昨日は台風の影響で不順な天候の中、中藤毅彦さんを迎えて「第7回写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング」を開催いたしました。
心配した参加者数は飛び入りの方もおり、椅子がたらなくなるほどでした。
参加者、売上げ点数、金額とも過去最高の数字でした。遠く大阪から参加して下さった方もおり、賑やかなフォトビューイングとなりました。
残念だったのは過去6回の皆勤賞だったOさんが都合で欠席だったこと。次回はぜひよろしく。

亭主のパソコンが遂に壊れたことは先日ご報告しましたが、自宅のパソコンも調子が悪く(単に亭主の操作が間違っているだけかも知れませんが)、メールが使えなくなりました。
長年使っていた魔法瓶も壊れたし、このところ亭主の体調と同様、種々の機械が悲鳴を上げています。

マン・レイになってしまった人として有名な石原輝雄さんから待望の新刊『三條廣道辺り---戦前京都の詩人たち』が届きました。
発行日は8月27日(マン・レイの誕生日)。
240頁、パピヨン縢りによる手製本、写真図多数・書影紹介、限定75部という稀少本です。
戦前京都の詩人 俵青茅詩集『夜虹』の装画に、マン・レイのレイヨグラフが使われている。どこからこの図はやってきたのだろう、マン・レイの日本における受容史を研究している石原さんとしてはその謎を追いかけずにはいられない。

石原輝雄著三條廣道辺り
三條廣道辺り--戦前京都の詩人たち
著者:石原輝雄
刊行所:銀紙書房
240頁 
サイズ:21x15x1.6cm
限定75部 限定番号、サイン入り

[まえがきより]
 なぜか「手」に惹かれる。それも意志を持ち炎に包まれ、街の曲がり角に潜む驚きの手、若い女の手首から離れ、不意に肩先に乗って震えながら、「詩」を紡ぐペン先となる手。この手は、マン・レイと名乗って頁の間に入り込み、先に進めと命令口調でわたしを促す。燃え尽き灰となって風に舞う運命を知っているかのように、低く悲しい声である。
 本書の主な舞台は、戦前の巴里と京都と神戸、そして名古屋。シュルレアリスムの画家、写真家、映画人のマン・レイと、独逸に留学し映画・演劇を学んだ中西武夫との接点が、不思議な「時間旅行」の出発点となった。マン・レイのレイヨグラフを触媒に三條廣道辺りを彷徨する物語の流れは、京都の詩人たちを蘇らせ、忘れられた詩人俵青茅のエロテイシズムと、詩人で画家の天野隆一(大虹)の仕事を学びとらせた。天野から連なる詩友の道の先に竹中郁が現れたのは、『ひとで』に姿を変えた、「手」の導きである。その場所は巴里であり、神戸でもあった。さらに、こうした仏蘭西への憧憬が、戦前の名古屋廣小路に立つ事をわたしに促し、山本悍右、山中散生と再び言葉を交わす糸口となった。下郷羊雄の旧宅を探すに至ったのも、プライベート・プレスの魅力に改めて惹かれたのも、この流れであり、佐々木桔梗と鳥居昌三の愛溢れる力だった。
 鬼籍に入られた先人たちを訪ね、青春の言葉を聞き、持ち帰る事が、わたしの願いである。成否はともかく、この頁の先に進んでいただきたい……
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著者自装(パピヨンかがりによる手製本)
本文; Aプラン アイボリーホワイト 47.50kg
表紙; ケンラン モスグレー 265kg
表紙カバー; キュリアスIRパール 103kg
印刷; エプソン PX-503A

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[目次] 
まえがき ── 6
(1)<マン・レイ 中西武夫>
 カンパーニュ・プルミエール街の手紙 ── 12

(2)<俵青茅 天野隆一 錦光山雄二 キキ・ド・モンパルナス 竹中郁>
 三條廣道辺り ── 44
 大虹と隆一、画家と詩人 ── 78
 エロテックな墨流し ── 110
 「ひとで」が巡る巴里・神戸 ── 136

(3)<山本悍右 下郷羊雄 山中散生 佐々木桔梗 鳥居昌三>
 観月町の硝子窓 ── 168
 海人舎とプレス・ビブリオマーヌ ── 200

あとがき ── 234
資料 ── 236

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お忙しい勤めの傍ら、何から何まで手作りで75冊を仕上げる。
社長の造本(一年でたった1冊完成するのがやっと)を見ている亭主としては、石原さんの手作業の大変さがわかるだけに、あだやおろそかに開けません。
昨夜からいきつ戻りつ(知らない人ばかり出てくるので)読むふけっていますが、石原さんの探索行がサスペンスみたいな語り口で記述されています。
ときの忘れものお客さまでもあった佐々木桔梗さんのことも懐かしい。
驚いたのは亭主にとってかけがえのないパトロンだった秋田の町医者Fさん、奥様のMさんの名前を見出したことでした。どこでどう繋がっているかわからない。不思議な縁を感じます。
この本の頒布については、石原さんのホームページをお読みください。

石原輝雄さんには先日、アートフェア京都の観戦記をこのブログに執筆していただきましたし、2009年4月に開催したときの忘れものの「マン・レイ展」ではギャラリー・トークもお願いしました。