ときの忘れもの ギャラリー 版画
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写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング
御礼と報告1 原茂
2010年9月8日
このたび、皆様のおかげをもちまして、「第一回 写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング」を盛会(?)のうちに終えることができ心から感謝いたします。

 定員10名ということでしたが、13名の方が参加して下さいました。開始前に予約表を見せていただいたのですが、私の方がお話をうかがいたい大先輩コレクター諸氏や、フォトレーベル「フォッタロット」主宰者の柿島貴志さん、「ときの忘れもの」ブログに画期的な「スタージェス《論》」を寄せて下さった気鋭の写真研究者小林美香さん、「写真の会」会報等で健筆を振るわれている写真観察者の白仁田剛さん、現在最も充実した活動を続けているワークショップの一つworkshop2B主宰者でご自身でもフォトビューイングを開催されている写真家渡部さとるさん等、大河原さんと顔を見合わせて口をあんぐり。


 こちらは柿島さんからは村上将城、熊谷聖司、鈴木全太の作品を購入させて頂いているし、小林さんからは大阪の写真ギャラリーTHE THIRD GALLERY AYAさんが「アートフェア東京」に出展された際に、ボランティアの売り子さんとして石内都さんの立体作品を売りつけられ(ではなく、熱心に勧められて感謝と共に購入させていただい)ているし、白仁田さんは、既に伝説のコレクション展「白仁田剛写真コレクション展 あなたとともに考える」(東京・八王子 東京純心女子大学純心ギャラリー)にうかがって以来あこがれの方だし、渡部さとるさんは2005年のアサヒカメラ「メイキング・モノクローム講座」の終了展で「米沢」のシリーズから「雪」を購入させて頂いてからずっと、「同時代の作家」さんとして注目してきた方だし・・・はっきり言って「プロが素人の話を聞きに来てどうする!」という感じでした。
 大きなテーブルが出てきたことでもあるし、今回は「コレクター&バイヤーズサミット(?)」として「日本に写真の売買という文化を根付かせるために」について協議を始めた方がよいのではと思ったものの、お一人様1000円もの会費をいただいているのでそうもいかず、大河原さんのお話と用意したプリントを頼みに始めさせていただきました。

 最初に、自己紹介を兼ねて、学生時代に「写真時代」の洗礼を受けて、(今から思えば、荒木経惟、森山大道、倉田精二、北島敬三、岡崎京子らもいたのに・・・)「トマソン」をきっかけに赤瀬川原平の愛読者となった一青年が、赤瀬川さんの『ライカ同盟』、田中長徳さんの『銘機礼賛』から始まった中古カメラブームに乗って一介の「カメラおやじ」となって、デパートの「中古カメラ展」や浅草の「早田カメラ」に顔を出すようになり、分不相応な舶来カメラを首に掛けるようになったものの、自分の撮った写真に「これは何か違うのではないか」と思い始め、あこがれの写真家の使ったカメラとレンズではなくあこがれの写真家の写真そのものに向かうようになった経緯と、その中で知った「アジェ」という聞き慣れない写真家の名前をきっかけに、東京都写真美術館の「ウジェーヌ・アジェ回顧展」に足を運んだものの期待していたほどの感激はなく、「ふううん」程度だったのに、朝日新聞の催事欄にちょこんと載っていた「イル・テンポ」の「ウージェーヌ・アジェ展」の案内に(なぜか)惹かれて訪れた写真ギャラリーの展示に血圧が急上昇した経緯をお話ししました。


 大河原さんからは、「何度復唱したか分からない」、電話口での高円寺からギャラリーまでの道案内の名調子を久しぶりにお聞きし、「ツァイト・フォト・サロン」の姉妹ギャラリーとしての「イル・テンポ」開廊の経緯や、「パンがなければお菓子を食べればいい」(とは言わなかったでしょうが)、経費のことなど全く考えていないオーナー石原和子さんのおっとりとしたギャラリー運営、それでも経費節減のためにDMのデザインを外注から内部作成に切り替えた頃の「アジェ展」だったことなどを興味深くうかがいました。

それまで写真が「買える」などとは考えてもいなかったので(今でも写真とは写真集で眺めるもの、写真展で見るものとだけ思っている人は多いはずです)、写真に値段が付いていたのにまず驚き、その値段が決して「買えない」値段ではないことにもっと驚き、その写真を買おうとしている自分がいることに気がついて愕然とし、とはいえ税込み21万円という値段にすごすごと引き下がった最初の来廊から、諦めたはずの一枚の写真が頭から離れず仕事が手につかなくなって結局最終日を前にもう一度足を運んで、まだ売れていなかったことに運命を感じてついに諦めて(って何を?)、「つ、月に三万円までならお支払い出来ると思うのですがっ」と口走ってしまって「オー・ド・ロベック街の戸口」の女の子を「お持ち帰り」することになった顛末を聞いていただきました。

 彼女が私に開いてくれた「写真の世界」は、「見て」「撮って」いた時とは比べものにならないくらい広くて高くて深くて暖かで冷たくて、そこでよちよち歩きの<小>コレクターは、嬉しかったり苦しかったり喜んだり悲しんだりと、とんでもなく幅広く浮き沈みのある「泥んこ道」を歩むことになるのですが、それは「倒れる時にはそこがどぶの中でも前のめりに倒れたい」と言わしめるに足るものでした。つづく。
(はらしげる)



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