中津万象園 全景香川県丸亀に300年の歴史を誇る大名庭園「中津万象園」があります。
15,000坪の庭園と付設する丸亀美術館で「磯崎新版画展 宮脇愛子展」が4月25日~6月21日まで開催されています(会期中無休)。
ときの忘れものが企画協力しています。

GWには、高速道路「千円」の効果もあって、お客様の入りもまずまずだったとか。
休日は、美術館で過ごしてみてはいかがでしょうか。
『百二十の見えない都市』第一期の12エッセイを読めるめったにない機会です。
なぜならこの画文集は限定35部で、いまのところ35人の予約購読者のみしか手にしておらず、一般には公開されていないからです。
<百二十の見えない都市>を版画とエッセイで描き尽くすというこのプロジェクトは2001年にスターしたのですが、この企画への意気込みを磯崎新先生は下記のような手紙で私たちに伝えてきました。

磯崎新_丸亀美術館磯崎新さんからの手紙
Uさん、Wさん
 はじめて世界の街を旅したのちに、私はひとつの都市論をかき、「見えない都市」という小みだしを終章につけてしまった。
 言葉は呪縛するのですね。以来四十年、私の都市についての思考、提案、デザイン、すべてこのひとことを巡ってなされてきました。
 それから十年程して、イタロ・カルヴィーノが同名の小説を書き、五年程して日本語でも読めるようになった。マルコ・ポーロが、シルク・ロードで訪れた街のことをフビライ・カンに物語るという趣向です。これは小説、私のは都市論、無関係なんですが、虚構という点では同じだと気づいたのは、更に二十年後。南支那海上に島=都市をつくり、これを『海市(ミラージュ・シティ)』と命名したときでした。砂漠の都市も蜃気楼のかなたにゆらめいていた。カルヴィーノはあの光景をイメージして『見えない都市』という題を思いついたに違いない。
 どの都市も刻々と姿を変えます。記憶もあやしくなります。空想が肥大します。だが、人々はそんな都市に住んでいると思っている。みずからの栖をつむいでいる。集合して空中に楼閣を組みあげている。想像のなかの楽園とか死後の都市のほうがよりきらびやかに飾られている。眼前の都市の姿を信じてないためでしょうか。都市が見えないことを直感していたためだと私には見えます。
 Uさん、Wさん
 あなたがたは、私が一ダースしか住宅の設計をしていないことを知っていたのですね。だから、先回の企画『栖十二』という数が算出されたのでしょう。都市については四十年以上やっている。スケッチブックを持ち歩いている。異なった街で、違った地勢をみると、無理を承知でコンペに参加している。これは、つかみどころのない『見えない都市』を相変らず捜しつづけている証拠ではないか。もう十年しか残っていないよ。とりあえず、十ダースで区切ってみたらどうだ、こんな具合いに裏読みされたのじゃないか。
 『晩年』と題した小説はその作家が若年の頃に書いています。晩年に晩年のことを書く阿呆らしさを知っていたのはF・L・ライトや谷崎潤一郎やです。彼等は別人のような仕事をしています。それにあやかって、『百二十の見えない都市』が、私に同じシチュエーションを与えてくれるならば、これは受けねばなるまい。『見えない都市』を見せることができれば、四十年前に口ばしったことの仕末ができる。あのとき虚だったものが実になっている。実だったものが虚になっている。虚虚実実というじゃないですか。『見えない都市』はそのどちらでもある。往復しています。その正体をどうやって引き出せるか。
 Uさん、Wさん
 とはいうものの勝算はまだない。いままで用いたことのない手法だけを使おうとしている。いくつこなせるのだろうか。百二十という数の都市をマトリクスにおさめようとして、はたして実数か虚数か混乱してもいる。決まっているのは今世紀最初のディケードにうずめる箱の容積だけです。
 日付けが変りました。それがあなたがたの送った作業開始の指令だったんですね。
                       磯崎 新
2001年『百二十の見えない都市』企画案内より

■磯崎新連刊画文集『百二十の見えない都市』第一期12都市は既に完成し(頒布完了)、現在第二期の制作が進行中です。
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丸亀チラシ表丸亀チラシ裏