Japanese Junction展とJapanese Junction Emerging Tragectories展

杉山幸一郎

只今開催しています、世界各地で様々な建築を学んでいる人たちの作品を一堂に集めた展覧会をご紹介します。
今年で第4回目となるJapanese Junction(以下JJ展)と、Japanese Junction Emerging Tragectories展(以下JJET展)の二つの展覧会です。
JJ展は世界各国の大学へ留学している建築学生たちの作品を一堂に集め、これから留学を考えている建築学生たちの参考になればと、各大学の紹介を含めて企画されてきました。今年は世界の11大学から13組の興味深い作品がパネル、模型、ポートフォリオなどを通して展示されています。今、海外の建築(教育)現場では一体何が起こっているのでしょうか?
LIXIL会場風景
(LIXIL GINZA展示風景)

建築という枠組みは、どんどん広がりつつあります。既存の(伝統的な)建築を参照した、歴史の上に建つ建築から、全く新しい思考・手法から生まれる実験的で大胆な建築。そして、昨今取り沙汰されている環境に対する配慮から、建築それ自体(省エネ空調設備や太陽光パネル、二重サッシュなど)のみならず、建築をつくる行為自体(リサイクル可能な材料、簡易で安全な施工方法)もエコロジカルであるべきだとする主張など。
先日行なわれたレビューでは、年末に一時帰国している学生たちがクリティークに来られた大御所建築家たちに力強くプレゼンしていて、海外生活で鍛えられた堂々とした振る舞いには、それだけで感心してしまう自分がいました。
また僕の印象では、ここ数年間で明らかに出展作品の感じが変わっていることに驚きました。コンピュータを使った構造最適化や、温熱環境シミュレーション、プログラミング言語を用いた設計手法から、マシンを使った施工まで。数年前までは、専門家が行なう専門的な技術として認識されていたようなことも、今では簡易なソフトウェアとその流布によって、多くの学生が気軽に使い、応用しているのが現状です。何より、展示場に運ばれてきた模型ほとんど全てがレーザーカッターや3Dプリンタで出力されていて、スチレンボードを「切った、貼った。」でできたものが1つもないことに、新しい潮流を感じざるを得ませんでした。

もう1つの展覧会であるJJET展は、過去にJJ展に出展したことのある若手建築家を対象に、留学前、留学中、現在の3つの過程にある作品を提示することで、その思考の軌跡を辿ろうという新しい試みです。
会場が根津美術館の向かいにあるミーレ・センター表参道という、国際的シェアのある大手家電メーカーのショールームということだけでも、「何だ、何だ?」と興味が湧いてきます。地下1階から地上3階まで、ミーレの全面的なバックアップにより、キッチンテーブルにシンクに、オーブンレンジの中に。と思いもよらない、通常の建築展示ではあり得ないようなところに作品が散りばめられていたり、一方で来場者を含めた温熱環境に反応し、色を美しく変化させる照明器具があったりと、非常に興味深い軌跡と展示空間がそこにはあります。

Miele会場風景1f
(1Fフロア展示風景)
Miele会場風景2f
(2Fフロア展示風景)
Miele会場風景3f
(3Fフロア展示風景)
光がそよぐパビリオン
(光がそよぐパビリオン2013)

僕自身は、以前このブログでも紹介させていただいた、「凹んだ屋根の家/環境器」から、留学中に歩いたキリスト教巡礼路からの経験で創りあげた「幸せにみちたくうかん」。そして近作の「光がそよぐパビリオン」を展示しています。

建築には大きく分けて(都市)設計と構造、環境の分野があります。構造は建築の具体的な床壁天井を構築するものだから設計と強く結びつきやすい。構造それ自体が建築を創りあげる主要な方法論にもなり得ます。一方で環境と言うと、どこか副次的なものとして捉えられがちです。設計され、構造計算されて具体的に建ち上がっていく建築に付加されていくものとして。
環境設備は機械技術に頼ったものでしかないのか。もしくは窓回りの断熱計画など、建築をつくりあげる上での主要な要素としてはなり難い、部分的な事柄を扱っているように思われがちです。もちろん、その土地に根ざした土着的建築(集落)は、確かに環境的建築ではあるけれど、気候風土・文化が異なるために全世界的に簡単に共有できる手法ではありません。

そこで、環境を主要テーマに建築を考えることができないか。そう思って考えたのが、周辺環境を受け入れ可視化する器「凹んだ屋根の家/環境器」であり、光と風によって居場所を描く「光がそよぐ建築」でした。また、偶然にも同じ展示フロアを共有することになった川島さん・丸山さんが提示した、環境に呼応して変化する作品群を見て、アウトプットの方法は違うけれど大きく共感するものがあり、お互いにこれからの建築の兆しを見つけることができました。

●JJ展はLIXIL GINZAにて。2014年1月6日 - 14日(水曜休館)10:00 - 18:00
●JJET展はミーレ・センター表参道にて。2014年1月7日 - 13日11:00 - 18:00
いずれも観覧料は無料です。詳細はhttp://japanesejunction.jp/index.htmlまで。

年初めのお忙しいところですが、皆さん時間を見つけて観に行ってみてはいかがでしょうか?

(すぎやまこういちろう)
*JJ展では会場構成を担当し、JJET展では出展しています。