スタッフSの海外ネットサーフィン No.86
「Architecture for Dogs -犬のための建築-」
Japan House -London-


 読者の皆様こんにちは。ようやく夏の暑さも和らいできた…どころではない今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。ようやく涼しくなったものの、連日の雨で結局窓を閉め切ってエアコン全力運転で寝起きを続けております、スタッフSこと新澤です。

 今年はコロナウイルスのせいでほぼ全てのアートフェアが開催中止となり、それはアートフェア界の雄であるArt Baselも例外ではなく、3月の香港、6月のバーゼルはもちろん、12月のマイアミも中止となりました。とはいえインターネットの発達が著しい今日この頃、物理的に開催できないならネット上でイベント開催すればいいじゃないと、本日まで開催されているArt Basel OVR:2020と、10月末に開催されるArt Basel OVR:20cが企画されました。ときの忘れものはこのArt Basel OVR:20cに、当画廊が誇る建築家のドローイング/版画で挑戦しようとしています。倍率が高いでしょうから合否は分かりませんが、出展が決まりましたら盛大に告知させていただきます。告知がない場合は、まぁそういうことだとお察しください。

 前置きが長くなりましたが、今回選んだ展覧会はこの建築に関係して選んだ「Architecture for Dogs -犬のための建築-」です。タイトルが十割内容を説明していますが、詳しく見てみると中々すごい展覧会です。

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 今回はロンドンのジャパン・ハウスで開催されている当展覧会ですが、既に開催は8回を数え、今までに日本、アメリカ、ブラジル、中国など、世界各地を巡っています。今回の会場であるジャパン・ハウスはギャラリーやシアター、セレクトショップ、レストラン、ライブラリーを備えた複合的な文化・商業施設で、欧米で興味の高まる日本文化を正しく発信するために、ロンドン以外にもアメリカ・LA、ブラジル・サンパウロにも展開しています。

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© Hiroshi YODA

 展覧会は複数の建築家が各自一匹の犬をモデルに、その犬に相応しい建築をデザインするという、正に犬のための企画ですが、まず参加者が一流のデザイナー・建築家しかいません。主催者の原研哉と原デザイン事務所の他に、日本からは伊東豊雄、隈研吾、妹島和世、内藤廣、坂茂に藤本壮介。海外からはブラジルのFGMF、オランダのMVRDV、ドイツの工業デザイナーコンスタンティン・グルチッチや、今年はロンドンからアシフ・カーンによる「犬小屋」というイメージには収まらない作品が展示されています。

20200926_architecture4dogs_03イギリスの建築家アシフ・カーンによる黒い毛皮の犬のためのデザイン"I See You!"
ローテーブルとフェルトのカーペットを組み合わせたようなデザインで、上部には犬が入りこめる窪みがあります。
© Jeremie SOUTEYRAT
20200926_architecture4dogs_02プリツカー賞受賞歴もある建築家、坂茂がパピヨンのためにデザインした"PAPIER PAPILLON"。
材料はサランラップの芯材と針金だけというシンプルさ。
自由に形を変えるオブジェは、囲いだけではなく、ベッドやブランコ、迷路の他、人間用の椅子やテーブルにも変化します。
© Hiroshi YODA
 面白いのは、各作品の設計図がArchitecture for Dogsの公式ページに用意されており、気に入った作品があればDIYで自分の愛犬のためのデザイナーズハウスが作れるということ。各作品の紹介ページには動画も掲載されており、実際に犬と作品が関わっている場面を観ることができる他、組み立て手順も紹介されています。
 個人的に気に入ったのはFGMFがヨークシャーテリアにデザインした「COCOON」。金属製の骨組みで区切られた立方体の空間に、宙吊りにされた寝床スペース(厚紙に布を巻いたもの)が目を引くデザインです。骨組みの上部は板を渡せばテーブルとしても使え、実用性も兼ねた一石二鳥のインテリアとなっています。正直DIYするには少しハードルが高いとも思えますが…。



 もう一点ユニークなのは、今回のロンドンでの展示ではペット(犬)同伴可能ということ。あくまでも抱えて持てるサイズ限定かつ、よく躾けられていること、そして犬もソーシャルディスタンスを守ることなど、このご時世を顧みて色々と条件はありますが、愛犬と一緒に犬のための建築を見て回るというのも楽しい話です。特定の作品であれば、実際に犬が接することができる展示もあるそうです。

 時差があるので日本で見ようとすると夜21:00からになってしまいますが、本日にはストリーミングによるオンラインツアーも開催されますので、ご興味のある方は是非ご覧になってみてください。10月1日(木)には原研哉のオンライントークイベント(予約制)も開催されます。

(しんざわ ゆう)

ジャパン・ハウス・ロンドン展覧会公式ページ(英語)

Architecture for Dogs公式ページ(日本語)

●本日のお勧め作品はマイケル・グレイブスです。
sugiyama-lf19《作品 7・84/1》
1984年
木版
30.3×24.0cm
Ed.150
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆9月16日ブログで「杉山幸一郎ドローイング特別頒布会」を開催しています。
d2e4d4df-s今夏、ときの忘れものでは杉山幸一郎さんの初個展を開催予定でしたが、新型コロナの影響でスイスからの帰国が困難となり、延期となりました。新作ドローイングを9月16日のブログで特別頒布しています。また建築と社会の関係を視覚化する新しいメディアとして注目されているarchitecturephotoアーキテクチャーフォトが杉山さんのドローイングとオブジェクトを特集し、作家のメッセージも掲載されています。ぜひご覧ください。

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。