"SEA FORM" - Monochrome photo by Ernst Haas

先日、ブログに書いた通り画廊はいま雑然とした状態ですが、そういうときに限ってお客様がいらっしゃる。もちろん大歓迎ですが、一昨日来廊されたOさんなど平然たるもので、「人の家に来たようで僕はなんだか落ち着いて観られる気がします。」と仰っていました。まことにありがたい。

とはいえ、いつまでもこの混乱状態でいいはずはありません。本日中には二階のスタッフたちのスペースを整理して、文字通り「美しい展示」ができるように戻します。

次回企画は西村多美子さんが1968-69年にかけて撮影したアングラ劇団「状況劇場」の舞台写真の展示です。深い黒の中から浮かび上がる役者たちのほとばしるエネルギーが40年の時間を越えて私たちに迫ります。どうぞご期待ください。

●本日のお勧めは、かつて「色彩の魔術師」といわれたエルンスト・ハースのちょっと渋いモノクロームの作品です。
1921年オーストリアのウィーン生まれたエルンスト・ハースは、やがてパリを経由して、1950年にアメリカに渡り、「ライフ」誌などに多くの作品を掲載、活躍します。
ロバート・キャパらの創設メンバーによって写真家集団「Magnum Photos」に最初に迎えられた写真家の一人でもあります。
ハースは1950年代にカラー・フィルムによる撮影を開始し、初期のカラーフィルムが低感度であったことを逆に利用し、わざと焦点をはずしたり、ブレさせる手法を用いて強い視覚効果を創り出すことに成功しました。まるで抽象画のように踊る光や形は、カラー写真を芸術の域まで高め、「色彩の魔術師」と謳われ、他の写真家に大きな影響を与えました。

ときの忘れもので「エルンスト・ハース写真展」を開いたのは、2009年1月ですが、そのときもカラー写真が中心でした。

今回ご紹介するのは、ゼラチン・シルバー・プリントによるモノクロ写真です。生前にプリントされたもので、サインと限定番号が記入されています。
華やかなカラー写真と異なり、ちょっと渋い抽象画のような躍動感のある画面が私たちの目をひきつけます。
DSCF9613エルンスト・ハース
「SEA FORM」
ゼラチン・シルバー・プリント
Image size: 34.2x50.8cm
Sheet size: 37.3x50.8cm
Ed.99  Signed

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

エルンスト・ハース Ernst HAAS(1921-1986)
オーストリア・ウイーン生まれ。大学は医学部に通うが、1947年に雑誌「Heute」誌のカメラマンとなる。第2次大戦のオーストリア捕虜帰還を撮影したフォト・エッセイで名声を上げ、2年間パリで暮らした後、50年にアメリカへ移住。ロバート・キャパの勧めで写真家集団「Magnum Photos」に参加。52年、初めてカラーフイルムを使用し、ライカでニューヨークの街頭風景を撮影。この時の写真は『ライフ』誌に24ページ2部構成で掲載される。ハースはカラー写真でその才能を発揮し、巧みな色彩、ブレ、動きなど多くの手法を用い「エルンスト・ハースの色彩の世界」を確立した。62年、ニューヨーク近代美術館で個展が開催される。64年ジョン・ヒューストンの映画「天地創造」にスタッフとして参加、その後も「ハロー・ドーリー」(1969)「小さな巨人」(1970)などの映画制作に参加した。71年ハースにとって最高傑作となる写真集「THE CREATION」を刊行。75年、アメリカ建国200年の年に写真集「IN AMERICA」を出版。86年Hasselblad(ハッセルブラッド)賞受賞。『ライフ』誌を中心としたフォト・ジャーナリストの他、マールボロ、クライスラー、フォルクスワーゲン等の広告写真家としても活躍した。