今日からときの忘れもので「トリシャ・ブラウン ドローイング展」です。そういえば、私が入社して初めての女性作家の展覧会。
中谷芙二子先生(左)とトリシャ・ブラウンさん(右)
13時から近畿大学四谷アート・ステュディウムで、18年ぶりのトリシャ・ブラウン・ダンス・カンパニーの日本公演に合わせて、トリシャ・ブラウンのダンスの軌跡を再考する研究会「コンテンポラリー・アート/ダンスの核心――トリシャ・ブラウンさんを迎えて」が催された。四谷のスタッフの方々は忙しく動き回っており少し緊迫した雰囲気の中、今日からお手伝いをしてくれる梅田沙織さんと私はモニター室で『トリシャ・ブラウン――思考というモーション』の販売を行った。プロセスアートの田坂さんは今朝出来上がったばかりのDVDと共に到着した。
13時から岡崎乾二郎さんのレクチャー第一部「ジャドソン・ダンスシアターを巡って/トリシャ・ブラウンへの導入にかえて」が、トリシャ・ブラウンの作品《If you couldn’t see me》のように、観客は岡崎さんの顔が見えないという体勢ではじまった。トリシャさんが友人のスタジオを借りてダンスをしていると、貸している人がやってきたのでダンスを止めるとギロッと見て、「トリシャ、飛んでいたよ!!」という話しがあった。惜しげもなく貴重な写真や映像を流してくださり、それぞれの作品を観て私は毎回思うことが違うのだが、《Accumulation with Talking Plus Watermoter》を観ると私にはダンスしているトリシャさんの足と地面の間に空気が見える。だから、その友人が言っていることは本当のことだと思う。トリシャさんは、エアージョーダンを履いているマイケル・ジョーダンみたいだと思う。
ぱくきょんみさんがトリシャ・ブラウンさんと秘書のミッシェルさんを埼玉まで迎えに行っており、15時半頃トリシャ・ブラウンさんは四谷アート・ステュディウムに到着した。スマートでキュートなトリシャ・ブラウンさんはシルクのオーラを放っているように私の目に映り、私はとっても落ち着いていて「ナイストゥーミーチュー」と言い握手した。その手は柔らかくって温くって(爪にはシックなピンクのマニキュアをしていたな・・・)、私は平面なトリシャさんしか見たことのなかったので、あぁ生身なのだとやっと理解した。
第二部はトリシャ・ブラウンさんを囲んで質疑応答、ディスカッション。通訳は、中保佐和子さんと『トリシャ・ブラウン――思考というモーション』で翻訳を務めた中井悠さん。その輪の中に入りたい・・・と、ただうらやましく見ていた。岡崎さんはレクチャーの合間に本とDVDの宣伝を強引に持っていってくださっていたため、売り子が押し売りしなくても次々売れた。研究会終了後、木原進さんにトリシャ・ブラウンさんに見せるためだけに近畿大学のギャラリーに展示したという岡崎乾二郎さんの作品を見せて戴いた。制作年によって全く表情が違う作品たちは、キャンディーやおもちゃみたいで、抽象的なんだけれども犬がサングラスしているように見え、触りたくなるほどかわいかった。
17時からときの忘れものギャラリーでトリシャ・ブラウンさんを迎えてオープニングが行なわれるため、急いで片づけて青山に戻った。私がギャラリーに着いた頃は満員で、渋谷のスクランブル交差点の人口密度よりすごい状態だった。少し遅れてトリシャさんは18時前に登場した。話しかけることができた人、近寄れなかった人、私は後者ですが・・・大盛況だった。人の多さのあまりドローイングがちゃんとみられなかった方はもう一度会期中にご来廊ください。オープニングは無事終わり、打ち上げに行った。トリシャさんと秘書のミッシェルさんも参加してくださり、『トリシャ・ブラウン――思考というモーション』で、「すべてはトリシャから始まった」というタイトルを付けた石井達朗さんも一緒に語り合っているようだった。外は雨が降っていたので一緒に入ろうとトリシャさんに傘を差しのべると、私の腕にキュッてしがみついた。その仕草がめちゃくちゃキュートだった。トリシャさんとミッシェルさんは明日の稽古もあるので、早く切り上げホテルに戻った。車中では、おやすみになっていたとあとで聞いた。無事にオープニングを迎えられ、初めてトリシャ・ブラウンさんにお会いでき、トリシャさんんが大喜びだったことを聞けた。今日は一日がとっても長く、何をするにも楽しくて満たされた日だった。トリシャ・ブラウン展の話を持ち込んで下さった岡崎乾二郎さん、ぱくきょんみさんをはじめ、この3ヶ月ご協力して戴いた方々全員に笑みが浮かんでおり、ぱくさんの「感無量です。」という言葉に私は涙腺が緩みそうでした。


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