アメリカ合衆国ニューヨーク州ウエストチェスター郡にあるサラ・ローレンス大学ハインボルド・ビジュアルアーツセンターで、4月から6月にかけて内間安瑆展が開催されました。
少しご紹介するのが遅れてしまいましたが、展覧会図録の中のテキストを翻訳しましたのでお読みください。

「Ansei Uchima: Selections」
会期:2025年4月24日~6月8日(終了)
会場:サラ・ローレンス大学・ハインボルド・ビジュアル・アート・センター
「Ansei Uchima: Selections」
Curated by Vera Iliatova
written by Piper McConnell ’26
ザ・ギャラリー(ハインボルド・ビジュアル・アート・センター、サラ・ローレンス大学)では、日系アメリカ人の木版画家であり、20年間にわたりサラ・ローレンス大学で教鞭をとったアーティスト、内間安瑆の作品を紹介できることを、大変光栄に思い、また心より嬉しく思います。
展覧会「Ansei Uchima: Selections」では、彼の芸術的キャリアを網羅する作品を展示します。最も初期の作品は1962年の《Frosty Morn(霜の朝)》、最も新しい作品は1982年の油彩画《Forest Byobu(春の屏風)》です。
本展では、内間の伝統的な日本の木版画技法によって制作された作品が中心となっています。これらは浮世絵時代の版画から強い影響を受けており、また、内間のスケッチブックや油彩画3点も展示され、彼の思考や制作プロセスを垣間見ることができます。
内間の作品は、自然の観察に根ざしつつ、色彩と形の精巧に構成された交響曲のように抽象表現を探求しています。色の変化は有機的な形を生み、思いがけない空間の次元を構築し、風景や大気の微妙な変化を呼び起こします。彼は日本の伝統技法で訓練を受けましたが、初期の作品は当時の抽象表現主義運動に強く呼応し、その流動性に魅了されていました。
特に、水彩で手彫りした版木に着色するという独自の技法により、透明感、色彩、音調、空間、形といった要素を深化させ、当時の抽象表現主義を超える独自の効果を生み出していました。
彼の抽象表現の探究が進むにつれ、「モノと空間の対比」や「動と静の緊張関係」への関心が深まり、1960年代中盤から1970年代の作品にその探求の成果が見られます。
1977年以降、内間は代表的なスタイルを確立しました。色のモザイク技法によって色彩の対比から奥行きと量感を表現し、《Forest Byobu(朱の調和)》、《Forest Byobu(竹)》、《Forest Byobu(初夏)》、そして《Forest Byobu(春の屏風)》といった木版画や油彩画に、揺れるような動きをもたらしています。
また、内間は1962年にニューヨーク市に移住してまもなく、サラ・ローレンス大学の版画教授に就任しました。20年間にわたって学生たちの技術と感性を育み、深く関わり、名誉教授として称えられました。
引退後の1985年には、内間の業績を称える回顧展が大学で開催されました。本展覧会は、その第二弾として、内間安瑆が2000年5月に逝去してから25周年を迎える節目に、新たな世代のサラ・ローレンス学生たちに彼の作品を紹介するものです。
内間は引退後も大学に多くの作品を寄贈し、大学への深い献身を示しました。彼の作品は現在も「エスター・ラウシェンブッシュ図書館」、「学長公邸(Andrew’s Annex)」、そして複数の教員オフィスなど、キャンパス内のさまざまな場所で見ることができます。
引退から43年を経た今も、内間の作品はサラ・ローレンスの文化的基盤の一部として重要な存在です。彼の作品は、メトロポリタン美術館、MoMA、フィラデルフィア美術館、ホイットニー美術館など、多くの一流美術館に収蔵されています。
彼の寛大な寄贈のおかげで、私たちは彼の作品をキャンパスで展示し、今この展覧会を通して彼の芸術と教育への貢献を称えることができることを、心から誇りに思います。
(翻訳:根岸ひかり)
●本日のお勧め作品は内間安瑆です。
“I-V Space Tranquility : Cylinder”
1972年
木版
イメージサイズ:70.6×53.1cm
シートサイズ:82.4×61.4cm
サインあり
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*画廊亭主敬白
亭主が巡り会った作家の中で内間安瑆先生ほどインテリジェンスに溢れた紳士はいなかった。
お名前(内間安瑆)から多くの方が内間先生を日本人作家と誤解されていますが、内間先生は生まれも育ちもアメリカ。アメリカ市民として生まれ、アメリカ市民として亡くなられました。
サラ・ローレンス大学で多くの学生を教えていました。同大学での展覧会紹介文を翻訳してくれたのは根岸ひかりさん、スペイン在住のまだ大学生です。
ときの忘れもので個展も開催している根岸文子さんのお嬢さんです。毎年夏休みになると、日本のお祖母ちゃん(根岸文子さんの母堂、作家でもあります)の家に滞在し、ときの忘れものでアルバイトし、そのお金で来日する友人とあちこち旅行するようです。
さて、ときの忘れものでは来春(2026年4月頃)、内間先生の回顧展を開催します。どうぞご期待ください。
8月22日追記、上掲ブログを読まれたご遺族の内間洋子さん(N.Y.在住)から下記の感想をいただきました。
<エッセイを書いて下さったPiper McConnell も、サラローレンス大学の学生です。根岸さんやPiper のような若い世代の方が両親の展覧会に関わって下さることは、私共にとって大変な喜びです。>
●8月24日(日)~9月1日(月)は夏季休廊いたします。誠に勝手ながらメール等のお問い合わせには9月2日以降に対応しますのでご了承ください。
◆生誕120年 難波田龍起展
2025年9月3日(水)~9月20日(土)11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
ギャラリートーク
9月13日(土)16時~17時半
対談:難波田武男さん(龍起三男)×福士理さん(東京オペラシティ アートギャラリー シニア・キュレーター)
要予約(予約はこちらから)、参加費1,000円
●ときの忘れものの建築空間(阿部勤 設計)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info[at]tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。


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