細江英公写真展より 「抱擁」「ルナ・ロッサ」


震災の影響でアートフェアやオークション、展覧会が次々と中止や延期になっています。
残念なことですが、被災地の皆さんのご苦労を思うとそれも致し方ありません。
早く復興への道筋を政府が明らかにし、私たち市民の暮らしの行方が定まることを願うばかりです。
震災前に、開催を楽しみにしていた展覧会がありますが、始まった途端に震災となり中止となってしまいました。残念ですが、記録として残しておきましょう。

筑波大学所蔵 石井コレクション 特集展示「駒井哲郎&池田満寿夫」
会期:2011年3月8日(火)-3月27(日) *中止
会場:筑波大学大学会館アートスペース
http://www.art.tsukuba.ac.jp/artspace/artspace_present.htm

石井コレクションについては、先般小さいながらも秀作揃いの「瑛九展」があり、亭主も遠路をいとわず観に行きました。
このときは立派な冊子『石井コレクション研究1:瑛九』までつくられました。瑛九研究の一歩がまた進んだと思います。
寄贈されたコレクションが死蔵されることなく、公開され、さらに作品の詳細が研究者によって明らかになることは、コレクターにとっても嬉しいに違いありません。今回中止となってしまった「駒井哲郎&池田満寿夫」があらためて公開されることを願っています。

さて、ときの忘れもので開催中の「細江英公写真展―写真絵巻とフレスコ画の時を越えた出会い~イタリア・ルッカ」もいよいよ明日4月2日が最終日です。
今回の細江英公の新作による〈ヴィッラ・ボッティーニ〉12点連作は、2009年イタリアのルッカにある16世紀の貴族の館を舞台に、ルネサンス期のフレスコ画と21世紀の細江作品との息詰まるような「対決と融合」の瞬間を捉えた作品です。
VillaBottini_02細江英公 Eikoh HOSOE
Villa Bottini #2
2009(Printed in 2011)
Type-C print
55.6x43.3cm
Ed.10 Signed

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

◆細江英公先生の代表作「抱擁」と「ルナ・ロッサ」の連作から2点をご紹介いたします。
写真集「抱擁」は、1971年写真評論社から出版されました。その序文で三島由紀夫はこのように書いています。
「この連作は硬質で、アスレテイツクな美に溢れてゐる。何よりもまづ、それは『形』なのだ。」
「おとこと女」の続編とも言うべきこのシリーズは、肉体の美をひじょうに簡潔に捉え、プリントも男の肉体の黒さと女の白さの対比が際立たせてあります。
Embrace#28_1970細江英公
「抱擁 #28」
1970年
デジタル・ピグメント・プリント
125.0×100.0cm  Ed.10
サインあり

「ルナ・ロッサ」のシリーズは、細江英公が少年時代に受けた心の傷、原子爆弾の恐怖を白と黒を反転させたソラリゼーションの技法を使って表現した作品です。今そしてそれは、福島の原子力発電所で起きている放射能の恐怖という形で甦ってしまいました。
ルナロッサ「ひまわりの歌」細江英公
"Sunflower Song, Snowmass, Colorado"
from "Luna Rossa"
「ルナ・ロッサ」より「ひまわりの歌」

1992年(printed later)
ゼラチンシルバープリント
45.5x36.5cm
サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

◆ときの忘れものは、2011年3月18日[金]―4月2日[土] 「細江英公写真展―写真絵巻とフレスコ画の時を越えた出会い~イタリア・ルッカ」を開催します(会期中無休)。
細江英公展案内状600

昨年の文化功労者に選ばれた写真家・細江英公の新作による〈ヴィッラ・ボッティーニ〉12点連作は、イタリアのルッカにある16世紀の貴族の館を舞台に、ルネサンス期のフレスコ画と21世紀の細江作品との息詰まるような「対決と融合」の瞬間を捉えた作品です。
2009年11月の細江英公展の会場となったヴィッラ・ボッティーニは天井や壁面にフレスコ画が描かれた邸宅で、その絢爛たる空間に、総延長120mにわたり、細江先生と日本の職人チームが日本的伝統美の粋をこらした赤・青・緑の壁面をしつらえ、〈おとこと女〉〈薔薇刑〉〈鎌鼬〉〈ガウディの世界〉〈春本・浮世絵うつし〉他の代表作の絵巻、軸、屏風を展示しました。ヨーロッパの壮大な古典的建築空間と、和の色彩世界の対決と融合は、カラー作品でなくては表現できなかったでしょう。撮影は2009年ですが、発表するのは今回が初めてです(ヴィンテージ)。