小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第22回
古本屋になってみて一番ワクワクするのは、見たことのない本を見ながら「これは売れるだろうか。」と内容を吟味している瞬間。先日もそんなものを買いました。

『季刊 無尽蔵』という雑誌です。
古書の市場で、小さな束になって、ささやかに台の上に置かれていました。
ちょっと武骨な感じもするタイトルのロゴ。そして真っ黒な作りに、必要最低限の文字が配された本の背。少し気になったので、何冊かを束の中から引き抜き、パラパラとめくります。
最初に目にしたのはこんなページでした。

うるさい店主の言葉みたいで、いいですね。最初は「民藝の雑誌だろうか?」と思っていただけに、このページで怒られた気分に。しかし、確固とした「思い」によって雑誌が作られているのが分かります。
しかも、全項目に「所謂」と書いているので、私のように外見だけで本を判断しようとしている人が、おそらく一番嫌いでしょう。「でも、これも本屋の大事な仕事なんだよ・・・」と言い訳しながら、目次をのぞきます。

後半部分、「編集長から」「悪口雑言」「フリースペース」「メモ」(!メモっていう目次初めて見た気がする。)妙に気になる目次です。
さらにほかの号をめくると、読者はがきについて。説明付きで4ページ分の読者はがき。そして一枚は切手を貼り込んでいる。すごい熱量です。よく言われることですが、当時の雑誌は、今でいうSNSのような存在でもあったことがわかります。
編集された、時間がかかる(書くのも、読むのも、載るのも)それは、質の高い交流でもあったはず。SNSに踊らされる現代からみると、ある意味うらやましいとも言えます。
寄稿している人のほとんどは、自分で「もの」を作っている人。今では本の装幀も数多く手がけられている望月通陽さんの、若かりし日の記事もあります。どれもが、作り手の声を意識しているような、語りの文章です。
こういうことをひとつずつ確認しているうちに(もちろん市場では、こういう確認を一瞬で行うことがほとんど。)だんだんと「これをお店に並べたらどうだろう?」とイメージが膨らんでいきます。
今回は、無事落札することができたこの雑誌。全部で15号、出ているようです。
おそらくは、読んだ記事から判断するに、「美」よりも「用」を大事にする雑誌。しかし、それが不思議に美しさも引き出している。みなさま、店頭でぜひ手に取ってみてください。
(おくに たかし)
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●本日のお勧め作品は横尾忠則です。
横尾忠則
「Shiro Kuramata(原美術館)ポスター」
デザイン:横尾忠則
1996
シルクスクリーン
102.8x72.7cm(F:106.3x76.2cm)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものは4月28日(日)~5月6日(月)まで連休です。お問い合わせへの返信は5月7日(火)以降になりますので予めご了承ください。
◆ときの忘れものでは「第311回企画◆葉栗剛展 」を開催します。
会期:2019年5月24日[金]―6月8日[土]11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊

ときの忘れものは毎年アジアやアメリカのアートフェアに出展し、木彫作家・葉栗剛の作品をメインに出品しています。今回は、2014年以来二回目となる個展を開催し、国内未公開作品11点をご覧いただきます。
初日5月24日[金]17時よりオープニングを開催します。
●『DEAR JONAS MEKAS 僕たちのすきなジョナス・メカス』
会期:2019年5月11日(土)~6月13日(木)
会場:OUR FAVOURITE SHOP 内 OFS gallery
〒108-0072 東京都港区白金5-12-21 TEL.03-6677-0575
OPEN 12:00-19:00(ただし展示最終日は17:00まで)
CLOSE: 月・火(祝日を除く)
●『光嶋裕介展~光のランドスケープ』
会期:2019年4月20日(土)~5月19日(日)
会場:アンフォルメル中川村美術館
[開館時間]火・木・土・日曜日 祝日 9時~16時(連休中は全日開館しています)
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。
*日・月・祝日は休廊。
古本屋になってみて一番ワクワクするのは、見たことのない本を見ながら「これは売れるだろうか。」と内容を吟味している瞬間。先日もそんなものを買いました。

