『宮脇愛子 銅版画集/1980』
エッチング6点セット
![AAA_1076[1]](https://www.tokinowasuremono.com/archive-blog/imgs/9/2/9223eb16.jpg)
『宮脇愛子銅版画集 1980』

序文は小説家の辻邦生

宮脇愛子「作品Ⅰ」
銅版 6.7×13.4cm Ed.50 Signed

宮脇愛子「作品Ⅱ」
銅版 9.3×9.3cm Ed.50 Signed
宮脇愛子「作品Ⅲ」
銅版 9.4×10.4cm Ed.50 Signed

宮脇愛子「作品Ⅳ」
銅版 9.2×11.0cm Ed.50 Signed
宮脇愛子「作品Ⅴ」
銅版 15.1×18.1cm Ed.50 Signed

宮脇愛子「作品Ⅵ」
銅版 29.8×12.3cm Ed.50 Signed
~~~~~~~~~~~~~~~
無限への鏡
辻邦生
私が宮脇愛子さんの作品に深く魅了されたのは、パリの「間」展に展示された『うつろい』 を見たときであった。もちろん他の作品は以前からよく見ていたし、彫刻家その人とは作品を見る前からの知り合いだが、作品の内奥の光に貫かれて、 私自身が変容したかに感じられる強烈な体験は、それ以前にはなかったのである。
『うつろい』は宮脇愛子さんの造型的な語彙である、断面がセクション・ペーパー状になった、金属立体による見事な作品である。私はその前に立った瞬間、そこに平安貴族のみやびな宴を見ているような気がした。「間」展そのものが異国の都会のなかへ突出した日本の伝統美の展覧会であっただけに、そうした伝統性と共鳴し合って、艶なる典雅さを造型した宮脇愛子さんの作品は、ひときわ人々の心を魅惑したのであった。
「それは何といったらいいか、“あらぬもの”とでもよぶべき何か、オスカー・ワイルドのいうすべてのものの背後にある、或るかくされたものの精〉とでもいうべき何かを、つねに見ようとしてきたような気がする」と宮脇愛子さん自身が書いているように、その作品は冷たい硬質な形体を持つ金属体であるにもかかわらず、そこに漂うのは、高貴な官能性と清らかな憂愁感であった。平安貴族の一夜の遊宴のはてにくる夜明けの透明な悲しみに似たものが、ほのかな光となって、そこにたたずんでいたのである。
もしこういう情感を何か具象的なもので描いたらどうだろう。おそらくずっと鮮度の低い、夾雑物の多い感興となり、われわれを遠くに誘うことはないだろう。
それを端的に感じさせるのが宮脇愛子さんの銅版画である。作者は、彫刻においてセクション・ペーパー状の断面を語彙としたように、銅版画においては網目状の形体を語彙としている。この語彙を駆使することによって、作者は、具象では実現できない最も澄明な情感を、その澄んだ透明さのままに形象化してゆくのである。
私は、これらの銅版画のなかに、辻󠄀ヶ花に見られる仄かな幽艶を感じるし、小紋の持つ華やかな繊細さが燃え立っているとも見えるのだが、同時に、初夏の高原の森がみどりに煌めき渡っているさまも感じるのである。
夜、燈火の下で、私はそこにギリシア神話の舞台を見ることがあるし、時には、夕日に赤く反射する黄金色の海原を感じることもある。
つまり宮脇愛子さんのこれらの銅版画の作品は、無限の情感のヴァリエーションを一つの鏡に映したごときものである。 それは〈あらぬもの〉の現前という魔術的な力業によって初めて達成された、言語を絶した境である。それは言葉をかえれば形体の祝祭にめぐり会うことに他ならない。言語を絶するとは、時間を絶すること――すなわち永遠に達することであるのを、われわれはかかる形体の祝祭においてのみ、納得するのである。
(つじ くにお)
宮脇愛子(左)、辻邦生(右)
1984年11月13日「宮脇愛子 新作版画展」(渋谷・ギャラリー方寸)オープニングにて
『宮脇愛子 銅版画集/1980』
銅版:宮脇愛子
序文:辻邦生「無限への鏡」
「作品 I」
「作品 II」
「作品 III」
「作品 IV」
「作品 V」
「作品 VI」
銅版(刷り:プリントハウス・OM)
シートサイズ:45.0×32.5cm
限定50部
制作年:1980
発行日:1980年5月19日
*現代版画センターエディション
◆「杣木浩一×宮脇愛子」展
会期:2024年8月20日(火)~8月31日(土)※日・月・祝日休廊
杣木浩一先生が回復し、お元気になられました。 8月28日(水)、29日(木)、30日(金)、31日(土)は毎日15時から在廊します。
出品作品の詳細は8月17日ブログに掲載しました。

※クリックすると再生します。
※右下の「全画面」ボタンをクリックすると動画が大きくなります。
●カタログを刊行しました。
ときの忘れもの 2024年 25.7×17.2㎝ 24P
執筆:杣木浩一
図版:26点掲載(杣木浩一13点、宮脇愛子13点)
編集:尾立麗子(ときの忘れもの)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:1,100円(税込み)+送料250円
オンラインでも販売中です。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。

〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
エッチング6点セット
