午前10時に磯崎新先生と打ち合わせの約束。それまで少し時間があったので、小瀬温泉から少し下り、1906年(明治39年)に建てられ現在国の重要文化財として保存されている洋館、旧三笠ホテルを見学した。
そこは、天井が高く開放的な空間に、今から約100年も昔なのに、洋式トイレ、足付きのバスタブ、シャンデリア、暖炉、お姫様ベッドなどが在った。著名人が集った社交場という面影が残っているように感じた。
いい時間になったので、直ぐ近くの磯崎先生の別荘へと向かった。アトリエの平田さんが出迎えてくださり、斜面の下に建てられたゲストハウスのダイニングキッチンへ通された。黒が基調となった、そこはモダンで素敵な空間。お紅茶とコーヒー両方戴いた。
再び斜面を登り書斎に移動し、連刊画文集「百二十の見えない都市」の打ち合わせが始まった。メンバーは磯崎先生、平田さん、植田実先生、銅版の刷り師 ・白井四子男さん、シルクスクリーンの刷り師・石田了一さん、綿貫令子さんに、私。第二期12都市に描かれる内容が、次から次へと決まっていき、未定だったものも、ほぼ目星が付いた。銅版の修正の方向や、シルクスクリーンの色も決めるまでに至り、次号の連刊画文集の話まで出るくらい余裕が出てきた。2時間強で打ち合わせは終了し、最初に通されたゲストハウスでお食事を戴くことになった。
私が生まれた次の年、1984年ものワインで乾杯をし、磯崎先生お気に入りの中国で買ってきたチキンのぶつ切りを戴いた。イカとパプリカの炒め物、アボガドとトマトのカルパッチョ・・・先生は器の指示も細かく、美意識がとても強い方だと思った。メインのパスタは自ら磯崎先生の手で。私もお手伝いをしようとキッチンに立つが、手際が冴えていて男料理。ガーリックとオリーブオイルと鷹のツメをふんだんに使用し、アサリのパスタとポルチーニのパスタ、2種類作ってくださった。私はというと、かえって邪魔になっていたので退散した。高価なワインを4本テイスティング。弱冠22歳。磯崎先生の手料理を戴けるなんて、私は幸せ者。こんなにワインを嗜んだのも初めて。
美酒に陶酔してしまい、調子に乗って磯崎先生とツーショットで写真を撮って戴きました。家宝ができたよ、お父さん、お母さん。どう考えても、今回の出張は仕事ではなく、娯楽だった。打ち合わせ食事磯崎先生&尾立