14時から、磯崎新連刊画文集「百二十の見えない都市」の未完成版画の原版に磯崎新先生が手を加える作業を行なうため、刷り師の白井さんと伺った。
先生の自宅の書斎に通された。そこは、クラシックのBGMが似合う空間。
早速デッサンが始まった。姿勢の良い磯崎先生は、12都市全体のバランスや、和紙の上にどのように配置するかを考慮し、トレーシングペーパーの上に描き足していく。作家、磯崎新の顔だった。万年筆や墨汁を使い黙々と、手が止まることなく全体を把握しながら描き加え、思考と手の意気がピッタリ合っているという感じだった。次から次へと出される銅版には、白井さんと版画の技法を相談し、ソフトグランドという技法で指や脱脂綿で手を加えられた。
ただ黙って見ていることしかできない私は、まるでサザエさんに出てくる伊佐坂先生の原稿完成を待つノリスケさんといったところだろうか。
磯崎新アトリエを5時半過ぎに出て、本来5時に予定していたディス・ハウスの北澤さんとの打ち合わせ時刻を変更してもらい、急いで画廊へ戻った。ディス・ハウスに着いた頃には6時半を回っていた。説明下手な私が、軽井沢での打ち合わせ内容を伝達するという仕事を務めた。編集者の仕事や業界用語を教えて戴き、綿貫さんと同様、北澤さんも私をエディターへと育ててくれる方なのです。
磯崎新邸 書斎にてソフトグランド銅版に手を加える