野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第38回

夏の新作制作

9月に入って京都もだいぶ涼しくなり、今年の夏は結局夏らしいお出かけを一度もできなかったので、やはり少し寂しい感じはありますが、制作の方は色々と進んだのでご紹介致します。

まず、以前いったん完成していた凸凹の作品(6号M/41×24.2cm)に手を入れました。
この作品はちょっと心がささくれ立っていた時に作ったので、見てるだけでしんどくなり、下の金箔はもったいないですが一部残しながら上にまた盛り足してプラチナ箔を押しました。
ただこれでもまだちょっとドギツいですが、面白い作品にはなったかと思います。

凸凹作品凸凹作品


次に久しぶりにLandscapeシリーズ、#41(8号M/45.5×27.3cm)はあまり細かくなり過ぎないように意識しました。
小さくても静かな存在感のある作品になったかと思います。

Landscape#41野口琢郎
「Landscape#41」
2017年
45.5×27.3cm(8号M)


HANABI#10(15号F/65.2×53cm)の箔押しは50%程終了。
今回の#10は前作までに増えた要素をあえて減らして、シンプルな初期作品に近い雰囲気に戻そうと思って進めています。

HANABI#10「HANABI#10」制作中


Landscapeシリーズも空や海の作品にも言えますが、一度要素が増えたり、変化した後に、初期作品に近い雰囲気に戻る事はよくあって、それは初心に帰りたいわけではなくて、時間をかけて進化して増やした球種をあえて減らして、直球で勝負したくなる感じでしょうか、でも費やした時間や経験の分だけ同じ直球でも昔よりキレが出る、ま、野球経験者ではないのでそんな事はありえないのかもですが、作品制作にはそんな感覚があります。

HANABI#1野口琢郎
「HANABI#1」
2005年
22×16cm


ちなみに画像がHANABIシリーズの一作目、2005年作の「HANABI#1」(22×16cm)です。
荒削りなりの強さがあって、この頃はまだ自分で銀を硫化させていたので味があります。
得るものがある反面失うものもある、でもそれが人間が作っているものの面白さなのかなと思います。

そして、12月頭にときの忘れものさんのブースから出展させて頂くマイアミでのアートフェア用の大作2点も完成「azure」F100号(162.1×130.3cm)と、「I remember」(145.5×120cm)です。
「azure」は青の美しい見応えある作品になりました。実は今まで大作は横長が多く、意外にも100号を作るのは初めてで、これ位のサイズで縦位置で海と空を作ったのも初めてでした。縦位置だと海の水の重みがでるように感じました。

DSC_6275大作2点


azure野口琢郎
「azure」
2017年
162.1×130.3cm(F100号)


I remember野口琢郎
「I remember」
2017年
145.5×120cm


「I remember」はなんかちょっと切なくなるような夕暮れの海の作品が作りたくなって、構想時は空にも金の雲を混ぜるつもりだったのですが、最近はあまりドラマティックな空を作る気がしないのと、空の色は一色で統一するのがどうも好みなので、結局赤一色の空になりましたが、良い作品になったかと思います。

では、過ごしやすい季節になるので、引き続き作品制作をがんばります。
のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。

●今日のお勧め作品は野口琢郎です。
20170915_ls38野口琢郎
《Landscape #38》
2016年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
60.6×41.0cm
Signed


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埼玉県立近代美術館では15年ぶりとなる「駒井哲郎 夢の散策者」展が開催されています。
会期:2017年9月12日[火]~10月9日[月・祝]
企画を担当された吉岡知子さん(同館学芸員)のエッセイ<企画展「駒井哲郎 夢の散策者」に寄せて―武田光司氏のコレクション>をお読みください。

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