台湾ですこし作業
先月末は台北に滞在していた。ART TAIPEI(アート台北)2025の「ときの忘れもの」ブースで展示を行った。台湾へ行くのは初めてで、またインド以外の国へ行くのもけっこう久しぶりだった。
台湾の漢字表記は繁体字なので、なんとなくニュアンスは理解できる。日本のコンビニや大手チェーンはだいたい店舗展開しているし、日本で流行りのアニメもたくさんあふれているので、日本の街中を歩いているのとほとんど変わらない感じ。宿はホテルではなく、夜市が賑やかな繁華街近くの民泊にしてみたのだが、それがとても良かった。朝はだいたい歩いて1分ほどの麺屋か肉まん屋か豆乳屋さんでチョロチョロと注文してこしらえる。昼も夜もどこかしらのお店がやっている。日本では福島の村と神奈川の町に住む生活をしているので、こんな密度高い都市生活は久しぶりだった。台湾の都市空間研究は相当な蓄積があると思うので、いつか調べてみたい。
アートフェアではピンホールカメラ《くぐり抜けるためのハコ1》と鏡《くぐり抜けるためのミラー1》の二点を展示していた。訪れる人たちがだいたいそのミラーの前で記念写真を撮っていく。作品の鑑賞と購入体験に特化したアートフェアの中で、作品自体ではなくそこに投影された自分たちの像を人々が楽しむ光景はなんだかとても良かった。ある種の非日常空間、あるいは商業的な空間でのミラーの効果に、あらためて可能性を感じもした。
自分は美術のキャリアがあるわけではないが、このアートマーケットどっぷりの中の景色を見るのは結構面白いと思っている。アートと商業との距離ついては、もちろん作家それぞれが様々に思い悩むこともあるだろうが、クライアントワークが多い建築の仕事とは違って、まずプロダクトが先行し、小商い的な商売をするこの美術界隈の空気感や、画廊の仕事の様子は興味深い。
会場ではさまざまな作品を見ることができ、気になるモノもたくさんあった。ぼんやりと眺めながら、次の自分の制作をどうしようかと会場の隅のベンチでスケッチをしていた。そんなときのスケッチは、立体制作について考えていたら、途端に別の建築のプロジェクトのアイデアらしきを思いついてそちらのスケッチに向かったりもして、なかなか収拾がつかない。けれどもそんな同期性というべきか、プロジェクトごとの連関性や距離感が浮かび上がってくる瞬間でもある。同じ人間が同じ時間に考えていることなのだから、プロジェクトが連関してくるのは当然ではある。最近はそんな通底するモノが何なのかを考えるようにしている。

(スケッチをいくつか抜粋。平面のアイデア、立体のかたち、建築のプラン、どこからでも良いのでなにかを掴み出すことができれば、そこからは芋蔓式にアイデアが生まれる予感もある。そんな作業が楽しい。右下の方にあるのはTPAC(臺北表演藝術中心/設計:OMA)を訪れたときのメモ)
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。「一般社団法人コロガロウ」設立。2018年12月初個展「佐藤研吾展―囲いこみとお節介」をときの忘れもので開催。2022年3月第2回個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を、2024年11月第3回個展「佐藤研吾展 くぐり間くぐり」をときの忘れもので開催した。
・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
◆西田考作さんを偲んで、西田画廊旧蔵ポスター展
会期:2025年11月5日(水)~15日(土) *日曜・月曜・祝日は休廊
会場:ときの忘れもの
出品作品:荒木経惟、磯崎新、大竹伸朗、加納光於、桑原甲子雄、田名網敬一、福田繁雄、森村泰昌、
アンディ・ウォーホル、トニ―・クラッグ、パウル・クレー、アドルフ・ゴットリーブ、
フランク・ステラ、セバスチャン、サム・フランシス、ヨーゼフ・ボイス、
ジャクソン・ポロック、ロバート・ラウシェンバーグ、マーク・ロスコ、ジョアン・ミロ、他
*出品作品の詳細及び特別頒布価格はホームページに公開しています。
*生前の西田考作さんの開廊直前インタビュー録(1982年)を11月6日ブログに掲載しました。
*坂上しのぶさんの論考「バイヤーズと西田考作」を11月12日と、13日の二回にわけて掲載します。
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●ときの忘れものの建築空間(阿部勤 設計)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。




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