新学期が始まり、若い人たちにとっては希望に満ちた春だというのに、亭主の周辺では訃報が相次ぎ心沈む日々であります。
4月1日亭主の学生時代からの友人のお嬢さんが嫁ぎ先のアメリカで亡くなりました。僅か39歳の短い生涯でした。子に先立たれた親の心中、察するにあまりあります。
亭主は1989年4月43歳のとき、仕事でニューヨークに行ったのですが、社長と息子二人、そして友人のお嬢さんという5人での擬似家族旅行でした。彼女はまだ小学生でしたがミュージカル「レ・ミゼラブル」に感激し、それがきっかけとなり、英語を学びやがてアメリカに渡ったのでした。

4月7日亭主の原点ともいうべき高崎高校マンドリン・オーケストラ(TMO)のことはこのブログでもたびたび触れましたが、毎年夏のOBと現役による定期演奏会の第35回・第36回にゲスト指揮者として迎えた塩谷明先生(元群馬大学教授)が亡くなりました。第35回定演では「ヴィヴァルディの四季~春」を、第36回では「タイスの瞑想曲、ハバネラ、チャールダーシュ」などを塩谷先生指揮で演奏しました。プロの指揮者の指導に緊張し、いつもとは違った舞台を経験することができたことは懐かしい思い出です。直前の2月25日の演奏会でお元気に指揮棒を振っておられたとのことなので、急なことだったようです。92歳の大往生でした。

4月9日その高崎高校マンドリン・オーケストラの3年後輩で、4代目の学生指揮者だったO君が亡くなりました。病院に行ったのが3月中旬、そのときは既に手遅れでなすすべもなく自宅に帰り療養していたのですが、亭主が連絡をもらいお見舞いに行かなくてはと思う間もなく、68歳の生涯を終えました。
仕事の傍ら、自らバンドを組んで老人ホームなどに慰問演奏を積極的に行なっていました。既に体調が悪化していた3月11日には地域の公民館で最後の演奏をし、「肩の荷が下りたようにほっとしていた」とか。元気な姿しか思い浮かばない亭主には辛く切ない葬儀でした。

そんな中、大岡信先生が4月5日に亡くなられたことを新聞で知りました。
お元気な頃、原稿や展覧会などで、たいへんお世話になりました。
亭主(の世代)にとっては、大岡先生は詩人というより、南画廊の志水楠男さん、そして南画廊を発表の場とする作家たちの強力な支援者でありました。
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南画廊の青春    大岡信

 南画廊という画廊が日本橋にあった。画廊主志水楠男の逝去によって画廊は閉鎖され、今は跡かたもない。志水は一九七九年三月二十日に急死した。私は彼と日常的にも親密だったので、葬儀委員長として葬儀を執り行なわねばならなかった。会葬者の数は千人を越え、一画商の葬儀としては異例の盛大さだった。
(中略)
 読売をやめた後は、社会との接触点は主として南画廊になった。週に二日程度、日本橋の丹平ビルに出かけ、志水楠男のもとに送られてくる外国の郵便物を読んだり、簡単な返事を書いたり、また志水の催す展覧会の計画について相談に乗ったりした。そして夕刻ともなれば、志水とともに銀座のいくつかのバーに出かけるのが決まりだった。同行したのは、たまたまそこにやってきた東野芳明や他の画家たち。武満徹もたまには一緒だった。

*『詩人の眼・大岡信コレクション展』図録(2006年、朝日新聞社)より引用
20170418『詩人の眼・大岡信コレクション展』図録
2006年
朝日新聞社 発行
180ページ
26.7x19.5cm

●1980年秋、亭主が主宰する現代版画センター企画による「菅井汲展」を各地で開催しました。
既に志水さんなく、佐谷画廊が東京展の会場でした。パリから菅井汲先生もいらしてくださったのですが、再びパリに戻る菅井先生を囲み親しい人たちの会食会を開きました。メンバーは菅井先生のご指名でした。
1980年10月菅井会食左から時計周りに、北川フラム、飯田善國、三島喜美代、中原佑介、菅井汲、海藤日出男、大岡信、上甲ミドリの皆さんと、綿貫不二夫(後ろ姿)

大岡信 上甲ミドリ左から、大岡信先生、上甲ミドリさん、亭主
於:1980年10月、渋谷東天紅


●1983年6月23日元永定正さんの「日本芸術大賞」受賞を祝う会
1983年6月23日_元永定正「日本芸術大賞」受賞を祝う会_46大岡信先生(右)と亭主
壁面には「さんかく
於:代官山 ヒルサイドテラス

15回日本芸術大賞(昭和58年/1983年度 財団法人新潮文芸振興会主催)を受賞した元永定正先生のお祝いの会でした。このときの選考委員は、井上靖、大岡信、洲之内徹、山田智三郎の四氏でした。

大岡先生はよく知られているように、1959年(昭和34年)の南画廊(志水楠男さん主宰)の伝説的な「フォートリエ展」のカタログ作成に協力したのを機にサム・フランシスジャン・ティンゲリー瀧口修造加納光於、菅井汲などの作家たちと交流、共同制作をするなど現代美術の擁護者でした。

謹んでご冥福をお祈りいたします。
ありがとうございました。

◆ときの忘れものの次回企画は「植田正治写真展―光と陰の世界―Part I」です。
会期:2017年5月13日[土]―5月27日[土] *日・月・祝日休廊
201705UEDA_DM
初期名作から晩年のカラー写真など約15点をご覧いただきます。どうぞご期待ください。
●イベントのご案内
5月13日(土)17時より、写真史家の金子隆一さんによるギャラリートークを開催します(要予約/参加費1,000円)。
必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com