ときの忘れものでは「6月の画廊コレクション展~9人の作家たち」を開催しています(※日・月休廊)。
若い世代9人の作品展ですが、近況報告をかねた皆さんへのメッセージをいただいていますので、順次ご紹介しています。
本日は、このブログでエッセイ「墨と仏像と私」の連載をしている君島彩子さんです。
昨夏の個展では山下裕二先生から「伝統に寄り添うことなどさらさらなく、お稽古事的な水墨画の約束事ともまったく無縁」の「無国籍の水墨画」と評された如く、従来の水墨画とは全く異なる現代表現で注目を集めています。


"RECALL"
2012年
水彩紙、墨
32.0x22.0cm
サインあり

"THINK"
2012年
水彩紙、墨
32.0x22.0cm
サインあり

"FISH"
2012年
和紙、墨
45.0x49.0cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
--------------------------
「ART ROAD 77」
6月23日まで韓国のヘイリ芸術村で行われている「ART ROAD 77」の特別展「KYOTOKYO 2013」で新作が展示されています。
ソウル近郊の 京畿道、坡州市 にあるヘイリ芸術村には多数のギャラリーやカフェ、そしてアーティストのアトリエがあり、そのほとんどが若手の建築家の設計による奇抜な建築物なのです。特に週末は車で多くの人々が訪れており、文化的でおしゃれな観光地として広く認知されているようでした。
「ART ROAD 77」は、トリエンナーレ、ビエンナーレなどの大型アートイベントと異なり、全ての作品が販売される事を前提にしたエリア型展覧会です。国道77号線(ROAD77)は南と北の軍事境界線をまたいでお互いを行き来することができる道であり、このタイトルには、アートを通じて南北が繋がりたいという願いが込められているそうです。しかし、最近の情勢悪化により、政治だけでなく文化的な交流を行うことも難しいようであると感じました。
今回は Gallery CAUTIONの浜田宏司氏の企画と Gallery TOMOの青山知相氏の協力により、日本の現代美術を「ART ROAD 77」で始めて紹介することになりました。このような日本からの参加をきっかけにアートの道が世界中へつながっていけばいいと思いました。
「KYOTOKYO 2013」は私を含めて7人の日本で活動するアーティストの展示を行っています。
日本を代表する都市KYOTO(京都)とTOKYO(東京)の両都市で活動するアーティストの作品を、ヘイリ芸術村という同じ空間に展示することで新たな視点を示す試みとして、このタイトルがつけられたそうです。
「KYOTOKYO 2013」の展示が行われたADAMAS 253 GALLRERYも他のギャラリー同様に個性的な建物で、2階3階がカフェになっています。大きな窓から外光が差し込み昼と夜でまったく違う雰囲気になります。
私が今回の展示のテーマとしたのは「I take a new way to visit the flowers I have yet to see」です。
西行の「吉野山こぞの枝折の道かへてまだ見ぬかたの花をたづねむ」の英訳からとったのですが、日本語と英語でまったく違う印象になるのではないかと思います。
日本語で吉野山と書かれた後の「花」は「桜」しかイメージ出来ないと思います。しかし「flowers」はどうでしょうか?
私は西行の英訳本で偶然この歌を見つけた時に「flowers」は「薔薇」であると直感でイメージしました。
「まだ見ぬ花」は「まだ見ぬ誰か」なのかもしれません、または、本当は見ているけれど気がついていない「花」なのかもしれないと想像が広がりました。「花」と「flowers」は同じ意味ですが、コンテクストが違います。あえて英訳された歌から想像することで、新しいイメージが生まれたのだと思います。
「KYOTO」と「TOKYO」も「京都」と「東京」と別のコンテクストを含むのではないかと感じ、そのようなズレの中から、作品のイメージが広がればと制作を行いました。
また、今回は韓国の伝統的な紙である韓紙に描きました。韓紙は和紙と似ているところもあるのですが、墨を含むスピードや描き心地はかなり違います。
私の技法は、もともと大和絵の流れから生まれた「琳派」の技法ですが、伝統的な和紙以外にも水彩紙やケント紙など様々な紙を使用しています。そして、紙によって墨は違った表情を見せてくれるのです。今回は韓紙を使用することで、表現が広がったのではないかと思っています。
墨は、日本の青墨系の古墨を中心に韓国製、台湾製の墨を作品ごとに混ぜながら使用しました。写真ではなかなか伝わらないのですが作品ごとに墨の色味が違うと思います。
基本的に私の使用する材料は墨と紙そして水だけなのですが、その組み合わせの中から無限の表現が生まれます。
さらに水墨画という技法は東アジア共通のものであり、古くからの交流によって発展したものです。このような水墨画の成り立ちを踏まえ、インターナショナルな水墨画が制作できればと改めて感じました。
(きみじま あやこ)

