壁面にフレスコ画が描かれた邸宅で、その絢爛たる空間に、総延長120mにわたり、細江先生と日本の職人チームが日本的伝統美の粋をこらした赤・青・緑の壁面をしつらえ、〈おとこと女〉〈薔薇刑〉〈鎌鼬〉〈ガウディの世界〉〈春本・浮世絵うつし〉他の代表作の絵巻、軸、屏風を展示しました。ヨーロッパの壮大な古典的建築空間と、和の色彩世界の対決と融合は、カラー作品でなくては表現できなかったでしょう。撮影は2009年ですが、発表するのは今回が初めてです(ヴィンテージ)。ホームページに掲載した12点の画像はいかにもけばけばしい感じですが、実物作品の瑞々しい、したたるような美しさには思わず溜め息が出ます。
ぜひご来廊ください。
●3月18日(金)17:00よりオープニングを開催します。
●3月26日(土)17:00より細江英公さんvs大竹昭子さん(文筆家)によるギャラリートークを開催します。※要予約(参加費1,000円/1ドリンク付/メールでお名前と連絡先を明記してお申し込み下さい)
Tel.03-3470-2631/Mail.info@tokinowasuremono.com
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
◆地震がなければ新幹線で日帰りしてでも行きたい展覧会がありました。
栃木県立美術館で開催中の東ドイツの女性写真家の展覧会「哀愁のベルリン-分断されたドイツを生きた女性写真家の軌跡 ズィビレ・ベルゲマン展」 です。
会期=2011年1月22日[土]‐3月21日[月・祝]


1941年、戦火の迫るドイツの首都ベルリンに生まれた女性写真家ズィビレ・ベルゲマン-国家の分断という過去を踏まえながら、先端のファッションに身を包んだ女性たち、たくましく生きるアフリカの女性たち、そして愛らしい子供たちなどを活写した129点の写真で現代に生きる人間の孤独と希望を鮮やかに写しだす。(同館HPより)
同館に直接の被害はなかったようですが、東京電力の計画停電に対応し、16日(水)より休館となってしまった。残念!
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