野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第71回

「近況」

どんどん月日が流れ、あっという間に関西も梅雨の時期になりました。
2月8日に我が子が生まれ、思えばあの頃はまだ新型コロナウィルスがここまで世界に大打撃を与える事になるとは、想像もしていませんでした。
現時点で日本国内は緊急事態宣言も解除され、京都はほとんど新たな感染者は出ていないので、
まだ十分に警戒しつつも、日常生活においての極度の緊張状態からは少し解放されました。
とはいえ、まだ外食に行こう、夜にちょっと飲みに出てみようという気にはなれませんが。
そういえば実は僕自身まさか!?という事件もありました。
5月のある日、昼に急な37.3度の発熱があり、その後平熱に戻ったものの、夜にまた37.3度の熱、急遽父の判断で実家の蔵に隔離される事となりました。
発熱以外には少しだけ咳が出たのですが、夜の内にまた平熱に戻り、その後は発熱は治まりました。
家族が京都市の新型コロナ相談センターに問い合わせてくれた所、京都の感染状況と僕の症状からして、新型コロナの心配はほとんど無いものと思われますとの事で、
心配であればかかりつけ医に診察をしてもらってくださいという事だったので、いつも気管支喘息のお薬をもらっている呼吸器科の先生に診て頂きました。
ただ、僕の症状ではPCR検査の対象にはならないという事で、肺のレントゲンと普通の血液検査だけしてもらって、特に異常無しという事だったのですが、
もしも、軽症状の新型コロナだったとしたら家族にうつすかもしれないと思うと心配で、PCR検査を受けさせてさえもらえないというシステムには疑問を感じました。
とはいえ、念の為と2週間も蔵に隔離されるというのはかなり辛く、それで逆に体を弱めそうだったので、家族と相談して、元の生活に戻りました。
その後、僕も家族にも体調に変化は無かったので本当に良かったです。
ちなみに、実家は古い京町家なので蔵があるのですが、昔は父が西陣の箔押しの仕事を蔵でしていたもので、テレビや布団もあります。

ここしばらくエッセイの内容が子供の事ばかりになってしまっているので、今回は控えめにしようと思っていますが、
最近よく声を発し、こちらが笑顔を見せると笑顔で返してくれるようになり、それが何よりの癒しになっています。
ただ4ヶ月で体重がすでに8.8kgと、10ヶ月の赤ちゃんの平均体重と同じ重さになっており、かなりプクプクです。
(ほとんど母乳でミルクは1日に1回程度なのですが、とにかくよく飲むもので)
なので、実はつい先日、ついに抱っこが原因でギックリ腰になってしまい、2日間程は安静が必要で、
抱っこはもちろん全く家事育児をできなくなってしまったので妻に申し訳なかったのですが、コルセットをしながら徐々に復帰できました。

実家の箔屋野口への観光のお客様は相変わらずのゼロが続いているのもあり、
国の持続化給付金の申請や、作家個人としては京都市の文化芸術活動緊急奨励金への申請もしました。
色々なニュースや記事を読んでも、今後世界で、また日本国内で美術業界の形がどう変化していくのか、
作家業で生きていくには何をどうすべきか、何かを変えるべきなのか、その答えは見えずにいます。
確実に感じるのは、コロナ以前と全く同じには戻らないという事でしょうか。
我が子の猛スピードの成長を目の当たりにしていると、気持ちは焦るばかりですが、
あまり外出もしにくい時代になるのであれば、今までよりも家に美術作品を飾って頂くという習慣がもっと当たり前になるかもしれない、
そう願って、小さな事からコツコツとがんばろうと思います。
のぐち たくろう

●お知らせ
『箔屋野口のオンラインショップ』が6月11日にオープンしました。
野口琢郎先生とお父様の作品があります。
野口先生の作品はときの忘れもので取り扱っている作品よりだいぶ小さいですがその分小さなスペースにも飾ることができそうです。
お求めはこちらから

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。
ホームページhttp://noguchi-takuro.com/

◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。

●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
noguchi-43_quiethope野口琢郎 Takuro NOGUCHI
"Quiet hope"
2017年
箔画/木パネル、漆、金・銀箔、石炭、樹脂、アクリル絵具
110.0×200.0cm
Signed
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阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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