「磯崎新ブックアーカイブスI ― TSUKUBA1983」選書特集《第一弾》『ARATA ISOZAKI EDITION WORKS

火曜日からスタートした新企画「磯崎新ブックアーカイブスI ― TSUKUBA1983」。連日、早い時間帯から多くの来場者にお越しいただき、厚く御礼申し上げます。
さて、本日から数回に分けて、出品されているブックアーカイブの中から注目すべき書籍を紹介させていただきます。
第一回目は、『ARATA ISOZAKI EDITION WORKS』と題して、版画やマルチプルなどのアートワークにフォーカスした選書です。

1983年は、建築家 磯崎新にとって、「つくばセンタービル」竣工後、さまざまなメディアを通じて「つくば」及び「ポストモダン」論争が展開され話題を集めた他、多くの版画エディション作品が発表された年でもあります。
「還元シリーズ」11点、「MOCAシリーズ」9点、「ヴィラシリーズ」5点、合計25点の版画エディションを中心にした展覧会が日本各地で開催されました。
'83年以前の作品の版画の制作状況('77年/5点、'78年/4点、'79年/3点、その他'79年には鉛のレリーフ作品を16点制作)と照らし合わせてみても、いかにこの年が版画制作に意欲的であったかがよくわかります。しかも、版画制作のみならず、MOCA(ロサンゼルス現代美術館)のドローイングの展覧会や、NYのレオ・キャステリ画廊でのグループ展「HOUSES for SALE」など、多くの展覧会が開催されました。当時の展覧会のカタログや代表的な書籍をピックアップしてみました。
磯崎新書籍1

PRINT COMMUNICATION(版画センターニュース)/現代版画センター/¥2,500円
EXHIBITION・堀内正和・磯崎新展図録/西田画廊/¥4,500円
HOUSES FOR SALE/RIZZOLI/¥5,000円
The Prints of ARATA ISOZAKI(特装版)/現代版画センター/¥47,250円
The Prints of ARATA ISOZAKI(普及版)/現代版画センター/¥8,400円
MOCAのためのドローイング 1981−1984/雅陶堂ギャラリー/¥2,500円
Arata ISOZAKI図録/GA gallery/¥2,500円
Ed 103号,105号/現代版画センター/¥1,500円
版画藝術 41号/阿部出版/¥1,000円
STYLING 1987年 No.7/スタイリングインターナショナル/¥2,500円
ARATA ISOZAKI LEAD RELIFE EXHIBITION図録/ギャラリー上田/¥10,000円

その他、版画関連の記事が掲載された雑誌を含めると20冊以上の書籍が展示販売されています。
この中から、5冊を抜粋して紹介させていただきます。

磯崎新書籍2●『The Prints of ARATA ISOZAKI 特装限定版』(限定200部)現代版画センター/¥47,250円 
横尾忠則デザインによる本書の普及版(限定1300部/¥8,400円)は、古書店の書棚で目にする事があります。しかし、特装限定版は「稀覯本」と言っても過言ではないほど、市場で目にする機会がない作品集です。先日、ときの忘れものと縁の深い某編集者が来廊されたときに、本書を手に取って「これは、いいね!」と、ため息まじりの感嘆を頂戴しました。わたくし自身、20数年来、磯崎新関連書籍を追い求めていたにもかかわらず、オリジナルを目にするのは今回が初めてです。
奥付によれば、本書が制作されたのは、1983年11月4日で、普及版の版画作品集とエッチング技法による版画作品「TSUKUBA A」が挿入されているとの記載あります。26年前の書籍とは思えないほど、完璧な状態の専用ケースに収納された「特装限定版」の展示は、都内では久々となります。
お見逃しなく!

