スタッフSの海外ネットサーフィン No.40

「Occasions and other occurrences」
Dia: Beacon, New York, USA


読者の皆様こんにちわ、六月早々に都心でも29℃に届く日々が続き、「梅雨どこいった」とボヤいていたら今度は連日の雨、けれど気温はそう低くならずあまりの蒸し暑さに家では早くもエアコン全開なスタッフSこと新澤です。

Dia:Beacon

今回の記事でご紹介させていただく場所は、アメリカ・ニューヨークにあるDia: Beaconです。非営利団体であるDia Art Foundationによって運営されているこの美術館、中々に特徴的です。
まず第一にその所在。上記の画像を見れば分かりますが、住所こそニューヨークではあるものの、一般的にニューヨークと聞いて想像する都市部からおよそ100kmほど北の森の中にあります。何故こんな場所にあるのかというと、この美術館、以前は菓子業界の雄、ナビスコの梱包印刷工場だったそうで、1929年に建設されたこの工場を改装して、2003年にオープンしたのが現在のDia: Beaconです。ちなみに都市部から離れてはいますが、最寄駅からは歩いて5分圏内なのでアクセスが悪い、ということはありません。
この場所が都市部から離れているにも関わらず選ばれた理由は幾つかありますが、おそらくその中でも有力な理由はこの建築の構造でしょう。元が工場ということで支柱の間が大きく開けていることで大型作品の展示に適している事にに加え、敷地自体が15,000平方メートルという開館当時は世界最大級の展示スペースを誇り(現在もそうかは不明です)、なによりそれらの展示スペースがガラス張りの天井により自然光源を持つという美術館はそうある物ではありません。

20160626_Dia2Dia: Beaconの館内。
展示スペースで陽光の当たらない場所はありません。

このDia: Beaconと、同じくDia Art Foundationが運営するDia: Chelseaで6月24日から7月17日にかけて週末限定で開催されるのがアーティスト、イザベル・ルイス(Isabel Lewis)による「Occasions and other occurrences」、直訳すると「機会とその他の出来事」です。
ちなみに上でDia: Beaconの特徴について書きましたが、このイベント自体は美術館内ではなく、敷地近くの公園で開催されます。
カテゴリ分けすればパフォーミングアートになるのかもしれませんが、このイベントで提供されるのは見る「作品」ではなく、作家が提供する話題や環境を通じてそれぞれが独自に感じる「経験」です。視覚だけではなく、イザベル・ルイスのDJが聴覚を、シェフの作る料理が味覚を、そしてノルウェー出身のアーティスト、シセル・トラース(Sissel Tolaas)の作る香りが嗅覚を刺激して、「Occasions and other occurrences」という経験を来場者に提供します。
来場時には事前予約が推奨されていますが、イベント自体には決まった時間の長さはありません。作家曰く「このイベントから『何か』を感じて帰ってもらうことが目的。会場にいる時間は10分でも30分でも2時間でも問題ない」とのこと。

20160626_Dia32015年の「Occasion」でDJ役をこなすイザベル・ルイス。
今回のイベントでの話題は「カテゴリ分けと量数により定義される科学主義の現代欧米文化において、ルネサンスや中世の美術から得られるものはあるのか?」等。

話を聞くだけではなく、作家との会話も可能なそうなので、ちょっと変わったアート体験をしてみたい、という方にはいいかもしれません。

(しんざわ ゆう)

Dia Art Foundation公式サイト(英語)
Dia: Beacon公式サイト(英語)
"Occasions and other occurrences"紹介ページ(英語)

●今日のお勧め作品は山口勝弘です。
山口勝弘「夜の進行」600
山口勝弘 Katsuhiro YAMAGUCHI
夜の進行
1981年  シルクスクリーン
47.0×40.0cm
Ed.50 Signed

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