自然に囲まれたヘイリ芸術村

多数のパブリックアートがあります

韓国料理のレストラン

現在も工事中の建築物も多いです

こちらに滞在させていただきました

オープニングパーティーの会場

大きな本屋を併設したカフェ

展示会場のADAMAS 253 Gallery

外から見た展示会場

展示風景

展示風景

展示風景、初めての白いフレーム

《Roses》 2013 墨、韓紙 50.0x31.0cm

《Roses》 2013 墨、韓紙 51.0x31.0cm
●明日15日のブログは植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」の更新日ですが、掲載画像が未着のため、今回は誠に勝手ながら19日の更新に変更させていただきます。
ご理解いただければ幸いです。
◆ときの忘れものは、2013年6月7日[金]―6月22日[土]「6月の画廊コレクション展~9人の作家たち」を開催しています(※日・月・祝日休廊)
上段左から:
秋葉シスイ、渡辺貴子、永井桃子
中段左から:
君島彩子、宇田義久、光嶋裕介
下段左から:
根岸文子、若宮綾子、野口琢郎
ときの忘れものが期待する若い世代の作家9名による作品展です。
平面、立体、技法や素材もさまざまな現代作家の多彩な表現をご堪能ください。
●光嶋裕介さんからのメッセージはコチラ。
●宇田義久さんからのメッセージはコチラ。
●渡辺貴子さんからのメッセージはコチラ。
●野口琢郎さんからのメッセージはコチラ。
●根岸文子さんからのメッセージはコチラ。
●君島彩子さんからのメッセージはコチラ。
●永井桃子さんからのメッセージはコチラ。
●若宮綾子さんからのメッセージはコチラ。
●秋葉シスイさんからのメッセージはコチラ。
若い世代9人の作品展ですが、近況報告をかねた皆さんへのメッセージをいただいていますので、順次ご紹介しています。
本日は、このブログでエッセイ「墨と仏像と私」の連載をしている君島彩子さんです。
昨夏の個展では山下裕二先生から「伝統に寄り添うことなどさらさらなく、お稽古事的な水墨画の約束事ともまったく無縁」の「無国籍の水墨画」と評された如く、従来の水墨画とは全く異なる現代表現で注目を集めています。


