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昨日は熱が下がらずお休みを戴いた。流行の風邪をひいてしまい、思い通りにならない身体に歯痒さを覚えた。
ご心配をして戴いた方々、ありがとうございました。ご迷惑をお掛けしました。
ジョナス・メカスさんから三浦さんの元へ、依頼していたトリシャ・ブラウンさんへのコメントがメールでやっと届いた。
私は15時過ぎに府中市にある石田了一工房へ出掛け、着いた頃には外は薄暗くなっていた。シルクスクリーン刷り師の石田了一さんが磯崎新連刊画文集『百二十の見えない都市』を刷る現場の見学だったのだが、湿気の関係で紙が朝より縮んできているためその作品は刷れなかった。その代わり、シルクスクリーンの知識が全くない私に作品を作らせて戴いた。
透明のフィルムに赤、または黒のインクで絵を描くのが1枚、そのフィルムとは別に赤いフィルムを上に載せ色を付けたい部分は赤いフィルムを残し、色を載せたくない部分は赤いフィルムを剥す。といった二つの技法を試みた。その両方のフィルムを緑の液体が塗られた板みたいなものに載せて、エアーを抜く機械に入れて真空にし、それに太陽光並みの光を当てて焼く。そうすると、その緑の液体を塗った版に絵が焼きつき網目ができる。それを水で洗い流し、乾かす。その後、浮かないようにエアーを吸い取る掃除機みたいな機械に紙をセットし、絵が焼きついた版を上に載せて石田さんの指導の元、ゴム製のへらで体重を乗せてインクをスーッと刷る。石田さんのアシスタントをしている大谷さんも手伝ってくれた。たった一度で2.5センチ角の中に760個の穴があるという版からインクが落ち絵として出てくる。先にベタ刷りを行い、次に細い線の絵をズレないように合わせ刷る。これが、石田さんが得意とするものだ。綿貫さんがよく言っているが、石田さんの刷りにはズレがない。本当に1ミリたりともズレがない。それに、石田さんが刷るグラデーションは美しい。
シルクスクリーンがこういうものとは知らなかった。エキサイトした。私の子供染みた絵を見て、石田さんは誉めてくださった。記念にTシャツにも刷ってくださった。注文がくるかもしれないからフィルムは置いてていいよと言ってくださった。くるかな・・・でも、そう言ってくださるだけでテンション上がる!!
シルクスクリーンは気候、凄腕、体調、気持ち・・・きっと様々な要素が連結しなければ人を圧倒する作品にする事はできないのだろうと思った。それは銅版画も同じこと。職人さんってすごい。
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