<迷走写真館~一枚の写真に目を凝らす>第116回
(画像をクリックすると
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たくさんの人々が横に並んで何かを見下ろしている。
彼らが立っている場所から地面が低くなっているらしい。
右手には、木の枝に手をかけて立っている男がいて、
彼の足のすねから先が隠れて見えないから、かなり傾斜が急のようだ。
人々の服装を見ると、スカートと半ズボン姿がまじっており、
スカートのほうは同じ格子模様が何人かいて、ソックスには二本線が入っている。
そう思ってみると、半ズボンの方も線の入ったソックスを着用している。
どうやら学校の制服のようだ。
となると、左側のロングドレスの女性や、
反対側の水玉模倣のトップを着ているどっしりした体格の女性や、
木の枝に手をかけている男性などは、引率の先生と考えられるだろうか。
学校の遠足で名所見学に来たところなのだ。
画面を引いて眺めると、右半分と左半分ではまったく情景が異なる。
右半分には生徒の一団がぎゅっと固まっていて、
左半分には岩に腰を下ろして何もせず前を見ている男たちがいる。
彼らの視線は生徒の一団とは反対を向いている。
そちらになにか見るべきものがあるのだろうか。
いや、そうではなくて陽がまぶしくて避けているのだろう。
ふたりが坐る岩の上には鉄のポールが立っている。
世界の都市の名前を書いたさまざまなサインが取り付けられていて、
「TOKYO 10988」という文字が読める。
「東京はこちらの方角で、距離は10988キロ」と告げているわけだ。
確認できるだけでも21のサインがあり、
そのすべてにこの場所からの距離が書かれている。
まるでここは地球のへそだと言いたげに。
岩のそばにはクルマが停っている。
男の背中に隠れてはっきり見えないが、どうやらオート三輪のようだ。
坐っているふたりはクルマのドライバーなのか。
とてもぜんいんが乗れそうに見えないが。
画面の右半分の体を寄せ合いながら熱中する生徒たちの密な群れと、
左半分のリラックスした気分で岩の上に腰を下ろす男たちが、
別の物語をつなぎあわせたような可笑しみをさそう。
男たちの頭上にはサイン文字がひしめき合っていて、
こちらはどちらかというと生徒の密度のほうに加担している。
なにか寓話的なものを感じさせる光景だ。
大竹昭子(おおたけ あきこ)
●作品情報
小澤太一
〈赤道白書〉より
インクジェットプリント
280×420mm
【小澤太一作家プロフィール】
1975年愛知県名古屋市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、河野英喜氏のアシスタントを経て独立。雑誌や広告を中心に、子どもからアーティストや女優、某国大統領まで、幅広い人物撮影をメインに活動している。写真雑誌での執筆や撮影会の講師・講演など、活動の範囲は多岐に渡る。ライフワークは「世界中の子どもたちの撮影」で、年に数回は海外まで撮影旅行に出かけ、写真展も多数開催している。身長156㎝ 体重39kgの小さな写真家である。キヤノンEOS学園東京校講師、公益社団法人 日本写真家協会 会員。
【主な写真展】
2009年 「世界で一番青い空」(キヤノンギャラリー)
2011年 「チビッコカメラ世界紀行」(フォトギャラリーUC)(江戸東京たてもの園)
「チビッコハウスへようこそ!」(キヤノンギャラリー)
2014年 「ナウル日和」(キヤノンギャラリー)
「NIGHT LIGHT」(京橋72ギャラリー)
2015年 「レソト日和」(コニカミノルタプラザ)(熊本アートギャラリージャッド)
2017年 「COLORS-LAOS,DON DET」(富士フォトギャラリー銀座)
2018年 「KIDS A GO GO!」(GALLERY IWAO)
2019年 「SAHARA」(キヤノンギャラリー)
「赤道海国 サントメ・プリンシペ」(Nine Gallery)
「いつものみち」(Roonee 247 fine arts)
2020年 「ISLANDSCAPE」(京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク)
「いつものいえ」(Roonee 247 fine arts)
2021年 「NAURU HORIZON」(ピクトリコ ショップ&ギャラリー)
2022年 「赤道白書」(キヤノンギャラリー)
「あてのないたび」(Nine Gallery)
【主な写真集】
2014年 「ナウル日和」(日本カメラ社)
2015年 「レソト日和」(Canon DreamLabo 5000による限定版)
2017年 「Don Det」(Canon DreamLabo 5000による限定版)
2019年 「SAHARA」(日本カメラ社)
「赤道海国 サントメ・プリンシペ」(Canon DreamLabo 5000による限定版)
「いつものそら」(Canon DreamLabo 5000による限定版)
2022年 「赤道白書」(私家版)
小澤太一オフィシャルサイト https://www.kozawataichi.com
ブログ https://ameblo.jp/kozawataichi/
Facebook https://www.facebook.com/kozawataichi
instagram https://www.instagram.com/kozawataichi/
●展覧会のお知らせ

小澤太一写真展『赤道白書』
会期:2022年11月29日(火)~12月10日(土)10時~18時
(日・月・祝日と弊社休業日は休館日となります)
*12月3日(土)は、ビルの臨時休館となりますのでご注意ください。
会場:キヤノンギャラリー大阪
大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト1F
https://canon.jp/personal/experience/gallery/archive/kozawa-sekidou
●写真集の紹介
小澤太一写真集『赤道白書』
サイズ ×200×225mm 240ページ
<2022年 私家版>
本体 4,400 円(税込 4,840 円)
販売は小澤太一オフィシャルサイトより
https://www.kozawataichi.com/private-work/
・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館~一枚の写真に目を凝らす」は隔月・偶数月1日の更新です。
次回は12月1日掲載です。お楽しみに。