『季刊 無尽蔵』という雑誌です。
古書の市場で、小さな束になって、ささやかに台の上に置かれていました。
ちょっと武骨な感じもするタイトルのロゴ。そして真っ黒な作りに、必要最低限の文字が配された本の背。少し気になったので、何冊かを束の中から引き抜き、パラパラとめくります。
最初に目にしたのはこんなページでした。

うるさい店主の言葉みたいで、いいですね。最初は「民藝の雑誌だろうか?」と思っていただけに、このページで怒られた気分に。しかし、確固とした「思い」によって雑誌が作られているのが分かります。
しかも、全項目に「所謂」と書いているので、私のように外見だけで本を判断しようとしている人が、おそらく一番嫌いでしょう。「でも、これも本屋の大事な仕事なんだよ・・・」と言い訳しながら、目次をのぞきます。

後半部分、「編集長から」「悪口雑言」「フリースペース」「メモ」(!メモっていう目次初めて見た気がする。)妙に気になる目次です。
さらにほかの号をめくると、読者はがきについて。説明付きで4ページ分の読者はがき。そして一枚は切手を貼り込んでいる。すごい熱量です。よく言われることですが、当時の雑誌は、今でいうSNSのような存在でもあったことがわかります。
編集された、時間がかかる(書くのも、読むのも、載るのも)それは、質の高い交流でもあったはず。SNSに踊らされる現代からみると、ある意味うらやましいとも言えます。
寄稿している人のほとんどは、自分で「もの」を作っている人。今では本の装幀も数多く手がけられている望月通陽さんの、若かりし日の記事もあります。どれもが、作り手の声を意識しているような、語りの文章です。
こういうことをひとつずつ確認しているうちに(もちろん市場では、こういう確認を一瞬で行うことがほとんど。)だんだんと「これをお店に並べたらどうだろう?」とイメージが膨らんでいきます。
今回は、無事落札することができたこの雑誌。全部で15号、出ているようです。
おそらくは、読んだ記事から判断するに、「美」よりも「用」を大事にする雑誌。しかし、それが不思議に美しさも引き出している。みなさま、店頭でぜひ手に取ってみてください。
(おくに たかし)
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●本日のお勧め作品は横尾忠則です。
横尾忠則「Shiro Kuramata(原美術館)ポスター」
デザイン:横尾忠則
1996
シルクスクリーン
102.8x72.7cm(F:106.3x76.2cm)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものは4月28日(日)~5月6日(月)まで連休です。お問い合わせへの返信は5月7日(火)以降になりますので予めご了承ください。
◆ときの忘れものでは「第311回企画◆葉栗剛展 」を開催します。
会期:2019年5月24日[金]―6月8日[土]11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊

ときの忘れものは毎年アジアやアメリカのアートフェアに出展し、木彫作家・葉栗剛の作品をメインに出品しています。今回は、2014年以来二回目となる個展を開催し、国内未公開作品11点をご覧いただきます。
初日5月24日[金]17時よりオープニングを開催します。
●『DEAR JONAS MEKAS 僕たちのすきなジョナス・メカス』
会期:2019年5月11日(土)~6月13日(木)
会場:OUR FAVOURITE SHOP 内 OFS gallery
〒108-0072 東京都港区白金5-12-21 TEL.03-6677-0575
OPEN 12:00-19:00(ただし展示最終日は17:00まで)
CLOSE: 月・火(祝日を除く)
●『光嶋裕介展~光のランドスケープ』
会期:2019年4月20日(土)~5月19日(日)
会場:アンフォルメル中川村美術館
[開館時間]火・木・土・日曜日 祝日 9時~16時(連休中は全日開館しています)
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。
*日・月・祝日は休廊。
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