展示26●『STYLING 1987年 No.7』スタイリングインターナショナル/¥2,500円
「STYLING」とは、“スーパー・スノッブ・マガジン”と銘を打ち、'80年代のバブル経済の富裕層をターゲットに創刊された月刊誌です。カッサンドルなど、古今東西の美術作品を毎号表紙のビジュアルに掲載していますが、第7号では「MOCA#3」が表紙に起用されました。20数年前にもなりますが、本号が書店の店頭にずらりと陳列されたときの強い印象は、今でも鮮明に残っています。
表紙の他、版画作品としてエディションされた「還元」、「TSUKUBA」シリーズを柱にして、「都庁」や海外の設計競技応募時に制作されたシルクスクリーンをも網羅した豊富な図版は圧巻!。また、当時建築評論家として活動していた松葉一清による、建築家の版画制作に於ける意味性を解説したエッセイ「2次元建築としてのドローイング 磯崎新のシルクスクリーン」は、版画初心者にはお勧めのテキストです。磯崎新の版画入門書としておすすめです。

●『HOUSES FOR SALE』RIZZOLI/¥5,000円
レオ・キャステリ画廊といえば、ジャスパー・ジョーンズやリキテンシュタインなどのポップアートのアーティストを積極的にプロモートしたNYの老舗画廊である。80年代、ミニマリズム以降、アートシーンの活性化を図るべく、バスキアやシュナーベルなどニューペインティングのアーティストの展覧会を開催するが、その一方で、多様化するアートマーケットのニーズに応える為に建築家の作品の展覧会を開催した、その名も「HOUSES FOR SALE」。
展覧会の詳細は、磯崎新著による「イメージゲーム(鹿島出版会)」の“フォリイ草庵”の項に詳しいが、本書は出展作家の作品を集めて出版された作品集である。シルクスクリーンのVillaシリーズ「House Of Nine Squares」のオリジナル作品が掲載されている。

●『EXHIBITION・堀内正和・磯崎新展』西田画廊/¥4,500円
今回、膨大な量のブックアーカイブの他に、「家具」と「版画」が、画廊の空間に所狭しと展示されています。
先日、お客様への応対の最中に、展示内容に関する、“あること”に気がつきました。その“あること”とは、今回の展示構成が、磯崎先生が77年来制作された版画・マルチプル作品に於ける全技法を網羅している展覧会になっていることを発見したのです。「シルクスクリーン」、「エッチング」、「アルフォト」、「リードレリーフ」そして最後は、「リトグラフ」です。
1982年、奈良の西田画廊開廊記念企画「堀内正和・磯崎新展」の1000部限定で出版されたカタログには、「展望台」と題された磯崎新のリトグラフが挿入されています。サイズは、250×230と瀟酒な作品ですが、注目すべきはその署名。通常、磯崎先生は版画に「ARATA ISOZAKI」とローマ字で署名されますが、この作品に限り全く異なる署名が版上にされました。その異なる署名とは?
・・・・・画廊にてご確認ください。

●『ARATA ISOZAKI LEAD RELIFE EXHIBITION』ギャラリーウエダ/¥10,000円
本書は、1987年にギャラリーウエダで開催された展覧会『ARATA ISOZAKI LEAD RELIFE EXHIBITION』のカタログである。磯崎先生は、シルクスクリーンなどの版画と平行して、“鉛”を素材にしたマルチプル作品「リードレリーフ」を積極的に制作している。1979年から87年までに制作された「リードレリーフ」作品32点を網羅した唯一のカタログレゾネである。
今回の展覧会では、86年に制作された「MUSEUM FORM I」シリーズの中から2点が出展されていますのでこちらもお見逃しなく!

さて、これら『ARATA ISOZAKI EDITION WORKS』は画廊の入り口付近の書棚に集めてございます。対面の壁を飾る「MOCA」シリーズのシルクと共にご堪能いただければ幸いです。

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◆ときの忘れものは、2009年10月27日[火]―11月3日[火・祝日]まで会期中無休で、「磯崎新ブックアーカイブスI ― TSUKUBA1983」を開催しています。
企画・選書:浜田宏司(Booklayer)
磯崎新ブックアーカイブス展DM600
磯崎新の版画、モンローチェア、関連書籍500冊、倉俣史朗の椅子、デスク、鏡などを販売しています。ぜひこの機会にコレクションしてください。