小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第51回

緊急事態宣言が解除されました。なんだか当たり前のようになってしまった「緊急事態」が無くなっても、ホッとするような生活ではありません。
第一回目の緊急事態が出た時は、町にも人にももう少しピリピリしたムードが流れていたと思いますが、その時に取材を受けていた記事が掲載された本が発売されました。
『東京の古本屋』(本の雑誌社)

202110小国貴司‗写真①

東京の古本屋とはいっても10店舗だけではありますが、どの店の取材記事も、著者の橋本倫史さんが、3日間ぴったりとくっついて書かれた力作ぞろいです。
最初の「古書往来座」さんの取材が2019年。それから時系列で掲載されていく取材記事は、ちょうど自分のお店を境に、コロナ前・以後と分かれることとなります。
あらためて自分の記事を読み返すと、かなり手探りであったことを思い出します。
「開けてもいいのか?」という迷いも見られるし、だからこそ、本が売れた時には、安心しているような様子も。
「盛林堂書房」さんや「岡島書店」さん「北澤書店」さんのような老舗から、うちや2019年にオープンした「古書みすみ」さんなどの新顔まで、同じ一冊のなかでみんなそれぞれの「商売哲学」を語っていますが、普段は容易に見ることが出来ない、業者市(交換会)の様子や、即売展の裏側がたっぷり書かれているのも、この本の読みどころのひとつです。

202110小国貴司‗写真2

本というのは、息の長いメディアで、そして時代の空気というものを切り取るのが上手なメディアだと思います。今回、図らずも、「コロナ前・後」という時代の空気を、古本屋という商売を通して切り取ってしまうこととなった、橋本さんの文章。
ぜひお読みください。
おくに たかし

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●この秋はじまる新連載はじめ執筆者の皆さんを9月4日のブログでご紹介しました

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
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