本日7月21日は、音楽家の湯浅譲二先生(1929年8月12日 – 2024年7月21日)と、フランスの画家・彫刻家ジャン・フォートリエ(Jean Fautrier, 1898年5月16日 – 1964年7月21日)の命日です。
湯浅先生は、昨年7月21日の酷暑の夏に94歳で亡くなりました。

<日本の現代音楽の発展に貢献した作曲家で文化功労者の湯浅譲二(ゆあさ・じょうじ)さんが7月21日午前8時43分、肺炎のため東京都の自宅で死去した。94歳。郡山市出身。(中略)
 旧制安積中時代に独学で作曲を始めた。新制安積高から医師を志して1949年に慶応大に進学したが、現代音楽に触れて中退し、作曲家の道へ進んだ。
戦後に多様な前衛芸術を展開した「実験工房」で52年から武満徹さんらと活動。国内外で活躍し、オーケストラや室内楽、合唱、電子音楽などを幅広く作曲した。
 テープやコンピューターなど最新技術を駆使するとともに、グラフを用いた独自の作曲法を生んだ。代表作に、松尾芭蕉の俳句に発想を得た「芭蕉の情景」、「クロノプラスティク」などがある。(後略)
(20240805/福島民友WEB版より)>

一柳、湯浅 サントリーホール201710302017年10月30日、サントリーホール
右から一柳慧先生、湯浅譲二先生、聞き手の沼野雄司さん。
作曲家の個展Ⅱ 一柳慧 × 湯浅譲二
毎年日本人作曲家からふたりを選び新作を委嘱して公演、2017年は一柳慧 と実験工房のメンバーだった湯浅譲二のお二人でした。

湯浅先生が参加されていた実験工房は、1951年から1958年にかけて瀧口修造先生の影響下に集まった20代の青年芸術家によるグループです。彼らは造形、音楽、写真、文学、光の表現など、芸術の分野にとらわれず互いに協力しあい作品を制作しました。少し年長だった駒井哲郎先生も参加されていました。私たちが1991年に資生堂ギャラリーで『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』を企画、図録を編集した折には湯浅先生に実験工房時代に駒井先生と協働した折の思い出を語っていただきました。

 
駒井哲郎 《R夫人像》 1970年頃 アクアチント イメージサイズ:17.5×14.4cm Ed. I/XX サインあり

駒井哲郎先生(1920年6月14日 – 1976年11月20日)の代表作《R夫人像》です。
本作の詳細は、こちらをお読みください。

02『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』図録
1991年  資生堂 発行
63ページ 26.0×18.0cm
収録図版:85点(油彩、水彩、銅版、木版、モノタイプ)
執筆:中林忠良、野見山暁治、駒井美子、福原義春、中村稔、河合晴生、
解題:綿貫不二夫
企画・編集:資生堂企業文化部、アルスマーレ企画室
デザイン:ディスハウス(北澤敏彦)
*シリーズ企画<資生堂ギャラリーとそのアーティスト達>の第1回展図録

湯浅譲二先生とのコラボレーションに使われたスライドの原画作品も出品、収録しています。

以下は亭主の書いた図録の解題から再録です。
◆実験工房第5回発表会でのスライドの原画(№10~№24)
――春陽会や、サンパウロ・ビエンナーレで受賞、新進気鋭の銅版画家として脚光を浴びた駒井哲郎は、1952年(昭和27)瀧口修造を顧問格とするインターメディア集団「実験工房」に参加する。メンバーは、造形から北代省三、山口勝弘、福島秀子、写真の大辻清司、音楽からは武満徹、鈴木博義、湯浅譲二の三人の作曲家とピアニストの園田高弘、それに音楽評論の秋山邦晴、照明の今井直次、技術の山崎英夫たちであった。その第5回発表会が1953年(昭和28)9月に第一生命ホールで開かれ、駒井哲郎は湯浅譲二と組んでオートスライドの作品「レスピューグ」の共同制作を行なった。

湯浅譲二の回想(「プリントアート」17号、1974年)によれば、
……私達は当時始めて(原文ママ)出来たオート・スライドを手にして、造形、音楽が協力してインターメディア的作品を発表することになった。私は駒井さんと組んで、ロベール・ガンゾの詩による「レスピューグ」を制作した。
ガンゾの詩は、部分的に引用すると、
 朝の光だ 見よ 私達のもとへ丘が拡がる 鳥達や 花咲く樹々 そして 揺れそよぐ緑の叢にたたえる水と共に お前は やっと女らしく 肌ほてらせて あたかも私に引きしぼった恍惚の弓よ
といったものだった。駒井さんは赤や青、オレンジや黒などの色紙の上に絵具でイメージを画き、それをスライドにし、私は、フルートとピアノをもとにして、テープの逆回転などを利用しながら、日本では殆ど最初といっていい、ミュージック・コンクレートを作った。何日間もの連続徹夜での制作の末に開かれたコンサートの日に、会場の第一生命ホールで私はヘルツ・ノイローゼで倒れ、友人が薬局に走ってくれたりするあわただしさの中に、駒井さんはアルコールを大部入れて現われた。
興奮と不安、冒険への気負いが奇妙に入り混った夜だったが、いわば青春と友情のここちよい夢といった世界がそこにはあった。

………
今回出品される15点の原画はこの時のスライドのためのもので、全部で29点がパステルやグワッシュで制作されたという(作品の天地は不明)。
(以下略)
第1回 資生堂ギャラリーとそのアーティスト達 没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎 回顧展』カタログより


ときの忘れものには、ジャン・フォートリエの作品もございます。
ジャン・フォートリエ《Le Prophète》 1944年 銅版画 イメージサイズ:22.0×31.0cm シートサイズ:38.0×56.0cm Ed.50 サインあり
タイトルはフランス語に直訳すると「預言者」です。

東京は梅雨明けして猛暑が猛威を振るっています。
みなさまどうかお元気でお過ごしください。
スタッフM

●今日のお勧め作品は、山口勝弘です。
20171130_yamaguchi_05_yoru-shinkou山口勝弘
「夜の進行」
1981年 シルクスクリーン
イメージサイズ:47.0×40.0cm
シートサイズ:63.0×49.0cm
Ed.50 鉛筆サインあり
*現代版画センターエディション


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●ときの忘れものの建築空間(阿部勤 設計)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
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〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。