奈良原一高が写真家として歩み始めるきっかけとなった重要な作品、『人間の土地』。
初個展の30年後にリブロポートから刊行された写真集が、このたび復刊ドットコムから復刊されました。
ときの忘れものでも扱っていますので、ご注文ください。

20170824奈良原一高写真集
『HUMAN LAND 人間の土地』

2017年
復刊ドットコム 発行
176ページ
28.7x23.0cm
ハードカバー
テキスト:福島辰夫、奈良原一高
価格8,000円(税別)、送料別途


昭和三十一年(一九五六)、処女個展「人間の土地」によってたちまち写真界に認められた奈良原一高の登場ぶりは、まさに颯爽たるものがあった。問題意識と主題の設定における鮮烈さに人々は眼を見張った。そしてその点において、それまでの写真界に長らく不在だった、新しいタイプのパーソナリティーの出現であることを疑うものはなかった。
…(中略)…彼が「人間の土地」において発見したものは、どのような状況においても人間は生きていけるし生きているということへの、率直な感動であったといってよい。観念としてあった人間の生きる姿を、現実に如実なものとして発見したことの驚きなのであった。この作品はその驚きを隠そうとしない点でも鮮烈だった。
*重森弘庵(自意識の写真・奈良原一高)より

20170824_1掲載番号3)
奈良原一高
「軍艦島全景」


20170824_3掲載番号12)
奈良原一高
「地下道(トンネル)」


20170824_2掲載番号57)
奈良原一高
「海を見る少年」


本作『人間の土地』は、奈良原一高が早稲田大学院時代に長崎県の端島(軍艦)と鹿児島県の桜島(黒神村)を撮影し、1956年年に銀座松島ギャラリーでの初個展発表したシリーズです。軍艦島は海底炭鉱の開発ために埋め立てて人が住るよう改築を繰り返した人工島で、労働者と家族が要塞のような建物にひしめきあって暮らす、近代化産業の象徴のような炭鉱都市でた。
一方の桜島は20世紀以降火山活動が発になり、1914年の大噴火では村のほとんどが溶岩や灰に埋まりました。地中に埋まった3メートルもの鳥居がその凄まじさを伝えています。工業のために人工的に造られた要塞のような「緑なき島」と、自然の巨大な力の元にある「火の山の麓」。
子供時代を長崎で過ごした奈良原は、美学を志す学生として再び訪れた九州で、対照的な要因によって孤立したそれぞれの土地で厳しい条件の下に生き続ける人々の姿に惹かれてカメラを向けました。
『人間の土地』という示唆的なタイトルを与えられたこの作品には、どんな過酷な土地でも根を張り生きていくという人間の極限の希望が若き日の作家のまなざしを通して焼き付けられおり、軍艦島が閉山して長い年月が経ち世界遺産となった今も変わらず、見るものを引きつける大きな力を放っています。

●今日のお勧め作品は奈良原一高です。
narahara_17_wthv3
Ikko NARAHARA
"Two Garbage Cans, Indian Village, New Mexico from "Where Time Has Vanished"
写真集〈消滅した時間〉より
《インディアンの村の二つのごみ缶、ニューメキシコ》
1972
Gelatin Silver Print / printed in 1975
Image Size : 26.5×39.8cm
Sheet Size : 40.6×50.8cm
Signed
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