読者の皆様こんにちは。連日のお目汚し失礼しております、いよいよもって前口上のネタが尽きてしまい、ついにはネタ切れそのものをネタにするという暴挙に踏み切りました、スタッフSこと新澤です。本来であれば「スタッフSの海外ネットサーフィン」を掲載するところですが、本日は替わって「銀塩写真の魅力Ⅶ 20世紀の肖像」よりエドワード・スタイケン(1879~1973)の紹介をさせていただきます。

 スタイケンが最も知られているのは、ディレクターとしてのべ900万人を動員したと言われる1955年にニューヨーク近代美術館(MoMA)の開館25周年記念として開催された写真展The Family of Man ファミリー・オブ・マンですが、それ以前にも1900年代初頭より「近代写真の父」と呼ばれるアルフレッド・スティーグリッツと共にともに活動し、「カメラ・ワーク」誌の出版や「フォトセセッションの小ギャラリー」(後の291ギャラリー)の立ち上げを行い、当時まだ実用化されていなかったカラー写真の研究等を行っていました。1911年にスタイケンは雑誌「Art et Decoration」のファッション写真を担当し、この時に撮影されたガウンの写真が、現在『ファッション写真』と呼ばれている物の先駆的な作品と言われています。1923年あたりからは「ヴォーグ」や「ヴァニティ・フェア」の仕事を受け、多くの広告代理店とも仕事をこなすスタイケンは世界で最も有名な高額写真家と知られるようになりました。以下の作品は1922年ごろ、時期的に商業写真家として絶頂に至る直前に撮影されたものになります。

steichen_21_Brancusiエドワード・スタイケン
"Brâncuşi, Voulangis, France"

1922年頃(1987年プリント)
ゼラチンシルバープリント
33.2×27.0cm
Ed.100
裏にプリンターと遺族のサインあり
 コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brâncuşi, 1876~1957)は、ルーマニア出身の20世紀を代表する独創的な彫刻家です。彼は20世紀の抽象彫刻に決定的な影響を与え、ミニマル・アートの先駆的作品を残しました。朴訥な人柄のブランクーシは作家活動の傍らに様々なアーティストと親交を持ち、先日の記事で紹介したマルセル・デュシャンマン・レイとも友人でした。特にデュシャンは、ニューヨークでブランクーシの作品を売買することで生活していた時期もあります。逆にマン・レイから写真術を教わったブランクーシは自分のアトリエ内に暗室を作り、自らの作品を写真に記録することに熱中したこともあるそうです。安齊重男出品作品のモデルになっているイサム・ノグチはパリでブランクーシの助手となることで抽象彫刻家としてのキャリアに方向性を見出しました。
 スタイケンとブランクーシの交友には、上に挙げたアルフレッド・スティーグリッツが大きく関わっています。写真家として活動する傍ら、ヨーロッパの前衛芸術を紹介する大規模な展覧会アーモリー・ショー(国際現代美術展、1913年)の企画に関わるなど、前衛芸術運動の紹介者としても活動していたスティーグリッツは、1914年に291ギャラリーでブランクーシの個展を企画・開催し、スタイケンとブランクーシの接点となりました。
 Wikipediaで作家の顔写真にも使われている上記のポートレートは、タイトルにもある通りパリの東北部にあるヴーランジという村で撮影されました。この村はスタイケンが住居を構えていた場所であり、その庭や周辺の情景を写真に撮ったり、絵画に描いたり、友人の芸術家たちを招いたりもしていました。スタイケンにとってなじみ深い場所でブランクーシを撮影したということからも、彼らの間の親しい関係を垣間見ることができます。
 この写真については、是非小林美香さんの「写真のバックストーリー第32回」も併せてお読みください。

(しんざわ ゆう)

◆「銀塩写真の魅力Ⅶ 20世紀の肖像」を開催しています(予約制/WEB展)。
観覧ご希望の方は事前に電話またはメールでご予約ください。
会期=2021年2月12日(金)―3月6日(土)*日・月・祝日休廊
327_a327_bマン・レイボブ・ウィロビーロベール・ドアノーエドワード・スタイケン金坂健二細江英公安齊重男平嶋彰彦の8人の写真家たちが撮った20世紀を代表する優れた表現者た ち(ピカソ、アンドレ・ブルトン、A.ヘップバーン、A.ウォーホル、ブランクーシ、 三島由紀夫、イサム・ノグチ、黒澤明、他)のポートレートをご覧いただきます。
出品全作品の詳細は2月9日のブログをご覧ください。
気鋭の写真史家・打林 俊先生には「怒号にさざめく現像液-細江英公の〈薔薇刑〉をめぐって」をご寄稿いただきました。
打林 俊先生によるギャラリートークもYouTubeにて公開しております。
映像制作:WebマガジンColla:J 塩野哲也
●出品作品を順次、ご紹介してまいります。
本日は平嶋彰彦
007平嶋彰彦
《荒川修作、マドリン・ギンズ 岐阜県養老町の養老天命反転地で。》
1995年10月
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:25.9×38.7cm
シートサイズ:35.6×43.0cm
Ed. 3
サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ときの忘れものが青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転して3年が経ちました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。