野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第62回
「新展開」
先月のエッセイで制作が絶不調と書いていましたが、やっと少し調子が戻りつつあります。
今までのままではダメだと悩んでおりましたが、悩んでも悩んでもそんなに急に新しいものができるわけもなく、
そんなに真新しい新展開は無くとも、とにかく制作を始めた所、うまくいけば新展開となりそうな事を思いつきました。
箔画の上に着色をする事です。
今までも赤い箔の上に赤い透明色を、青い箔の上に青い透明色の絵の具を重ね、
箔の金属反射が無くならない程度に色の補強をしていましたが。
もう何も関係無く、透明色の絵の具をドリッピングしてみたらどうかなと、
今は家に残る過去作品で実験を兼ねて試していて、画像のものはプラチナ箔の部分にドリッピングしています。
ドリッピングはすでに色々な作家さんがしておられますが、
箔の上に透明色の場合は箔の反射で絵の具も少し輝く感じになるので、
うまくいけば新たな展開になるのではと楽しみにしています。
元々高校も大学も一応は油画コースなので、絵の具を使えないわけではないのですが、
やはりまだまだ付け焼き刃なので、自分のものにできるように試行錯誤していこうと思います。
箔画なのに絵の具を前面に出して使ってしまうのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
箔画と名付けて始めたのは自分なので、表現は勝手に変えても良いかなと、
ただ、今までの作風も大事に続けつつ、箔がより生きる絵の具の使い方をしていきたいと思います。
そして何より、画面に絵の具を飛ばすのが楽しいです。
最近制作はほぼ苦しみしか感じられてなかったので、楽しいと感じられて良かったです。
あともう一つ、先日Facebookで繋がった何年も前からコメントなどで応援してくださっている方からメッセージが来ました。
「野口君、水面って動いてるよね、空も流れている」
この方のご意見として、少し昔の僕の海空の作品の海の波は動いて見えたけど、今は動きが感じられないとの事でした。
動きに関して自分ではあまり違いは感じていなかったのですが、年々波の表現が細かく丁寧になっている自覚はありました。
ただ確かに比べてみると、少し昔の作品は波部分の箔の引っ掻き方が荒いのですが、それが動きになっていたのだとわかりました。
細かく丁寧な海の表現も悪いとは思いませんが、丁寧になりすぎて動きや面白みがなくなるというのは芸術ではよくある事だなと思うので、これから今一度海を描く時には特に動きを意識してみようと思います。
箔は絵の具と違って暈したりする表現が難しいので、空の表現などは特に動きを出すのは難しいのですが、
これももしかして、今後絵の具も使う事で動きを出せるようになるかもしれないと思っています。
悩む事はたくさんありますが、がんばります。


(のぐち たくろう)
■野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。
ホームページhttp://noguchi-takuro.com/
◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
野口琢郎 Takuro NOGUCHI
"Landscape#30"
2013年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
91.0×182.0cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●野口琢郎展カタログのご案内
野口琢郎展カタログ
2018年
ときの忘れもの発行
24ページ
テキスト:島敦彦(金沢21世紀美術館館長)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
本体価格800円(税込)
※送料別途250円(メールにてお申し込みください)
◆Art Taipei 2019 に出展します。
会期:2019年10月18日(金)~10月21日(月)
出品作家:葉栗剛、野口琢郎、ジョナス・メカス、小野隆生、ナム・ジュン・パイク、光嶋裕介、安藤忠雄、ル・コルビュジエ、他
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
「新展開」
先月のエッセイで制作が絶不調と書いていましたが、やっと少し調子が戻りつつあります。
今までのままではダメだと悩んでおりましたが、悩んでも悩んでもそんなに急に新しいものができるわけもなく、
そんなに真新しい新展開は無くとも、とにかく制作を始めた所、うまくいけば新展開となりそうな事を思いつきました。
箔画の上に着色をする事です。
今までも赤い箔の上に赤い透明色を、青い箔の上に青い透明色の絵の具を重ね、
箔の金属反射が無くならない程度に色の補強をしていましたが。
もう何も関係無く、透明色の絵の具をドリッピングしてみたらどうかなと、
今は家に残る過去作品で実験を兼ねて試していて、画像のものはプラチナ箔の部分にドリッピングしています。
ドリッピングはすでに色々な作家さんがしておられますが、
箔の上に透明色の場合は箔の反射で絵の具も少し輝く感じになるので、
うまくいけば新たな展開になるのではと楽しみにしています。
元々高校も大学も一応は油画コースなので、絵の具を使えないわけではないのですが、
やはりまだまだ付け焼き刃なので、自分のものにできるように試行錯誤していこうと思います。
箔画なのに絵の具を前面に出して使ってしまうのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
箔画と名付けて始めたのは自分なので、表現は勝手に変えても良いかなと、
ただ、今までの作風も大事に続けつつ、箔がより生きる絵の具の使い方をしていきたいと思います。
そして何より、画面に絵の具を飛ばすのが楽しいです。
最近制作はほぼ苦しみしか感じられてなかったので、楽しいと感じられて良かったです。
あともう一つ、先日Facebookで繋がった何年も前からコメントなどで応援してくださっている方からメッセージが来ました。
「野口君、水面って動いてるよね、空も流れている」
この方のご意見として、少し昔の僕の海空の作品の海の波は動いて見えたけど、今は動きが感じられないとの事でした。
動きに関して自分ではあまり違いは感じていなかったのですが、年々波の表現が細かく丁寧になっている自覚はありました。
ただ確かに比べてみると、少し昔の作品は波部分の箔の引っ掻き方が荒いのですが、それが動きになっていたのだとわかりました。
細かく丁寧な海の表現も悪いとは思いませんが、丁寧になりすぎて動きや面白みがなくなるというのは芸術ではよくある事だなと思うので、これから今一度海を描く時には特に動きを意識してみようと思います。
箔は絵の具と違って暈したりする表現が難しいので、空の表現などは特に動きを出すのは難しいのですが、
これももしかして、今後絵の具も使う事で動きを出せるようになるかもしれないと思っています。
悩む事はたくさんありますが、がんばります。


(のぐち たくろう)
■野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。
ホームページhttp://noguchi-takuro.com/
◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
野口琢郎 Takuro NOGUCHI"Landscape#30"
2013年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
91.0×182.0cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●野口琢郎展カタログのご案内
野口琢郎展カタログ2018年
ときの忘れもの発行
24ページ
テキスト:島敦彦(金沢21世紀美術館館長)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
本体価格800円(税込)
※送料別途250円(メールにてお申し込みください)
◆Art Taipei 2019 に出展します。
会期:2019年10月18日(金)~10月21日(月)出品作家:葉栗剛、野口琢郎、ジョナス・メカス、小野隆生、ナム・ジュン・パイク、光嶋裕介、安藤忠雄、ル・コルビュジエ、他
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
コメント