イーハトーブに瀧口修造と宮沢賢治を訪ねる旅の二日目。
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賢治の愛した風景を見ながら、小高い丘の上にある宮沢賢治記念館へと向かいました。
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大谷石でできた資料の収蔵庫。

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宮沢賢治記念館の前で。
休日ということもあって館内は多くのお客様で一杯でした。
展示は想像以上に充実しており、賢治の生涯、周囲の人たち、遺された作品についてわかりやすく解説されていました。

賢治は1933(昭和8)年37歳で亡くなりましたが、『国訳妙法蓮華経』千部を印刷し、知人に配布するよう家族に遺言します。そのお経の実物も展示してありました。
かつて、ときの忘れものが久保貞次郎先生の旧蔵書セールをした折、数千冊の中にこの『国訳妙法蓮華経』があることを気づかず、僅か100円で売ってしまったことがあります。
あまりの馬鹿さかげんにしばらく神田神保町の話題になったとか(もちろん笑い者にされたわけであります)。

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記念館から花巻市街をのぞむ。

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記念館からさらに小径をのぼり、胡四王神社へと向かう。
信号機のオブジェが可愛らしい。

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胡四王神社の創建は807年(大同2年)坂上田村麻呂が東夷東征の際、戦勝祈願し兜と薬師如来を奉納したのが始まりとされます。
現在の拝殿は1867年(慶応3年)、本殿は1912年(大正元年)に建立されたもので、賢治もよくこのあたりを散策したようです。
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記念館からすぐ近くなのですが、あまり知られていないせいか、境内は閑散としておりかえって賢治の往時を偲ぶことができました。

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記念館から長い長い石段を下り、イーハトーブ館へ。

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イーハトーブ館を背に。
右から二人目の栗原敦さんは亭主の50年来の友人で露天風呂愛好会の正会員ですが、実は宮沢賢治研究の第一人者でイーハトーブ館の館長さんです。
今回の賢治を訪ねての旅のナビゲーターは栗原さんです。

イーハトーブ館は宮沢賢治に関する様々なジャンルの芸術作品、研究論文を数多く収集した文学館で、「宮沢賢治学会イーハトーブセンター」の本部がおかれています。
賢治作品の童話絵本、研究書、CD、ビデオなどの販売や、各種講演会、研究発表会が行なわれたり、賢治祭、賢治生誕祭ではコンサートも開かれたりしています。
私たちが訪れたときには、佐藤比呂二展が開催されていました。
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イーハトーブ館の直ぐ傍にあるお蕎麦屋さんで昼酒をいただいた後は、新花巻に戻り盛岡へ。
いつものように駅から車で岩手県立美術館に向かったのですが、なんだか様子がヘン。
広大な駐車場なのに、もの凄い車の行列。
「何かあるのかしらねえ」といいながら、ようやく館内に入ると、チケット売り場に行列がずらり!
東日本大震災復興支援の「若冲が来てくれました プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」展がまさかまさかの大混雑、翌日が最終日だったので駆け込み人気なのかしらと、学芸員のYさんに聞くと、
「オープン以来、東京はじめ日本全国から若冲ファンのお客様が来られて・・ こんなこと初めてです」とのこと。
開館以来の最高の入場者数とのことでした。
若冲がこんなに人気があるとは、勉強不足でした(すいません)。
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3.11の大震災の報を聞いた米国カリフォルニアのコレクター、プライスさん夫妻が自分のコレクションを復興に少しでも役立ててもらいたいと企画された展覧会。
被災地の仙台、盛岡、福島の3会場だけの展示とあって、遠くは九州からかけつけたファンもいたようです。
「美」と「生命力」に満ちた作品群を子どもたちに見てもらいたいとの夫妻の思いから、展示やキャプションにも子供向けの工夫がこらされていました。
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「若冲が来てくれました」展図録

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アメリカからプライスさんご夫妻が来日され、この日は会場でサイン会も行なわれました。亭主はお二人の写真があるページにサインをしていただきました。

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仲良くサインに応じるプライスご夫妻。

日本一の常設展示(萬鉄五郎松本竣介舟越保武の名作がいつでも観られる)の2階もゆっくり観てから、市内に向かい、いよいよ直利庵で恒例の大宴会。
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地元の岩手日報に掲載された直利庵の女将さん。
百数十年の老舗を継ぎながら通信教育で学芸員資格を取得した大コレクター、岩手県立美術館の美術品収集評価委員会委員もつとめています。
(2012年7月19日 岩手日報)

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右は盛岡の建築家・中村孝幸さん、磯崎新版画のほとんどを持つコレクターです。
この夜は地元の皆さん4人も加わり、山海の珍味と銘酒あさ開にしたたか酔っ払い、最後はお蕎麦でしめました。

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女将さんを囲んでの記念撮影。
床の間の大きな作品は百瀬寿さん。
左後方に見えるブロンズは柳原義達の「道標ー鳩」。
いずれも女将さんのコレクション。

タクシーで真っ暗な夜道をひたすら一時間。
小岩井農場をさらに登りつめた岩手の名湯網張温泉が今日の宿。
大昔、大沢昌助先生をご案内したのを懐かしく思い出しました。
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翌朝、再び温泉に浸かり、旅も最後を迎えました。