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たくさんの人々が横に並んで何かを見下ろしている。
彼らが立っている場所から地面が低くなっているらしい。
右手には、木の枝に手をかけて立っている男がいて、
彼の足のすねから先が隠れて見えないから、かなり傾斜が急のようだ。
人々の服装を見ると、スカートと半ズボン姿がまじっており、
スカートのほうは同じ格子模様が何人かいて、ソックスには二本線が入っている。
そう思ってみると、半ズボンの方も線の入ったソックスを着用している。
どうやら学校の制服のようだ。
となると、左側のロングドレスの女性や、
反対側の水玉模倣のトップを着ているどっしりした体格の女性や、
木の枝に手をかけている男性などは、引率の先生と考えられるだろうか。
学校の遠足で名所見学に来たところなのだ。
画面を引いて眺めると、右半分と左半分ではまったく情景が異なる。
右半分には生徒の一団がぎゅっと固まっていて、
左半分には岩に腰を下ろして何もせず前を見ている男たちがいる。
彼らの視線は生徒の一団とは反対を向いている。
そちらになにか見るべきものがあるのだろうか。
いや、そうではなくて陽がまぶしくて避けているのだろう。
ふたりが坐る岩の上には鉄のポールが立っている。
世界の都市の名前を書いたさまざまなサインが取り付けられていて、
「TOKYO 10988」という文字が読める。
「東京はこちらの方角で、距離は10988キロ」と告げているわけだ。
確認できるだけでも21のサインがあり、
そのすべてにこの場所からの距離が書かれている。
まるでここは地球のへそだと言いたげに。
岩のそばにはクルマが停っている。
男の背中に隠れてはっきり見えないが、どうやらオート三輪のようだ。
坐っているふたりはクルマのドライバーなのか。
とてもぜんいんが乗れそうに見えないが。
画面の右半分の体を寄せ合いながら熱中する生徒たちの密な群れと、
左半分のリラックスした気分で岩の上に腰を下ろす男たちが、
別の物語をつなぎあわせたような可笑しみをさそう。
男たちの頭上にはサイン文字がひしめき合っていて、
こちらはどちらかというと生徒の密度のほうに加担している。
なにか寓話的なものを感じさせる光景だ。
大竹昭子(おおたけ あきこ)
●作品情報
小澤太一
〈赤道白書〉より
インクジェットプリント
280×420mm
【小澤太一作家プロフィール】
1975年愛知県名古屋市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、河野英喜氏のアシスタントを経て独立。雑誌や広告を中心に、子どもからアーティストや女優、某国大統領まで、幅広い人物撮影をメインに活動している。写真雑誌での執筆や撮影会の講師・講演など、活動の範囲は多岐に渡る。ライフワークは「世界中の子どもたちの撮影」で、年に数回は海外まで撮影旅行に出かけ、写真展も多数開催している。身長156㎝ 体重39kgの小さな写真家である。キヤノンEOS学園東京校講師、公益社団法人 日本写真家協会 会員。
【主な写真展】
2009年 「世界で一番青い空」(キヤノンギャラリー)
2011年 「チビッコカメラ世界紀行」(フォトギャラリーUC)(江戸東京たてもの園)
「チビッコハウスへようこそ!」(キヤノンギャラリー)
2014年 「ナウル日和」(キヤノンギャラリー)
「NIGHT LIGHT」(京橋72ギャラリー)
2015年 「レソト日和」(コニカミノルタプラザ)(熊本アートギャラリージャッド)
2017年 「COLORS-LAOS,DON DET」(富士フォトギャラリー銀座)
2018年 「KIDS A GO GO!」(GALLERY IWAO)
2019年 「SAHARA」(キヤノンギャラリー)
「赤道海国 サントメ・プリンシペ」(Nine Gallery)
「いつものみち」(Roonee 247 fine arts)
2020年 「ISLANDSCAPE」(京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク)
「いつものいえ」(Roonee 247 fine arts)
2021年 「NAURU HORIZON」(ピクトリコ ショップ&ギャラリー)
2022年 「赤道白書」(キヤノンギャラリー)
「あてのないたび」(Nine Gallery)
【主な写真集】
2014年 「ナウル日和」(日本カメラ社)
2015年 「レソト日和」(Canon DreamLabo 5000による限定版)
2017年 「Don Det」(Canon DreamLabo 5000による限定版)
2019年 「SAHARA」(日本カメラ社)
「赤道海国 サントメ・プリンシペ」(Canon DreamLabo 5000による限定版)
「いつものそら」(Canon DreamLabo 5000による限定版)
2022年 「赤道白書」(私家版)
小澤太一オフィシャルサイト https://www.kozawataichi.com
ブログ https://ameblo.jp/kozawataichi/
Facebook https://www.facebook.com/kozawataichi
instagram https://www.instagram.com/kozawataichi/
●展覧会のお知らせ

小澤太一写真展『赤道白書』
会期:2022年11月29日(火)~12月10日(土)10時~18時
(日・月・祝日と弊社休業日は休館日となります)
*12月3日(土)は、ビルの臨時休館となりますのでご注意ください。
会場:キヤノンギャラリー大阪
大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト1F
https://canon.jp/personal/experience/gallery/archive/kozawa-sekidou
●写真集の紹介
小澤太一写真集『赤道白書』サイズ ×200×225mm 240ページ
<2022年 私家版>
本体 4,400 円(税込 4,840 円)
販売は小澤太一オフィシャルサイトより
https://www.kozawataichi.com/private-work/
・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館~一枚の写真に目を凝らす」は隔月・偶数月1日の更新です。
次回は12月1日掲載です。お楽しみに。
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