小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第15回


理想の話から始めたいと思います。

自分が面白い!と思った本を、自分がつけた価格で売りたい。
面白いと思った価値を価格に反映して、その価格を見たお客様が「たしかにこのくらいの価値だな」と思って買って行ってくださる。
これが、現時点での、自分のお店の理想です。

理想をたまには語らないと、語ることによって「商売=お金を得ること」に傾いた頭をトントンッとして、瓶に詰まった砂が固まるように固めないと、昨今の出版ニュースを賑わせているような不健全なことが起こる気がします。
もちろん事業である以上、お金を稼がないといけません。出版でいうと、部数を伸ばさないといけない。でも、数字というのは恐いもので、追いかけ始めるともうそれしか見えなくなる。いくつもの別の頭で考えないといけない要素が、数字に直結して、数字に置き換えられるもの以外が、目に入らなくなってしまいます。

というわけで、今月は理想を語ろう月間です。

どうしてこんなことを言うのかというと、つまり、とある本が売れないからです。
この本は、きっと自分がつけた価格の裏付けたる価値が伝わっていないからだと思います。
そこで、今回はこの本の価値を、がんばって伝えたいと思います。

こんな本です。

写真1

写真2

写真3

写真4


今から50年弱前に出ていたシリーズ「目で見る 世界の旅」です。
どうでしょうか?
この本、素敵じゃないですか?
どこが素敵かというと、まずは写真と内容。
50年前という絶妙な古さが、もう今では不可能になってしまった旅行へと私たちを誘います。たぶん、この本を読んで実際に「ここに行こう!」と思っても、その風景はないものが多いはず。つまり、本を読むことでしか旅ができないのです。まさしく「目で見る 世界の旅」。
このシリーズ名は、50年経って本当になりました。
次に、時々織り込まれるカットも見逃せない。

写真5

写真6

写真7


本としての愉しみは、こういう些細なところのイメージで手を抜くかどうかで大きく変わります。いい!

写真8

そして、扉に書かれたイラストマップ。文字の感じも素敵です。
今、奥付を見て気づいたのですが、この本、挿絵・カット・イラストだけで、5人の作家を使っています。ああ、なんて豪華な・・・。
この多様な手の入り方が、本当に豪華な作りの本なのだと思います。

さて、この本、おいくらでしょうか?

気になる方は、ぜひ当店のネットショップをご覧ください・・・。(商売!)
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。


●今日のお勧め作品は、加藤清之です。
kato_02加藤清之 Kiyoyuki KATO
「白磁」
1983年
白磁
14.6x14.6x13.5cm
箱サイズ: 17.3x17.3x17.5cm
サインあり
共箱
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●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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