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『宮脇愛子銅版画集 1980』

序文は小説家の辻邦生

宮脇愛子「作品Ⅰ」
銅版 6.7×13.4cm Ed.50 Signed

宮脇愛子「作品Ⅱ」
銅版 9.3×9.3cm Ed.50 Signed
宮脇愛子「作品Ⅲ」
銅版 9.4×10.4cm Ed.50 Signed

宮脇愛子「作品Ⅳ」
銅版 9.2×11.0cm Ed.50 Signed
宮脇愛子「作品Ⅴ」
銅版 15.1×18.1cm Ed.50 Signed

宮脇愛子「作品Ⅵ」
銅版 29.8×12.3cm Ed.50 Signed
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無限への鏡
辻邦生
私が宮脇愛子さんの作品に深く魅了されたのは、パリの「間」展に展示された『うつろい』 を見たときであった。もちろん他の作品は以前からよく見ていたし、彫刻家その人とは作品を見る前からの知り合いだが、作品の内奥の光に貫かれて、 私自身が変容したかに感じられる強烈な体験は、それ以前にはなかったのである。
『うつろい』は宮脇愛子さんの造型的な語彙である、断面がセクション・ペーパー状になった、金属立体による見事な作品である。私はその前に立った瞬間、そこに平安貴族のみやびな宴を見ているような気がした。「間」展そのものが異国の都会のなかへ突出した日本の伝統美の展覧会であっただけに、そうした伝統性と共鳴し合って、艶なる典雅さを造型した宮脇愛子さんの作品は、ひときわ人々の心を魅惑したのであった。
「それは何といったらいいか、“あらぬもの”とでもよぶべき何か、オスカー・ワイルドのいうすべてのものの背後にある、或るかくされたものの精〉とでもいうべき何かを、つねに見ようとしてきたような気がする」と宮脇愛子さん自身が書いているように、その作品は冷たい硬質な形体を持つ金属体であるにもかかわらず、そこに漂うのは、高貴な官能性と清らかな憂愁感であった。平安貴族の一夜の遊宴のはてにくる夜明けの透明な悲しみに似たものが、ほのかな光となって、そこにたたずんでいたのである。
もしこういう情感を何か具象的なもので描いたらどうだろう。おそらくずっと鮮度の低い、夾雑物の多い感興となり、われわれを遠くに誘うことはないだろう。
それを端的に感じさせるのが宮脇愛子さんの銅版画である。作者は、彫刻においてセクション・ペーパー状の断面を語彙としたように、銅版画においては網目状の形体を語彙としている。この語彙を駆使することによって、作者は、具象では実現できない最も澄明な情感を、その澄んだ透明さのままに形象化してゆくのである。
私は、これらの銅版画のなかに、辻󠄀ヶ花に見られる仄かな幽艶を感じるし、小紋の持つ華やかな繊細さが燃え立っているとも見えるのだが、同時に、初夏の高原の森がみどりに煌めき渡っているさまも感じるのである。
夜、燈火の下で、私はそこにギリシア神話の舞台を見ることがあるし、時には、夕日に赤く反射する黄金色の海原を感じることもある。
つまり宮脇愛子さんのこれらの銅版画の作品は、無限の情感のヴァリエーションを一つの鏡に映したごときものである。 それは〈あらぬもの〉の現前という魔術的な力業によって初めて達成された、言語を絶した境である。それは言葉をかえれば形体の祝祭にめぐり会うことに他ならない。言語を絶するとは、時間を絶すること――すなわち永遠に達することであるのを、われわれはかかる形体の祝祭においてのみ、納得するのである。
(つじ くにお)
宮脇愛子(左)、辻邦生(右)1984年11月13日「宮脇愛子 新作版画展」(渋谷・ギャラリー方寸)オープニングにて
『宮脇愛子 銅版画集/1980』
銅版:宮脇愛子
序文:辻邦生「無限への鏡」
「作品 I」
「作品 II」
「作品 III」
「作品 IV」
「作品 V」
「作品 VI」
銅版(刷り:プリントハウス・OM)
シートサイズ:45.0×32.5cm
限定50部
制作年:1980
発行日:1980年5月19日
*現代版画センターエディション
◆「杣木浩一×宮脇愛子」展
会期:2024年8月20日(火)~8月31日(土)※日・月・祝日休廊
杣木浩一先生が回復し、お元気になられました。 8月28日(水)、29日(木)、30日(金)、31日(土)は毎日15時から在廊します。
出品作品の詳細は8月17日ブログに掲載しました。

※クリックすると再生します。
※右下の「全画面」ボタンをクリックすると動画が大きくなります。
●カタログを刊行しました。
ときの忘れもの 2024年 25.7×17.2㎝ 24P執筆:杣木浩一
図版:26点掲載(杣木浩一13点、宮脇愛子13点)
編集:尾立麗子(ときの忘れもの)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:1,100円(税込み)+送料250円
オンラインでも販売中です。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。

〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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