芸術写真の精華/日本のピクトリアリズム 珠玉の名品展

現在、東京都写真美術館で「芸術写真の精華/日本のピクトリアリズム 珠玉の名品展」が開催されています。
写真が独自の美学を持つ以前、まだ絵画の立場から写真作品を見ていた19世紀後半に欧米で興った写真の絵画主義(ピクトリアリズム)の影響は、20世紀始めに日本にも伝播し、「芸術写真」と呼ばれる日本的な叙情性を表現した作品群が生まれました。ソフトフォーカスによって空気に湿度を与え、水墨画のような幽玄さを表現したり、熟練の技術を要するゴム印画やブロムオイル印画などのほか、「雑巾がけ」と呼ばれる油彩絵具を使用した日本独自のピグメント印画法で独特のマチエールを表現するなど、各地の写真倶楽部を中心に様々な工夫をこらして作品を制作しました。この展覧会では、まさに「日本のピクトリアリズムの珠玉の名品」を見ることが出来ます。

会 場:東京都写真美術館
会 期: 2011年3月8日 ( 火 ) ~ 5月8日 ( 日 )
休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
芸術写真の精華表芸術写真の精華裏

■出品写真(約120点)
黒川翠山、野島康三、小野隆太郎、吉野誠、日高長太郎、堺時雄、福森白洋、安井仲治、大久保好六、福原信三、福原路草、島村逢紅、梅阪鶯里、河野龍太郎、高山正隆、塩谷定好、廣井昇、小関庄太郎、田村榮、山本牧彦、岩佐保雄、有馬光城 ほか

会場に入ってまず最初にある黒川翠山の木立の中を行く旅人の写真は、ソフトフォーカスによって靄がかかったようになっており、手前から奥に向かって木のグラデーションが、墨絵のようで、まさに一幅の絵と言えます。福島の写真家・小関庄太郎の「一人歩む」は、一見して写真とは思えないほど描き込んであり、ユーモラスで独特な作品です。
時間をかけてじっくり見ていただきたい展覧会です。

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ときの忘れもののコレクションから2点をご紹介します。
この二人の写真家は、ともにピクトリアリズムの洗礼を受けましたが、植田正治は、ピグメント技法はかじっただけで、すぐにストレート写真へ移行し、福田勝治はこの当時、困窮の中にあって思うような制作ができず、やがて構成的な写真となりました。
浜の少年植田正治 Shoji UEDA
「浜の少年」1931年(Printed later)
ゼラチンシルバープリント
20.2x30.1cm サインあり

月光に照らされて福田勝治 Katsuji FUKUDA
「光りの貝殻(ヌード)」
1949年
ゼラチンシルバープリント
33.3×40.2cm サインあり

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