尾崎森平のエッセイ「長いこんにちは」第8回

『会津旅行記① ファシズムの影を求めて』

 こんにちは、紅顔可憐の美青年、尾崎森平です。

 3月の末に一泊二日で友人作家らと共に福島県は会津若松市に行って参りました。コロナ・ウィルスの感染が東北にも拡がる中だったので、極りょく人の密集している空間を避ける為に移動は自家用車で、食事は惣菜などを買い込んで部屋で済ますという旅情に欠ける旅ではありましたが、久しぶりに仲間と宿で忌憚なく美術や今後の活動について話し合うことが出来ました。

 なぜ会津若松か。それは、いよいよ他県への移動が出来なくなるという前に、どうしても制作の為に取材をしておきたい場所があったからです。

 それは飯盛山の「ポンペイの古代遺跡の柱」です!!

 「え?そんなものあったっけ?」と同行した福島県民の友人作家でさえ知らないようでしたし、かくいう僕も数ヶ月前までは知りませんでした。小学校の修学旅行で一度訪れているのに。飯盛山の麓に着くと、さっそく友人達がブー垂れる。「この階段登のかよ~」と。私は心を張本勲にして言った。喝だ喝!!

尾崎森平01

 飯盛山はこの急な勾配を階段を使って登る。エレベーターもあるがなんと有料である。アコギだ。チクショウ、150年前の若者が集団自殺した場所が心霊スポットじゃなくて観光スポットになるなんて(心の声)。

 話を戻します。飯盛山は会津若松市の最も有名な観光スポットですが、そこに佇む「ポンペイの古代遺跡の柱」はニッチもニッチ。まぁ誰も知らない。いや、正確に言えば、訪れれば誰もが必ず目にするはずなのに記憶に残らない。なぜなら、大抵の観光客のお目当ては「白虎隊自刃の地」や国指定重要文化財の「円通三匝堂(さざえ堂)」。可哀想な日陰者なのです(ポンペイの古代遺跡ですよ?)。

 でも、日陰者であるのにも理由があるのです。それはこの「ポンペイの古代遺跡の柱」は、あのムッソリーニ率いるファシスト政権下のローマ市からの寄贈品なのです!!
そう、僕の会津若松旅行の第一の目的はこのプチ・ダークツーリズムにありました。
 柱の上部にはローマ軍のシンボルである鷲の銅像が翼を広げ鎮座し、土台の前面には『文明の母なるローマは白虎隊士勇士の遺烈に不屈の敬意を捧げんがため、古代ローマの権威を表すファシスタ党章のマサカリを飾り、永遠偉大の証たる千年の古石柱を贈る。』と刻まれ、裏面には『武士道の精華に捧ぐ、ローマ元老院と市民より』とあります。
 
 この記念碑はだいぶ紆余曲折の末に建ったようで、単純に同盟国となる両国の間柄を象徴するものでもないが、白虎隊の「美談」が度々プロパガンダとして利用されてきたという証拠ではある。積極的に紹介されないはその為なのだろうか(因みに、後の1935年にナチス・ドイツのヒトラーユーゲントが国際交流として飯盛山を訪れ、同地には鉄十字の記念碑もあるのだが、超地味なので割愛します)。

 とにかく、飯盛山は色んな意味で面白いところなのでした。

尾崎森平02

これがその記念碑!!銅像と白い石の土台の間の茶色の円柱がポンペイの古代遺跡の柱である。

尾崎森平03

土台の前面。ラテン語かな。

尾崎森平04

建築ファンとして、やはり「さざえ堂」も堪らなく魅力的です!!
おざき しんぺい

尾崎森平 Shinpey OZAKI
1987年仙台市生まれ 。岩手大学教育学部芸術文化課程造形コース卒業。現代の東北の景色から立ち現れる神話や歴史的事象との共振を描く。2016年「VOCA 2016 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち 」大原美術館賞 。平成27年度 岩手県美術選奨。2019年4月ときの忘れもの「Tricolore2019―中村潤・尾崎森平・谷川桐子展」に出品。
ホームページ https://shinpeywarhol.wixsite.com/ozaki-shinpey

●尾崎森平のエッセイ「長いこんにちは」は毎月25日の更新です。

●本日のお勧め作品は谷川桐子です。
tanikawa-03谷川桐子 Kirico TANIKAWA
《After the rain》  
2012年  キャンバスに油彩 
53.0×45.5cm(F10号) サインあり
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◎昨日読まれたブログ(archive)/2016年06月20日|南画廊のカタログ
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