今日は、神戸芸術工科大学三上研究室・三上晴久先生が設計した、世田谷松原の家・A邸のオープンハウスに出かけた。私は、工期中に2度見学している。最初に訪ねたときは敷地内に深く掘られた土があり、霜が降りていた寒い時期だった。現場監督の真似事をして図面を見たり、測量の人が覗いていたモノを覗きたいとお願いしたり・・・。二度目は鉄骨や断熱材が見えている状態の時だった。

あぁ~建ったな~という嬉しい気持ちと、紙の上のものが地球上に建った!すごい!という感激がこみ上げる。
どんなに図面を引き直しても、ボンドがはみ出ている模型が完成しても、徹夜が続いて気性が荒くなっても、私が課題で設計した建物は、机の上にしか建たなかった・・・。

植田実先生と13時に現地で待ち合わせをしていた。植田先生と一緒に見学することになっていた。
初めて入る建物は、初めてのアトラクションに乗り込むような感覚にどこか似ている。どんな仕掛けがあるのだろうって。

南側は道路、敷地の三面はピタリと住宅が隣接している。南側の外階段のストライプの格子が、お向かいさんと道路からの視線を曖昧にしてくれる。
A邸は2階建ての二世帯住居。家の中心に寄ると繋がり、中心から離れれば分れる、という感じだ。その中心に緊張感のある階段がある。スコーンと吹き抜けており、誰しも快適だと思うであろう空間に、澄まし顔のまるでピアノの鍵盤のような階段が1階の家族と2階の家族の行き来を繋ぐ。庭に向って、両手両足を左右に伸ばして座っているテディ・ベアのような住宅だと思った。胴体は吹き抜けのリビング、右脚はキッチン・ダイニング、左脚は部屋・水周り、右腕は部屋、左腕はキッチン・ダイニング・水周りに相当する。
2階の玄関の向い側に天井から三角に開いた壁があった。これはブレスに合わせて上の部分を開けたのだという。植田先生も面白いと見ている。2階の廊下で立ち話、窓を開ければこの廊下がバルコニーの方へ伸びるから、その廊下は廊下以上のものになるだろう。
天地左右を隈なく見て、暗くないのに電気を点けては消し、開くものはなんでも開けてみたくなる建物だ。三上先生は隅々までこだわる建築家だと私は思う。「気になる」という言葉を何度か耳にしたことがある。だからこそ、今回の住宅も細かい仕掛けをたくさん見つけられる。

40分くらい居たのだろうか、植田先生の「ほぉー」とか、「なるほどー」とかそんな言葉の後ろを付いて回って、私たちは好奇心の連続で見て、体験した。

駅までの帰り道、植田先生はまだ好奇心が連続していた。というか、植田先生は常に好奇心が連続している人間なのかもしれない。植田先生は変わった建物を見つけては立ち止まり・・・を繰り返した。先生の体はあらゆる建物に反応する。駅周辺の喫茶店に入り、先生はコーヒーフロートを、私は抹茶ババロアを注文した。植田先生からお願いされている件についての打ち合わせをした。     (おだちれいこ)
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