私たちは1974年の現代版画センターから始まり、1995年のときの忘れもの開廊を経て、今年で半世紀あまりの歩みを続けてきました。
山あり谷あり、どってんばったんの連続でしたが、「版元として内外の優れた作家のマルチプルアートをエディションする」という初心だけは忘れずにきました。
100人近い作家の主に版画作品を制作発表してきました。
靉嘔、関根伸夫、磯崎新、宮脇愛子、菅井汲、元永定正、アンディ・ウォーホル、ジョナス・メカス・・・・
草間彌生先生は1982年の「無限の網 1958」(レゾネNo.14)から、2004年の「夜に読む本 E」(レゾネNo.342)まで22点(種類)の版画作品をエディションしてきました。
限定部数は少ないもので35部、多いもので135部、22種類の限定総部数は1,705部にのぼります(慌てて計算したので間違っているかも)。
22種類、1700枚も作ったのだからさぞや在庫が豊富だろうと思われるでしょうが、これがまったく残っていません。
本当は記録として最低でも1部は残しておくべきなのですが、貧乏画廊の悲しさ、資金繰りに窮することもしばしば。
かくして、宝の山から一部、また一部と消えていったのであります。
草間作品は在庫ゼロ、だったのですが先日ありがたいことに、昔売った作品が奇跡の帰還を果たしてくれました(感涙)。

295
草間彌生《南瓜 B》
「南瓜 B」
2000年
シルクスクリーン・ミラーフィルム(刷り:石田了一)
イメージサイズ:27.0×21.0cm
Ed.100
サインあり
※ ときの忘れものエディション
※ レゾネNo.295
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ゴッホといえばひまわり、草間といえば南瓜。ベネッセアートサイト直島の立体作品が台風で破損したことが大きなニュースになるほど、南瓜は草間の代名詞となっている。(以下中略)
 さて、今回焦点を当てる《南瓜B》は、兄弟作品ともいえる南瓜と密接な関係にある。後者はときの忘れものから刊行された『版画掌誌ときの忘れもの』第3号A・B版に挿入されたもので、ボーダーは、既製の水玉模様を利用するのではなく、「作家自らが描いた赤い水玉のデザインを綿布にシルク刷りし、コラージュ」するという手の込んだもので、隅々まで作家の美意識を浸透させようというこだわりが感じられる。対して《南瓜B》は同じ版を使用してミラーフィルムに刷られたもので、『草間彌生全版画』には他に例がなく、ありきたりなものを避けんとする摺師・石田了一氏の密やかなチャレンジ精神がうかがえよう。実は、石田了一氏は草間の版画制作の草分けで、1979年に《靴をはいて野にゆこう》をはじめ3点を摺り上げている。1985年にラメの入った作品を提案して実現したのも石田氏であった。2000年の南瓜作品は、1992年の《夕映えの雨》以来8年ぶりに手掛けた草間作品でもあり、さぞかしリキが入ったに違いない。(以下略)>
栗田秀法「現代版画の散歩道 第9回 草間彌生」より引用抜粋)

嬉しくて涙が出ますが、さていつまでこの南瓜が画廊にいてくれるでしょうか・・・
売れなくては困りますが、直ぐになくなるのも寂しい。
(画廊亭主の泣き言)

◆「銀塩写真の魅力Ⅸ
会期:2025年10月8日~10月18日
主催:ときの忘れもの
出品作家:
福田勝治(1899-1991)、ウィン・バロック(1902-1975)、ロベール・ドアノー(1912-1994)、植田正治(1913-2000)、
     ボブ・ウィロビー(1927-2009)、奈良原一高(1931-2020)、細江英公(1933-2024)、平嶋彰彦(b. 1946)、
     百瀬恒彦(b. 1947)、大竹昭子(b. 1950

 

●ときの忘れものの建築空間(阿部勤 設計)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
杣木浩一作品