11月19日は美術評論家・東野芳明先生の命日です(1930年9月28日 – 2005年11月19日)。
生前、幾度も原稿を書いていただきましたが、当時の御三家(針生一郎、中原佑介、東野芳明)の中では最も気さくでだれにも愛される明るいキャラクターでした。

1978年7月10日青山ラミアにて関根伸夫ヨーロッパ巡回展に向けての歓送会
スピーチする東野芳明先生

一つ違いの磯崎新先生は親しかった東野先生が長い闘病生活の後、亡くなりギャラリーТОМで東野先生を偲ぶ展覧会が開催されたとき、亭主を呼んで「オマージュ作品をつくり出品したい」と言われました。

磯崎新 極薄


磯崎新「極薄」
2006年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:49.0×46.0cm
シートサイズ:56.0×56.0cm
Ed.35
サインあり
*ときの忘れものエディション
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「東野芳明を偲ぶオマージュ展 水はつねに複数で流れる」
  会期=2006年10月14日(土)~11月12日(日)
  会場=渋谷区松濤 ギャラリーTOM  
  出品作家=荒川修作、磯崎新、海老塚耕一、岡崎和郎、沖啓介、大竹伸朗、柏木弘、久保田成子、塩見奈々、篠原有司男、須田基揮、シュウゾウ・アヅチ・ガリバー、菅木志雄、関根伸夫、高見澤文雄、田窪耕治、田中信太郎、堂本右美、中西夏之、中村康平、野田哲也、野田裕示、萩原朔美、古田裕、三澤憲司、三宅一生、宮脇愛子山口勝弘、安田奈緒子、山本容子、横尾忠則、四谷シモン、吉澤美香、李禹煥、和田守弘

東野芳明(とうの よしあき、1930-2005)は戦後に活躍した美術評論家です。1950年代末に渡欧・渡米した東野は、そこで目にした欧米の「現代美術」をいち早く国内に紹介することに努め、60年代以降は、「反芸術」と称した同世代の芸術家たちの伴走者として、彼らの活動を後押ししました。東野は、創作現場での体験を交えた、臨場感に満ちた批評を執筆するのみならず、展覧会の企画にも携わり、国内外の芸術家たちと多くの時間を過ごしました。後年は、水をめぐる思索を深め、趣味の素潜りによる写真作品も制作しています。
東野の没後20年を記念して開催するこの展覧会では、当館のコレクション・資料を中心に、東野の美術評論家としての歩みを紹介します。当館の前身である富山県立近代美術館にとって、東野は特に関わりの深い評論家の一人であり、当館のコレクション形成にも大きな影響を与えました。展覧会を通して、東野の批評と彼が見つめた美術を振り返ります。
(富山県美術館のHP
没後20年 東野芳明と戦後美術より引用再録、展覧会は終了しています

アンフラマンス Inframince
「下の、下方の」という意味の接頭辞「infra-」と、「薄い」という意味の形容詞「mince」を組み合わせたM・デュシャンの造語で、「極薄」「超薄」などと訳される形容詞。生前にはほとんど知られていなかったこの語は、デュシャンの死後46編のメモが発見され、1980年にポンピドゥー・センターの回顧展カタログにその複製が掲載されたことで、一躍脚光を浴びることになった。デュシャン本人による定義が存在せず、また実在する作品との関係も明らかではないミステリアスな概念だが、現時点においては、カタログの編纂に携わった批評家J・クレールによる、物質的な薄さや人間の感覚域に関わる薄さではなく、「平面(二次元)からヴォリューム(三次元)へのパサージュ」に「アンフラマンス」の本質が存在するとする解釈が定説である。もちろん、今後の研究の進展によって新たな側面が明らかになることも期待される。詳細な内容については『マルセル・デュシャン全著作』(ミシェル・サヌイエ編、北山研二訳、未知谷、1995)を参照されたい。

現代美術用語辞典1.0より、[執筆者:暮沢剛巳]
https://artscape.jp/dictionary/modern/1198063_1637.html