恩地poem
恩地文字平井シール


恩地孝四郎 Koshiro ONCHI
「Composition No.2 文字」
  1949  木版
  (刷り1968、平井孝一刷り)
  34.2x26.7cm スタンプ印
  *レゾネ番号314(形象社)

◆ときの忘れものでは、12月29日まで「恩地孝四郎と創作版画の作家たち」展を開催しています。
メインとなる恩地孝四郎作品は、ペン画1点、水彩画1点、木版画(没後の後刷り)4点の計6点を出品しています。

恩地作品の基本文献となる「恩地孝四郎版画集」について少し説明します。
1975年3月10日印刷発行、形象社より刊行された本書は、328ページの片手では持ち上がらないずっしり重たい画集です。
限定本として全部で670部が造られました。今思えば世界の恩地としては随分少ない部数ですね。
内訳は、国内版(番号入り380部+番外38部)、海外版(番号入り170部+番外17部)、特装版(番号入り55部+番外10部)です。

レゾネ番号1の1913年の木版「失題」から、レゾネ番号422の年代不詳の木版「蔵書票」まで422点の版画が収録されています。
さらに番号なしのドローイング14点と、版木8点の図版が掲載されています。
恩地の版画の総数が果たしてどのくらいか、正確な数字は不明です。
本書には上述の通り422点が収録されていますが、刊行後に続々と未収録のものが判明し、版元の形象社は1978年6月24日印刷発行で、「恩地孝四郎版画集補遺」という8ページの小冊子を刊行しています。それには20点の版画が掲載されています。合わせて442点ですが、おそらく総点数では500点近いのではと私は推定しています。

さて、今回ご紹介している「Composition No.2 文字」は、1949年に制作された原版から、没後の1968年に浮世絵の摺り師・平井孝一によって後刷りされたものです。所謂<平井刷り>作品です。
作品の裏には、掲載したようなシールが貼付されています。
これはご遺族によって、残された版木から後刷りされたものですが、「恩地孝四郎版画集」には422点の収録作品に<後刷り作品のあるもの>に印がついており、その総数は14点です。
恩地作品の<平井刷り>、または後刷りについて語りはじめると収拾がつかなくなるので、詳しくは他日に譲りますが、「恩地孝四郎版画集」刊行以前に、平井孝一によってなされた後刷り(メモリアル・エディション)は14種類と思われます。
その後も、原版木を用いた後刷りは、米田稔、恩地邦郎らによって行なわれたので、後刷りの総数(種類)はもう少し増えますが、とにかく恩地自身が自刷りしたオリジナルが作品によっては非常に少部数のため、版画雑誌に挿入したもの以外に市場に出てくることはめったにありません。後刷りといえども貴重です。
なお、恩地生前に関野準一郎が刷った<増し刷り>があることも付記しておきます。

私はこの平井刷りがなされたときは、まだ美術界に入っていなかったので詳しい経緯は知りませんが、1974年にこの業界に入り、直ぐに恩地孝四郎のご息女・三保子さんにお会いすることができたので、上記の「恩地孝四郎版画集」刊行の経緯は伺っています。久保貞次郎先生がその刊行に惜しみない支援をされたことは別のエッセイに書きましたので、割愛しますが、この平井刷りは、日本橋の丸善画廊に束になって積んであったのを記憶しています。
当時はそうは売れなかったのですね。
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