瀧口修造展 III 瀧口修造とマルセル・デュシャン」には連日、多彩な方々がいらしています。
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11月15日の土渕信彦さんのギャラリートークは作品資料や写真をスライドでふんだんの使ったとても内容の濃いものでした。参加された皆さんも十二分に「瀧口修造とマルセル・デュシャン」の世界を堪能されたと思います。

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加納光於先生と、盛岡の瀧口研究家・岩崎美弥子さんが来廊。

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日本を代表するデュシャンコレクターの笠原正明さんが秘蔵のデュシャンの水彩画を持参してくださいました。
左は瀧口修造文庫を有する多摩美術大学の恩蔵昇さん。

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Marcel Duchamp
" La Femme en Rose "
1904-05 Paris or Blainville
watercolor 17.8 x 10.7 cm
Prov. H-P Roche
S.Cat.61

●出品作品から、瀧口修造・岡崎和郎《檢眼圖》をご紹介します。
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瀧口修造・岡崎和郎「檢眼圖」
東京ローズ・セラヴィ
シルクスクリーン、アクリル板、レンズ、アルミニウム
1977年
26.0×26.0×26.0
Ed.100の25番
内箱の内側に貼付された奥付ラベルに瀧口・岡崎のサイン入り

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マルセル・デュシャン「大ガラス」の「眼科医の証人」The Oculist Witnessesの部分を三次元に立体化したマルティプル。「グリーン・ボックス」のメモでは、この部分は”Tableaux d’oculiste”または”Tableaux oculistes”と表記されており、その訳を名称としている。瀧口修造は当初、製作部数を4部限定とする意向だったが、岡崎和郎の進言に従って100部に変更された。ただし実際に製作されたのは、瀧口存命中に完成した60部のみ。本体は瀧口の指定に基づき岡崎が製作に当たった。内箱の緑色がかったグレーの色彩や、眼の図柄、タイトルへの旧字体の使用なども同様。図面と内箱の製作には鈴木亘も協力している。
「大ガラス」の「眼科医の証人」の部分は、ガラスの上に透視図法に従って描かれているのに対して、「檢眼圖」では「グリーン・ボックス」所収の縮小図版(こちらは”Témoins Oculistes”と表記されている)から忠実に作製した平面図を、アクリル板の上にシルクスクリーンで定着し3次元化したもので、見る角度を調節することにより、「大ガラス」の「眼科医の証人」の部分の姿を再現することも可能となる。また、暗闇の中でブラックライトを照射すると、図柄が輝きながら空間に浮き上がる。
「檢眼圖」の製作に伴って書き溜められた瀧口の手稿が、手作り本「檢眼圖傍白」としてまとめられており、製作に当たって、デュシャン「グリーン・ボックス」所収のメモなどをはじめとする、多くの文献・資料が渉猟されたことが判る。また、奈良原一高撮影の「デュシャン 大ガラス」の写真連作も参照されたものと思われる。
完成後、早速、フランスのティニー・デュシャンのもとに1点が届けられ、たいそう喜ばれたと伝わる。
(文:土渕信彦)

◆ときの忘れものは2014年11月5日[水]―11月22日[土]「瀧口修造展 III 瀧口修造とマルセル・デュシャン」を開催しています(*会期中無休)。
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1月3月に続く3回展です。
瀧口修造のデカルコマニー、ドローイング、《シガー・ボックス》、《シガー・ボックス TEN-TEN》、《扉に鳥影》、マルセル・デュシャンの《グリーン・ボックス》、オリジナル銅版画『大ガラス』、奈良原一高の写真《デュシャン 大ガラス》連作、瀧口修造・岡崎和郎《檢眼圖》をご覧いただき、瀧口とデュシャンとの交流の実相と精神的な絆の一端を明らかにします。

●デカルコマニー47点を収録したカタログ『瀧口修造展Ⅱ』(テキスト:大谷省吾)を刊行しました(2,160円+送料250円)。
表紙2014年 ときの忘れもの 発行
64ページ 21.5x15.2cm
執筆:大谷省吾「瀧口修造のデカルコマニーをめぐって」
再録:瀧口修造「百の眼の物語」(『美術手帖』216号、1963年2月、美術出版社)
ハードカバー
英文併記


『瀧口修造展Ⅰ』と合わせご購読ください。