■今週のWATANUKI'S CHOICE/
第43回/2021年2月16日/銀塩写真の魅力 Ⅶより、平嶋彰彦「黒澤明 北海道苫小牧市。『影武者』ロケ現場。
平嶋彰彦「黒澤明 北海道苫小牧市。『影武者』ロケ現場。」
『影武者』は黒澤明が久しぶりに手掛けた時代劇で、映画ファンの期待も大きく、製作中からいろいろとメディアで取り上げられた。北海道のロケ現場を1泊2日で取材したこのときは、目まぐるしく変わる天候に災いされて、1日目は1シーンも撮り終えることができなかった。妥協を許さない映画づくりと聞いていたが、そのこともあって機嫌が悪く、一日中怒鳴りまくっていた。『七人の侍』や『用心棒』は私の大好きな映画だが、なんども観ていると、黒澤明が映画づくりを楽しんでいるのが伝わってくる。そんな黒澤を撮りたかった。2日目の夕方、スタッフが後片づけをする傍らで、黒澤は椅子に腰かけていた。斜光線のなかでくつろぐ表情は、まさしく私のうちなる黒澤明だった。近づいていって、400ミリレンズで、クローズアップを2コマ撮った。すると、黒澤はそれを待っていたかのように立ち上がり、あたりを歩きはじめた。後をついていって、スナップしたのがこの写真である。
(平嶋彰彦)

・平嶋彰彦「東京下町の私的な体験」

・平嶋彰彦「東京ラビリンス」のあとさき

・森山大道「平嶋彰彦展~写真を支える多様なレイヤー」

・大竹昭子「東京上空に浮遊する幻の街 平嶋彰彦写真展に寄せて」

・飯沢耕太郎「日本の写真家たち 第10回 都市観察者の眼差し 平嶋彰彦」