瑛九《海辺の孤独》
1957年
リトグラフ
52.0×40.0cm
Ed.35
自筆サインあり
※瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.151
ただいま開催中の「第31回 瑛九展」には長年の瑛九ファンはもちろん、瑛九に親しく接したご親族の方にもいらしていただき、60年前に亡くなった作家の人となりを感じることのできる実に嬉しい日々が続いています。
今回は油彩点描(10号)の代表作も出品していますが、展示の主眼は晩年に精力を注いだ版画(リトグラフと銅版)の代表作です。10月4日と、10月14日のブログで銅版画(自刷り)をご紹介したので、本日は瑛九のリトグラフ(石版画)をご紹介しましょう。
瑛九はリトグラフを約160点制作しました。
最初の試作は1951年、宮崎時代です。エッチングプレス機を使って単色の文字通りの試作です。
本格的なリトグラフの制作は浦和に移って1956年の早春、近所の石版師・金森茂の工房に通って教えを乞い、やがてリトのプレス機を購入し、本格的な制作に入りました。
ほとんどを自ら描画し刷りあげています。1956年だけで60点ものリトグラフを制作し、翌1957年4月にはタケミヤ画廊で「瑛九石版画展」を開催しています。来廊者の中に画家・森芳雄もおり、購入したと伝えられています。出品作「ふるさとの木」が雑誌『みづゑ』6月号の表紙を飾り、6月15日~7月14日の会期で国立近代美術館で開催された「第1回東京国際版画ビエンナーレ」には「旅人」「日曜日」の2点が出品されました。「版画家瑛九」の面目躍如です。
今回の「第31回瑛九展」では、「旅人」と並ぶ代表作「海辺の情景」はじめ「雲」「狩」「舞台のピエロ」など10点を展示しています。
念のため申し上げておきますが、瑛九のリトグラフにも銅版と異なり没後の後刷りはいっさいありません。
瑛九《カザリ》1956年
リトグラフ
36.0×24.5cm
Ed.8
*都夫人の裏書あり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.51
瑛九《マスク》1956年
リトグラフ
イメージサイズ:34.5×22.0cm
シートサイズ:49.7×38.3cm
Ed.10
自筆サインあり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.54
瑛九《飛ぶ》1957年
リトグラフ
イメージサイズ::40.0×27.0cm
シートサイズ:54.2×28.4cm
Ed. 50
自筆サインあり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.100
瑛九《虫の生活》1957年
リトグラフ
イメージサイズ:38.0x27.0cm
シートサイズ:54.2x38.1cm
Ed.20
自筆サインあり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.105
瑛九《ピエロ》1957年
リトグラフ
イメージサイズ:40.0×26.0cm
シートサイズ:55.0×39.5cm
限定25部
自筆サインあり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.84
瑛九《雲》1957年
リトグラフ
イメージサイズ:35.0×51.0cm
シートサイズ:49.5×66.0cm
限定20部
自筆サインあり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.145
瑛九《狩》1957年
リトグラフ
イメージサイズ:38.0×54.0cm
シートサイズ:49.4×65.8cm
限定10部
自筆サインあり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.144
瑛九《舞台のピエロ》1957年
リトグラフ
イメージサイズ:51.5×41.0cm
シートサイズ:66.0×49.5cm
Ed.20
*都夫人の裏書あり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.141
瑛九《小さな恋》1957年
リトグラフ
イメージサイズ:25.0×41.0cm
シートサイズ:38.5×40.5cm
Ed.20
自筆サインあり
*瑛九の会編「瑛九石版画総目録」No.95
158点を収録したカタログ・レゾネ(瑛九の会編「瑛九石版画総目録」)が刊行されており、その最大の功績者は(意外と思う方も多いでしょうが)山形県酒田の本間美術館です。
先日まで本間美術館開館75周年「瑛九って誰 永遠の旅人」(会期:2022年9月9日~10月11日)が開かれていたことでもそれはおわかりでしょう。
詳しくは同館館長・田中章夫先生のエッセイ「本間美術館と瑛九」をお読みいただきたいのですが、本間美術館は瑛九生前の1958年(昭和33)にリトグラフのほぼ全作品にあたる140点を購入しています。瑛九にとってどんなにか嬉しかったことでしょう。
同館はその後も未収集の作品を都夫人などより購入、補充し現在145点が収蔵されています。
特筆すべきは、瑛九の歿後、当時の館長・佐藤七郎さんの尽力で、1961年(昭和36)に『瑛九石版画写真図録』(写真アルバム)を作成したことです。
その写真アルバムをもとにカタログ・レゾネ『瑛九石版画総目録』が1974年に瑛九の会から刊行されました。同館収蔵の作品を含め、1951~1958年までのリトグラフ158点が収録されています。漏れ(未収録)や誤記、サイズなどの不正確な記述はあるものの、実際のコレクション(本間美術館所蔵)をもとにしたレゾネですので、基本文献と言って良いでしょう。
ときの忘れもので扱っていますので、どうぞご購入ください。
◆第31回 瑛九展
会期=2022年10月7日(金)~10月22日(土)※日・月・祝日休廊
本日16日(日曜)と明日17日(月曜)は休廊です。
出品作品の詳細と展示風景は10月4日ブログをご覧ください。

◆「クボテーって誰? 希代のパトロン久保貞次郎と芸術家たち」
会期:10月15日[土]~10月29日[土] *日曜休廊
会場:ストライプハウスギャラリー STRIPED HOUSE GALLERY
〒106-0032 東京都港区六本木 5-10-33
Tel:03-3405-8108 / Fax:03-3403-6354
主催:久保貞次郎の会


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