
柳沢信 Shin YANAGISAWA
「ローマ」
1993 Gelatin Silver Print
22x32.5cm signed
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◆明日から2008年最初の企画展「柳沢信写真展」を開催します。
会期=2008年1月11日[金]―1月26日[土] 12:00-19:00 *日・月・祝日休廊
柳沢信は、1958年写真誌『ロッコール』に発表した「題名のない青春」で注目を集め、写真家として順調なスタートを切りましたが、結核であることがわかり、2年間の療養生活を送ることになります。この間、写真から離れたことで、興味の対象が広告やファッションから「変わり行く都市、変わり行く日本」へと移り、日本中の町をフィルムに収めていきます。そのまなざしは「町とか家なんかについているアカみたいなものを、写すのが好きなんです。」と語るように温かく、しかし、センチメンタルに流されることのない独特の作品を生み出しました。
今回展示するのは、1993年にイタリア旅行をした際に撮影された作品で、初めて海外の町や人、空気を写し取り、今後の新しい展開が期待されるものでした。しかし、直後の喉頭癌と食道癌の手術によって、シャッターを切ることができなくなり、現時点では柳沢信の最後の連作となっています。
ときの忘れものでの展覧会は初めとなりますが、50年間で6回目の個展となる今回、新たにプリントしたものを含め約30点をご紹介いたします。
◆ときの忘れものでは、以前からジョナス・メカスなどの写真展を開催していましたが、本格的に写真作品を扱い始めたのは、一昨年秋の「X氏写真コレクション展」からです。
X氏という稀代のコレクターに巡り会わなければ、そしてそのコレクションの素晴らしさに感動しなければ、その後の写真展はなかった。それほどこのときのX氏写真コレクション展は凄かった。
私が写真を本格的にやろうと思い、それを後押しをしてくれたのが、細江英公先生でした。この展覧会にも真っ先に来て赤丸をつけてくれました。
私が美術業界に身をおいて初めて出会った写真家が、細江英公先生と荒木経惟先生だった。今から30数年前になります。
私が画商として初めて売った写真はアラーキーの「浅草駒太夫」です(1974年)。それらの経緯にについてはまた別の機会に譲りますが、とにかくこれ以上ない優れた写真作家に巡り会いながら、なかなか写真に積極的に取り組む気持ちがわいてこなかった。(私実はオクテなんです)
画商として取り組む以上、写真作品に関してプロとしての知識、見識を持たねばなりません。
幸い、我が社のスタッフには三浦次郎という願ってもない写真コレクターがいる。昨年夏のジョック・スタージス展の折、彼に手紙を出して口説き、シアトルまで出向き、危ない目に会いながらも出品作品を持ち帰ったのは三浦です。
細江先生やX氏らのご指導と、三浦の豊富な知識と経験がなければ、私もこの歳で写真に取り組む気持ちは起らなかったでしう。
また今回の柳沢信先生の個展開催に関しては、畏友木下哲夫さんのご尽力があったことを感謝とともに申し添えたいと思います。
さて、写真は版画と同じく「複数芸術」です。
プリントの時期、誰がプリントしたか、枚数、サイン、サイズ等々、版画以上にやっかいな種々の条件があります。
顧客の皆さんに安心して、優れた写真作品をお渡しできるよう、私たちは最大限の努力を惜しまぬつもりです。
今回展示する柳沢信のプリントには、焼いた時期が異なる二種類のプリントがあります。
ヴィンテージ・プリント:1993年イタリアから帰国してすぐに作家本人が焼いたもの。作品の裏にフルネームでサインがしてあります。シート価格157,500円(税込)。
モダン・プリント:今回の展示のために2007年に作家監修の元、プリンターによって焼かれたもので、作品裏にイニシャルでサインがしてあります。シート価格84,000円(税込)。
ヴィンテージ・プリントは、体調不良のためイタリアの旅を途中で切り上げて帰国したあと、記憶が薄れないうちにとすぐに現像、プリントしたものです。2月5日に出発し、3月12日に帰国するまでにモノクロ・フィルム63本を撮影し、自分でもその多さに驚いたといいます。
■柳沢信(Shin YANAGISAWA 1936- )
東京生まれ。57年東京写真短期大学技術科卒業。67年日本写真批評家協会新人賞受賞。79年初個展
「都市の軌跡1965~70」(オリンパス・ギャラリー)、80年個展「北陸紀行」(ミノルタ・フォト・スペース)、個展「柳沢信写真展」(CAMERA WORKS EXHIBITION Section-8)。93年イタリアへ撮影旅行。翌年、個展「写真・イタリア・柳沢信」(コニカプラザ)、01年個展「写真に帰る」(クリエイションギャラリーG8、ガディアン・ガーデン)。
新春に相応しい爽やかな写真展です。
どうぞお出かけください。
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