野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第16回

東松照明先生との出会いと、助手を務めさせて頂いた一年の事 (1)

写真家の東松照明先生の命日は2012年12月14日、早いもので、来月で亡くなられてからもう3年が経ちます。
それで、私事ではありますが、先生との出会い、そして2000年2月からの一年間、長崎にて住み込みの助手を務めさせて頂いた期間の事と、その後亡くなられるまでの事を思い出しながら、何回かに分けて書かせて頂こうと思います。

東松先生との出会いは1988年でした。私はまだ13歳で中学2年生でしたが、この年の夏に父の知人の方のご家族と、二家族合同でバリ島へ旅行へ行きました。
両親が日大芸術学部・写真学科出身だった影響で私はカメラ小僧で、生意気にもこの歳でマミヤの6×6 C220プロフェッショナルという、中型のカメラを父から与えられ、愛用していました。

バリ島旅行時の自分バリ島旅行時の自分


そしてバリ島で、とある寺院に観光に行った時、私は一人走り周りながら撮影をしていたのですが、その時に父と同じカメラを構えている日本人らしき人を発見しました。なぜずぐに同じカメラだと解ったかというと、それがローライフレックスだったからです。

私はすぐに、暑さ疲れで車で休憩していた父の元へ走り「なぁ!パパとおんなじカメラ持ってるおっちゃんがいるでー!」と叫びました。
父は「お、そーか」とゆっくり私と一緒に歩きだしたのですが、そのローライフレックスを構えた人の姿が目に入ると急に落ち着きが無くなり、もの凄くびっくりした様子で近づき、恐る恐る声をかけました。
「あ、あの、、もしかして、、東松照明先生でいらっしゃいますか?」その日焼けした貫禄のある人は「はい、そうですよ」と笑顔で答えました。
その瞬間、当時好きだった時代劇の水戸黄門が印籠を出した時のように、頭を下げた父の身長が急に20cm縮んだ風景は衝撃的で、今でもはっきりと覚えています。
先生の隣には同じく日焼けされた泰子さんもおられました。
その時の風景を、身長がまだ150cm程だった私が下からマミヤで撮った写真がありますが、若く肌ツヤの良い東松先生と、興奮した父の様子がよく解ります。

私が撮影した東松先生私が撮影した東松先生


私が撮影した東松先生と泰子さんと父私が撮影した東松先生と泰子さんと父


父が撮影した東松先生父が撮影した東松先生


この頃の東松先生はアジアの国々を周って撮影をされていた時期だったようで、同じ時間に、バリ島の同じ寺院にいて、私はカメラ小僧で、先生と父のカメラが同じローライフレックスだった、そんなたくさんの偶然が重なったお陰で、東松先生に出会う事ができたのでした。

では続きはまた来月にでも書かせて頂こうと思います。
のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
20151115_noguchi_34_light野口琢郎
「光へ」
2011年
箔画(木パネル、漆、土、金・銀箔、石炭、樹脂、透明アクリル絵具)
37.9x45.5cm
サインあり


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●臨時ニュース
野口さんのよき理解者である福井淳子さんが南青山外苑前にギャラリーをオープンします。ときの忘れものから直ぐ近くです。
福井さんは石鍋博子さんが主宰するワンピース倶楽部のメンバーでもあり、コレクターの皆さんが集まるサロンになるでしょう。

<この度、南青山外苑前に工芸作品を中心に扱うアートギャラリー「morgenrot」(モルゲンロート)を11月27日(金)にオープンいたします。
店名の「morgenrot」(モルゲンロート)は、登山用語でもあり、ドイツ語で「朝焼け」を意味しています。私は時折山に登るのですが、山で見る朝焼けは、空の色と山脈が刻々と色を変える様子が大変美しく、自然の織りなす景色にとても幸せな気持ちになります。>(福井さんの案内状より)

20151127モルゲンロート20151127モルゲンロート 裏
morgenrot(モルゲンロート)オープニング展
「つなぐ―曙 あけぼの―」

会期:2015年11月27日[金]―12月11日[金]
会場:morgenrot(モルゲンロート)
   〒107-0062 東京都港区南青山3-4-8 第7SYビル1階
時間:12:00~19:00(最終日は18:00まで)
月曜休廊
※オープニングレセプション11月27日(金)18:00~20:00

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