“ときの忘れもの”今週のオークション 2008.04.11
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<<ギャラリーときの忘れものだより>>
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画廊では、「フォーゲラーとその時代展」を開催中です。ハインリヒ・フォーゲラーの代表作「春」や「愛」などの初期銅版5点のほか、芸術家コロニー〈ヴォルプスヴェーデ〉で共に制作したフリッツ・オーヴァーベック、フリッツ・マッケンゼン、ハンス・アム・エンデの銅版画と、同時代の日本の作家竹久夢二、恩地孝四郎らの版画作品を展示しています。また、フォーゲラーに関する図録や文献も併せてご覧いただけます。19日までです。
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<<今週の話題~アートフェア>>
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先週の東京は、アートフェア週間でした。東京国際フォーラムでは、108軒のギャラリーによる「アートフェア東京」があり、プレビューでは人にぶつからないでは通路を進めないような混雑振りでした。実際、昨年より1万人以上入場者が増えたそうですが、売り上げは昨年並みだったようです。また秋葉原近くの元中学校であった建物を使って行われた「101TOKYO」には、28のギャラリーが出店し、さながら学園祭のような雰囲気で、身近にアートを感じることができるようになっていました。丸の内の新丸ビルでは、7階のレストランフロアの壁面や多目的用の部屋を使って「ニュートーキョーコンテンポラリーズ」という展示が行われましたし、4日にはエスト・ウエスト、5日にはシンワアートのコンテンポラリーアートのオークションが開催され盛況でした。因みに私は、一通り見て参りましたが、やるほうも見るほうもたいへんな一週間でした。
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<<今週の一点>>
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◎早世の細密画家 殿敷侃・銅版画「カニ」シート
殿敷侃殿敷侃(とのしき ただし)は、1942年に広島市に生まれ、3歳のときに被爆します。父親を原爆で亡くし、母親も五年後に病死するという体験から、細密な描写で石を描き続けました。その作品が注目され、1979、80年と安井賞に連続して入選します。やがて版画に移行し、出品作のような緻密な作品を制作しましたが、ほとんど陽の目を見ることはなく、その後、作家は約4トンのタイヤなどの廃品をぶちまけるといったインスタレーションを発表するようになり、活躍を期待されましたが、50歳で亡くなりました。出品作は、そのような殿敷の遺した貴重な版画作品の1点です。時代に左右されない作品をコレクションにお加えください。
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<<今週のオークションから>>
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今週も引き続きD氏旧蔵の作品をご紹介します。お好きな方に楽しんでいただけたらと思います。
◎D氏コレクション特集/斎藤真一 銅版「向島の女」
斎藤真一