"RECALL"
2012年
水彩紙、墨
32.0x22.0cm
サインあり

"THINK"
2012年
水彩紙、墨
32.0x22.0cm
サインあり

"FISH"
2012年
和紙、墨
45.0x49.0cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
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「ART ROAD 77」
6月23日まで韓国のヘイリ芸術村で行われている「ART ROAD 77」の特別展「KYOTOKYO 2013」で新作が展示されています。
ソウル近郊の 京畿道、坡州市 にあるヘイリ芸術村には多数のギャラリーやカフェ、そしてアーティストのアトリエがあり、そのほとんどが若手の建築家の設計による奇抜な建築物なのです。特に週末は車で多くの人々が訪れており、文化的でおしゃれな観光地として広く認知されているようでした。
「ART ROAD 77」は、トリエンナーレ、ビエンナーレなどの大型アートイベントと異なり、全ての作品が販売される事を前提にしたエリア型展覧会です。国道77号線(ROAD77)は南と北の軍事境界線をまたいでお互いを行き来することができる道であり、このタイトルには、アートを通じて南北が繋がりたいという願いが込められているそうです。しかし、最近の情勢悪化により、政治だけでなく文化的な交流を行うことも難しいようであると感じました。
今回は Gallery CAUTIONの浜田宏司氏の企画と Gallery TOMOの青山知相氏の協力により、日本の現代美術を「ART ROAD 77」で始めて紹介することになりました。このような日本からの参加をきっかけにアートの道が世界中へつながっていけばいいと思いました。
「KYOTOKYO 2013」は私を含めて7人の日本で活動するアーティストの展示を行っています。
日本を代表する都市KYOTO(京都)とTOKYO(東京)の両都市で活動するアーティストの作品を、ヘイリ芸術村という同じ空間に展示することで新たな視点を示す試みとして、このタイトルがつけられたそうです。
「KYOTOKYO 2013」の展示が行われたADAMAS 253 GALLRERYも他のギャラリー同様に個性的な建物で、2階3階がカフェになっています。大きな窓から外光が差し込み昼と夜でまったく違う雰囲気になります。
私が今回の展示のテーマとしたのは「I take a new way to visit the flowers I have yet to see」です。
西行の「吉野山こぞの枝折の道かへてまだ見ぬかたの花をたづねむ」の英訳からとったのですが、日本語と英語でまったく違う印象になるのではないかと思います。
日本語で吉野山と書かれた後の「花」は「桜」しかイメージ出来ないと思います。しかし「flowers」はどうでしょうか?
私は西行の英訳本で偶然この歌を見つけた時に「flowers」は「薔薇」であると直感でイメージしました。
「まだ見ぬ花」は「まだ見ぬ誰か」なのかもしれません、または、本当は見ているけれど気がついていない「花」なのかもしれないと想像が広がりました。「花」と「flowers」は同じ意味ですが、コンテクストが違います。あえて英訳された歌から想像することで、新しいイメージが生まれたのだと思います。
「KYOTO」と「TOKYO」も「京都」と「東京」と別のコンテクストを含むのではないかと感じ、そのようなズレの中から、作品のイメージが広がればと制作を行いました。
また、今回は韓国の伝統的な紙である韓紙に描きました。韓紙は和紙と似ているところもあるのですが、墨を含むスピードや描き心地はかなり違います。
私の技法は、もともと大和絵の流れから生まれた「琳派」の技法ですが、伝統的な和紙以外にも水彩紙やケント紙など様々な紙を使用しています。そして、紙によって墨は違った表情を見せてくれるのです。今回は韓紙を使用することで、表現が広がったのではないかと思っています。
墨は、日本の青墨系の古墨を中心に韓国製、台湾製の墨を作品ごとに混ぜながら使用しました。写真ではなかなか伝わらないのですが作品ごとに墨の色味が違うと思います。
基本的に私の使用する材料は墨と紙そして水だけなのですが、その組み合わせの中から無限の表現が生まれます。
さらに水墨画という技法は東アジア共通のものであり、古くからの交流によって発展したものです。このような水墨画の成り立ちを踏まえ、インターナショナルな水墨画が制作できればと改めて感じました。
(きみじま あやこ)

自然に囲まれたヘイリ芸術村

多数のパブリックアートがあります

韓国料理のレストラン

現在も工事中の建築物も多いです

こちらに滞在させていただきました

オープニングパーティーの会場

大きな本屋を併設したカフェ

展示会場のADAMAS 253 Gallery

外から見た展示会場

展示風景

展示風景

展示風景、初めての白いフレーム

《Roses》 2013 墨、韓紙 50.0x31.0cm

《Roses》 2013 墨、韓紙 51.0x31.0cm
●明日15日のブログは植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」の更新日ですが、掲載画像が未着のため、今回は誠に勝手ながら19日の更新に変更させていただきます。
ご理解いただければ幸いです。
◆ときの忘れものは、2013年6月7日[金]―6月22日[土]「6月の画廊コレクション展~9人の作家たち」を開催しています(※日・月・祝日休廊)
上段左から:秋葉シスイ、渡辺貴子、永井桃子
中段左から:
君島彩子、宇田義久、光嶋裕介
下段左から:
根岸文子、若宮綾子、野口琢郎
ときの忘れものが期待する若い世代の作家9名による作品展です。
平面、立体、技法や素材もさまざまな現代作家の多彩な表現をご堪能ください。
●光嶋裕介さんからのメッセージはコチラ。
●宇田義久さんからのメッセージはコチラ。
●渡辺貴子さんからのメッセージはコチラ。
●野口琢郎さんからのメッセージはコチラ。
●根岸文子さんからのメッセージはコチラ。
●君島彩子さんからのメッセージはコチラ。
●永井桃子さんからのメッセージはコチラ。
●若宮綾子さんからのメッセージはコチラ。
●秋葉シスイさんからのメッセージはコチラ。
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