


昨年秋亡くなられた美術評論家・東野芳明(とうの よしあき、1930年 - 2005年11月19日)先生を偲ぶオマージュ展が14日(土)から渋谷区松濤のギャラリーTOMで始まりました。
「東野芳明を偲ぶオマージュ展 水はつねに複数で流れる」
会期=2006年10月14日(土)~11月12日(日)
10:30~17:30 月曜休館
会場=ギャラリーTOM
入館料=一般600円、小中学生200円
視覚障害者及付添者300円
出品作家=荒川修作、磯崎新、海老塚耕一、岡崎和郎、沖啓介、大竹伸朗、柏木弘、久保田成子、塩見奈々、篠原有司男、須田基揮、シュウゾウ・アヅチ・ガリバー、菅木志雄、関根伸夫、高見澤文雄、田窪耕治、田中信太郎、堂本右美、中西夏之、中村康平、野田哲也、野田裕示、萩原朔美、古田裕、三澤憲司、三宅一生、宮脇愛子、山口勝弘、安田奈緒子、山本容子、横尾忠則、四谷シモン、吉澤美香、李禹煥、和田守弘
東野先生が病に倒れたのは1990年ですが、以来16年にわたり闘病生活を送られました。
東野先生の一周忌にあたり、親しく交遊のあったアーティストたちが出品しています。
磯崎新先生は、この展覧会のためにシルクスクリーン作品を制作されました(ときの忘れものの新作エディションです)。

磯崎新「極薄」
2006年 シルクスクリーン(刷り:石田了一)
限定35部 サイン・番号入り
イメージサイズ:49.0×46.0cm
紙サイズ:56.0×56.0cm
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以下は、この展覧会に寄せた磯崎新先生のコメントです。
「極薄」 磯崎新
一九六〇年頃の前衛アート・ヒーバーのもとおこしは東野芳明のニューヨーク情報に由来することは、あのとき二〇代だったアーティストの記憶に残っているはずですが、熱はさめると、ケロッとしているのが世のならい。それから四〇年すぎると、自動車の助手席にすわって素もぐりに行き、海底写真をレンズ逆むけでとっていた人となっているのではないかと、私はおそれています。あの頃、彼がもたらした情報は自分で作家のアトリエに行き、売れ先に敏感なギャラリーの主からは直接仕入れた一次情報だったこと、それだけに生(なま)で確実だったことを誰かはっきり記録してもらいたいと思うのです。多摩美にそんなことを研究する人は必ずいるでしょうから。
私は東野芳明が「アンフラマンス」を「極薄」と日本訳したことが、どんなアート情報よりも重要な功績だと思っています。これは正確な訳ではない。意味も違うという人がいるかも知れない。デュシャンの全仕事よりも、この隠されていた一語がより重要だと考えている私には、彼がデュシャンの造語にたいしてみずから造語で答え、何といわれようと四半世紀のうちに、日本語ではもう他の訳語はないとみえることになったのが素晴らしいことだったと思います。そこで東野芳明へのオマージュとならば、何はさておき、『極薄』です。
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